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ビジネスアーキテクチャーを表現する“概念モデル”とは? 

(第2回) 


今回は、ビジネスアーキテクチャーの構造を描写する中核となる「概念モデル」、そして前回ご紹介したビジネスモデル、モチベーションモデル、ケイパビリティモデルという3つの層の間の連携についてお話ししていくことにしましょう。

ビジネスアーキテクチャーの構造を描写する“概念モデル”とは?

 ビジネスアーキテクチャーの構造を表現するために、私たちは「概念モデル」というものを主に活用していきます。概念モデルとは、「物事」「考え」「対象」「現象」など、仕組みの本質を抽出して単純化した構造図です。良い概念モデルは、これらの仕組みを類型化すると同時に、その中の因果関係や相互作用を明らかにすることができます。私たちの活用する概念モデルは、主要なビジネス要素の「概念の定義」「概念の属性」「概念間の関連性」を表現する静的なモデルです(図1)

    図1.概念モデル

 もっとも、現実のビジネス世界は、当然のことながらダイナミズムを伴います。現代のように、環境変化が激しい時代においてはなおさらです。環境変化や時間推移に伴うビジネス要素の変化を表現するための方法については、基本的な概念モデルのご説明を終えた後に触れる予定です。

 今回の記事の本論に入る前に、本連載での言葉の定義や説明方法に関して、お約束ごとを書かせていただきす。日常のビジネスで使われる用語を、正しく定義することは非常に重要です。たとえば、「戦略」という言葉ほど誤用・乱用されているものはありません。また、「顧客」とは誰を指すものなのか、サービスはプロダクトなのか、何をもって受注といえるのか、など考え出したら悩んでしまいますよね。

 さらに、これらのビジネス要素の多くは舶来モノが多く、日本語ではうまく表現することが難しいものもあります。したがって、ビジネスアーキテクチャーの各要素をご説明する際には、その定義をきちんと、下記のように、行うことにします(図2)。

    図2.ビジネス要素の定義

 ビジネス要素を適切に定義したら、次に各事業体が持つビジネス要素の属性を考えていく必要があります。属性とは、ビジネス要素に備わっている固有の特性、機能、性質などを示すものです(図3)。

 この連載においては、ビジネス要素の汎用的な属性とその属性値のサンプルもご紹介していきます。これらは絶対と言うものではありませんので、皆さんがビジネスアーキテクチャー構築を実践される場合においては、独自の属性を発見されてもかまいません。もっとも、汎用的な属性を明示することが難しいビジネス要素(ビジョンやミッションなど)もありますので、その際はステートメントとして表現する際のポイントをご提示するつもりです。

    図3.ビジネス要素の属性

 最後は、ビジネス要素間の関係性です(図4)。図で言えば、「顧客リレーションシップは価値提案を促進する」、「チャネルはターゲット顧客に接する」のように解釈して下さい。

 言われてみれば当然だと思われるかもしれませんが、「その顧客リレーションシップは、どのターゲット顧客を維持するためにあるのか?」、「そのチャネルは本当のその価値提案を届けているのか?」と質問をすることによって、ビジネス要素間の一貫性や整合性を確認するためには、とても有用なツールではないでしょうか?

    図4.ビジネス要素間の関係性

次のページ
概念モデルで表現された大きな柱の関係性にまず注目せよ

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この記事の著者

白井 和康(シライ カズヤス)

 ITコンサルティング会社所属。IT業界において20年以上にわたり、営業、事業企画、マーケティング、コンサルティングと幅広い役割に従事。2年前のある日、「日本のビジネスに光を!」という天からの啓示を受けて以来、ビジネス構造の究明と可視化に没頭中。好きな言葉は、「人生とは、別の計画を作るのに忙しいときに起こる出来事である。」(ジョン・レノン)Facebookページ「ビジネスアーキテクチャー研究ラボ」を運営中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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