日本企業が進化しないと生き残れない理由-デジタル化の脅威
本連載のテーマは、「激動の時代を日本企業がどう進化し生き残るのか」です。「日本企業の進化」を論じなければならない背景としては、事業環境の激変、またそれに伴う日本企業の大幅なパフォーマンス低下があります。突き詰めると、環境の激変というのは、「デジタル化」と「グローバル化」、大きくこの2つだと思っています。
1つ目の「デジタル化」には、「デジタル製品化」、「ITによる水平分業」、「ダイナミック・ソーシング」の3つの側面があります。
「デジタル製品化」の進行によって、高度なアナログ技術、メカトロニクスの擦り合せ技術や製造技術がなくても、インテルやメディアテック、クアルコムなどのキラーコンポーネントを活用することで、高度な製品を作れるようになりました。その結果、日本製造業が築いた優位性が失われました。重工や重機、自動車やコピー機(共にまだ今のところ)などの日本の高い競争力が残っている領域は、まだデジタル化が大きく進行していない領域といえます。
インターネットの進化によって、「ITによる水平分業」も進みました。iPhoneやiPadが、EMS世界最大手のフォックスコン(鴻海精密工業)によって製造されているのはよく知られています。また研究開発や商品企画も、ITを活かして外部や消費者自身にアウトソースすることも増えています。レゴの一部商品は、消費者が企画したものを商品化したもので、こうしたCGC(Consumer Generated Contents)は今後も増えて来るでしょう。
さらに、最近では書籍『MAKERS』でも話題になっている、1人や少人数で家電メーカーをやる人々が出てきています。CADで製品をデザインし、データを送って部品を送ってもらい、自分で組み立て、そのままネットで販売するというように、企画・設計・製造から販売まで全部を水平分業して、それをたった一人で繋いでしまうようなモデルが出てきています。これは従来であれば、考えられなかったことです。
最後に「ダイナミック・ソーシング」ですが、ITの進歩で、ソーシング、つまりバリューチェーンにおけるリソースの使い方が、固定的・静的ではなくダイナミックになりました。つまり、リアルタイムで動的なものになりました。しかも、ソーシング先が、企業などの組織体ではないクラウドソーシングなども可能となり、企業の枠以外にソースを求める対象が拡がりました。
わかりやすい例では、編集者が選ばれた無名の一般人であるウィキペディアのようなCGCもありますが、どこの誰ともわからない、決して仕事でやっているとも限らない人々が、1つのバーチャルな組織としてバリューチェーンを形成し、サービスを提供するようになってきている。しかも、それが今後はどんどんリアルタイムに入れ替わり立ち代わり、手が空いている人やリソースがそれを担うようになっていくでしょう。なんの縁も所縁もない色んなバックグラウンドのたまたま居合わせた(手が空いていた)7人が即席でチームを組んだ「7人の侍」の未来版がどんどん現れるでしょう。
こうした「デジタル化」による事業環境の激変が、日本企業が営々と磨き上げてきた擦り合わせや製造などの技術、系列などを通じて築き上げてきたバリューチェーンを無力化しました。そしてそれは今も進行しています。これが「デジタル化による脅威」です。