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サービスデザインの本質-サービス全体の「構造としくみ」をデザインする 

(第12回) 


ようやく日本でも注目されはじめた「サービスデザイン」は、言葉の印象による誤解、UXとともに語られることでの誤解により、その本質が正しく理解されていないようです。前者に関しては「サービス」という言葉が狭く捉えられすぎてしまい、今やあらゆる組織が「サービスという視点から顧客との関わり方を考える必要があること」が見落とされている点。それが後者にも影響しており、サービスデザインがタッチポイントのデザインと混同されている点。今回はこうした誤解を解くためにも、あらためてサービスデザインの一番の特徴である「包括的なデザイン」について解説します。

タッチポイントのデザインではなく、“人間中心”のビジネスデザイン

 世界的には数年前から注目を集め、最近になってようやく日本でも話題になりはじめた「サービスデザイン」ですが、理解のされ方がすこし異なるケースもあるようです。

 ユーザーエクスペリエンス(UX)というキーワードとともに語られることが多いため、従来語られてきたようなUXデザインを想像し、ともすれば、「ユーザーとの接点となる個々のタッチポイントそれぞれのユーザー経験をより良いものとなるようデザインすること」だと、誤解してしまいがちなのです。

 第8回で紹介した「包括的な視点でデザインする」という点を意識して、タッチポイント同士がバラバラにならないようにカスタマージャーニーマッピングなどの手法を使い、タッチポイント間の関係性を押さえておくことぐらいはするかもしれません。ただ、そうだとしても、デザインの対象がタッチポイントであることに変わりなく、つまり、タッチポイントのデザインであってサービスデザインではないのです。

図1:タッチポイント個々ではなく、サービス全体をデザインする

 そこで、あらためて「サービスデザインとは何か」ということを考えると、「人間中心(Human-Centered)の視点から見たビジネスデザインそのもの」だということができます。個々のタッチポイントをどんなデザインにするかということではなく、あくまで「事業として展開するサービス全体を組み立てるのがサービスデザイン」です。

 その事業では、

  • どんな顧客に、どのような価値を提供するものなのか
  • その価値提供のためには、どんなコミュニケーションやインタラクションが顧客とのあいだに発生するか
  • その対応のためにどのようなしくみが必要か
  • 様々な要素がどのように互いに連携しながら機能することで、顧客に価値を届けることができるのか

 などを包括的に設計していくのです。

 ですので、そもそも個々のタッチポイントのデザインとはレイヤーが異なるもう1つ上の層にあるのがサービスデザインであり、タッチポイントそれぞれをどんなデザインにするかは、サービスシステム全体の構想ができた後の話だと理解したほうがよいでしょう。

 「ビジネスとしてのサービス」を顧客の視点から包括的にデザインしていくことが求められますので、顧客のサービス利用プロセスに沿ってサービス全体を俯瞰するような、カスタマージャーニーマップのようなサービスデザイン特有のツールも必要になってくるわけです。

 以下では、そうしたサービス全体を包括的に検討するためのサービスデザイン特有のツールを紹介しつつ、サービスデザインの特徴について解説していこうと思います。

次のページ
サービス全体を俯瞰できるようにする「サービス・ブループリント」

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この記事の著者

棚橋弘季(タナハシヒロキ)

棚橋弘季(たなはしひろき) 株式会社ロフトワーク所属。イノベーションメーカー。デザイン思考やコ・デザイン、リーン・スタートアップなどの手法を用いてクライアント企業のイノベーション創出の支援を行う。ブログ「DESIGN IT! w/LOVE」。著書に『デザイン思考の仕事術』 など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/4567 2013/03/18 18:30

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