今までの連載では、日本企業の進化の方向性、金融のグローバル化と日本企業への影響、グローバル化のオペレーションというテーマを解説しました。今回の記事では、アジア圏を中心に成長が期待される社会インフラ輸出ビジネスに関して、日本企業にとっての期待と難しさ、海外企業の成功例を解説します。
期待されるインフラ輸出ビジネス-日本の高品質な社会インフラを世界へ
本章では、大きな期待が寄せられている日本のインフラ輸出について述べたいと思います。
日本の国内市場が縮小する中で、エネルギー、水、交通、通信といった社会インフラの輸出による事業成長を模索する企業は増えています。新興国を中心とした人口の拡大と所得の向上によって、社会インフラ需要について今後莫大な市場拡大が見込まれることと、我が国の優れた社会インフラを支えている自社の技術や製品には勝機があるという期待が、その拠り所となっています。

日本の人口は2010年から減少に転じています。2020年にはピークから数百万人減少して約1億2千万人になり、その後も減少が続きます。一方で、この間に世界人口はアジアとアフリカを中心に成長を続け、現在の約70億人から80億人へと増加します。経済成長は人口の伸びを大きく上回り、それを支える社会インフラ投資は、新興国を中心に年間数百億ドル以上の規模で続きます。
この巨大なインフラ需要は、途上国において人類史上かつてない速度で起こる人口増と所得増によって生まれます。新興国には自国の需要増加に応える技術力と投資力が十分ではありません。先進国にとっては、巨大な国際インフラ輸出市場がアジア圏を中心として出現することになります。
我が国の社会インフラは、世界的に極めて高い水準にあります。特に、人口の集積レベルと社会インフラの品質を対比してみると際立ちます。2010年時点の東京の都市圏人口は3,400~3,700万人と推計され、世界1位です。2位グループのデリー、ジャカルタ、上海、ニューヨークといった都市圏はいずれも2,000万人程度であり、東京都市圏は世界でも抜きん出ていることが解ります。
それだけの集積がありながら、エネルギーの安定供給、上水道の水質の良さ、公共交通の鉄道の定時運行、安定かつ安価な高速通信環境といった社会インフラが整っています。加えて、エネルギー効率や省エネ効果が高く、発電におけるNOXの排出やガソリンやディーゼルといった移動用化石燃料の硫黄含有量は世界最低水準であり、大気・水質汚染が低い環境が保たれています。こうした日本の社会インフラは、世界的に高い競争力を持っています。
インフラ輸出では、
- 対象となる国や地域のニーズを深く理解して対応すること
- 性能や品質で世界的な競争力を持つというグローカライズ
が重要となります。その双方について考えてみましょう。
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ベイカレント・コンサルティング 橋本英之(ハシモト ヒデユキ)
株式会社ベイカレント・コンサルティング シニアパートナー 日本経営システム、ブーズ・アンド・カンパニー、ローランド・ベルガー(パートナー)にて、公共・エネルギー・重工業・ハイテクなど幅広い業界で全社・海外戦略、業務・組織 変革、事業提携などに従事。2012年に入社し、現職。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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