前回のMaker Faire Bay Area編では、「作りたいものを作る」というメイカー視点でモノづくりを捉えた。一方で、モノづくりを社会の発展や問題解決のために行うという視点もあり、これは「デザイン思考」というキーワードで語られることが増えている。そこで必ず引用される環境の一つが、スタンフォード大学のd.School だ。昨年邦訳された 『MAKE SPACE』 (阪急コミュニケーションズ刊)でも紹介されている、この環境づくりを自分の目で見たいと思い、今回のベイエリア視察でスケジュールに組み込んだ。ほぼ毎週金曜日開催される1時間のツアーに参加したので、その様子をレポートする。
スタンフォード大学d.Schoolとはなにか?
スタンフォード大学は、あらゆる分野で世界的に最高峰の成果を出し続けており、研究だけでなくGoogle、Yahoo、CISCO、SUNといった数多くのベンチャー企業を創出していることでも著名である。もちろんビジネススクールも有名だが、最近ではスティーブ・ブランク氏を中心としたリーン・ローンチパッドというアントレプレナー教育が注目されるようになっている。
アイデアを事業化するのがリーン・ローンチパッドであり、事業化できた企業を大きく成長させるのがビジネススクールと位置付けることもできる。この文脈で捉えれば、事業化のアイデアをどうやって産み出すかが重要な問いとなる。
「d.School」は、その一つの解となるプログラムであり、そこで提供されるメソッドが広く知られるようになっている。それだけでなく、アイデア創出を支援するように工夫されている環境そのものが非常に興味深いものである。この環境は、機械工学科にある2階建ての、それほど大きくない教育棟を割く形で作られている。
d.Schoolは他の学部(スクール)と違い、授業としての単位はあるが学位の提供はない。「学際領域(Interdiciplinary)」を超えて活動し、「対話(Intaractivity)」によるアイデア創出が最大の特徴である。このために全学部の学生が参加することができる。ただし、専門がある程度確立していないと成果が出しにくいことから、修士課程以降の参加が推奨されている。
毎週開催されるd.Schoolの1時間ツアーに参加してみた
d.Schoolの活動は学外にもオープンになっており、いつでも見学可能だ。毎週金曜日には学生のガイドが付く1時間のツアーが開催される。希望者は、集合時間にエントランスフロアにあるツアーデスク付近に集合するだけでツアーに参加できる。

このツアーデスクの周りの壁には、本プログラムに参加している学生の顔写真が貼られており、これ自体が参加者意識とモチベーションを高める工夫になっている。
今回筆者が参加したツアーは、参加者が30人ほどで、3回目の参加という人もいた。彼女は、スタンフォード大学から車で40分ほど南にあるサンノゼの学校の先生で、同僚を連れてきたとのこと。
ツアーはd.Schoolのプログラムに参加している学生によって引率されるのだが、今回はポストドクターのミッシェル、ドクターコースのメレディス、マスターコースのジェフリーの3名が対応してくれた。彼らの専門領域は、機械設計・ビジネス・化学と全く異なるのだが、d-schoolの多様性を感じられた。

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高野 元 (タカノ ハジメ)
創発計画株式会社 代表取締役 / サービス開発コンサルタントR&Dエンジニアとしてキャリアをスタートし、NECにてインターネット・サービス技術の研究開発に10年間従事。そのなかで、スタンフォード大学客員研究員としてシリコンバレーの息吹を体感。ビッグローブ事業部(現NECビッグローブ株式会社)...
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