日本の通信事業者の進化論-「フォーマット化」が鍵になる
ベイカレント・コンサルティング通信チームでは、これまでさまざまな通信事業者の新規事業戦略立案、新規サービス立ち上げ、またそれらのローンチに向けた推進をご支援してきました。その中において、通信事業者が近年志向している進化の方向性は大きく3つに分けられています。「プラットフォーマー化」「B2Cサービサー化」「フォーマッター化」になります。
1つ目の「プラットフォーマー化」はもはや語るまでもありませんが、10年以上前からのトレンドになります。かつてのiモードに代表されるモバイルサービスプラットフォームから、アプリケーションやゲーム等の提供/課金プラットフォーム、さらにはミドルウェア/ハードウェアを一式提供するPaaSまで、現在ではさまざまなプラットフォームが通信事業者各社から、また他のITサービス事業者からも提供されています。
2つ目は「B2Cサービサー化」です。トレンドとしてはここ1、2年のものとなり、他のアライアンスの力を借りつつも、通信事業者自身が“価値を直接顧客に届ける”というリスクを負って通信サービスに加えてB2Cサービスを提供しているのが特徴です。もともとB2Bに関してはさまざまなサービスを提供してきた通信事業者ですが、直近ではゲーム、映像コンテンツ、電子Book等のB2Cサービスの提供に踏み出してきています。
3つ目の「フォーマッター化」は、おそらく聞きなれない読者も多い言葉だと思います。第四回の記事においては、「(ビジネスの)フォーマットを作って、そのオペレーションを自分たちでやり、さらにそのフォーマットを海外などで横展開するというモデル」として紹介させて頂きました。
ユーザーに対してある価値を提供するモデルの全体像は、しばしばビジネスプレイヤーの「レイヤー」として表現されます。レイヤーとはすなわち、インターフェース/デバイス、アプリケーション、オペレーション、ソフトウェア、ハードウェア、ネットワークといったビジネス提供に必要な”パーツ”です。通信業界における「フォーマッター」とは、そのレイヤー間をまたがる価値交換の“フォーマット=方程式”を定義し、現実化させると共に、横展開・拡大していく存在である、と言えます。
通信事業者の「フォーマッター化」とは、自らが「フォーマッター」になり、主たるサービスである通信回線を含めた提供価値全体を取りまとめてユーザーに届けることを狙った進化、ということなりますが、一般的な業界における「フォーマッター化」と異なり、通信業界においてはそこにちょっとした“ヒネリ”を加えることが必要になってきます。
それでは、既に一定の方向性(収益性・実現可能性)が見えている「プラットフォーマー化」「B2Cサービサー化」に対して、まだその全容が見えていない「フォーマッター化」について、どんな「ヒネリ」が必要になるのか。また、その進化の可能性はいかなるものが考えられるのかを、「提供価値」「サービスパッケージ」「インターフェース」「プロモーション」「プライス」という5つの視点で、今回も含め2回分の記事をとおして、体系化して見ていきたいと思います。