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日本企業の進化論-激動の時代に生き残るための選択肢

事業会社のM&Aでの「失敗パターン」と「成功する戦略プロセス」

(第26回)

前回は日本の事業会社におけるM&Aの成功例・失敗例、ファンドのM&Aの成功例・失敗例を振り返りました。今回は、その事例から抽出される「事業会社とファンドのM&Aの差」や「成功するM&Aプロセス」を体系化して解説いたします。今までの連載はこちら。

事業会社とファンドのM&Aの差

 事業会社とファンドのM&Aの差はどこからくるのでしょうか。川崎重工業をインタビューさせて頂いた際には「我々はプロなので、デューディリジェンスをしなくても、シナジーが出るかどうかはわかる」というお話がありました。

 しかし、事業会社は少なくとも業界のプロではあってもM&Aのプロではないので、業界の素人ではあるけれども、M&Aのプロであるファンドに比べると、M&Aに関するパフォーマンスが出ていないというのが実情だと思います。

 
  図表1 M&Aにおける失敗例                          

 では、事業会社のM&Aの失敗は、どこに起因するのでしょうか?大きく3つの要因があります。

1つ目は、M&A戦略不足による失敗

 企業を買収する前に、そもそもどういった事業領域を狙うのか、つまり、どの地域、どの商品、どの顧客セグメント、どのチャネルを狙うのかという明確な戦略イメージを持ち、自社で不足している部分を補ってくれる企業を買うのか、更に事業を拡大するために同業者を買うのかといった狙いを明確にするということです。

 日本の事業会社で結構多いのは、たとえば、「医療・健康の領域」に進出する機会を模索すると、証券会社や投資銀行がいろいろな案件を持ってきて、その中から選んでしまうとい状況があります。これはM&A戦略不足による代表例です。

 幾多のM&Aを成功に導いている日本電産の永守さんは、この会社は買ったら伸びるなと見込んだ場合、「うち、買いますよ」と言って、「10年待つ」とよく言います。本当に買うべき会社を自ら選んで、長期的にでも機会を待つ。

 日本電産のような場合と比較して、対象業界などを漠然と指定して、証券会社や投資銀行から転がってくる案件を選んでしまうのか。

 ここには天と地ほどの差があります。当然、うまい話が転がってくるわけがないので、持ち込まれる案件を戦略なしにやってしまうことが一番大きな失敗のケースです。

2つ目は、ビジネスデューディリジェンスの不足による失敗

 日本の事業会社は、対象企業を買うことになったとき、ファイナンシャルアドバイザリーサービス(FAS)と呼ばれる会計系コンサルティング会社は入れることが多いです。大げさにいえばFASは、P/L(損益計算書)やB/S(賃借対照表)を見て、どれぐらいの価値を持つか、ということしか言いません。基本的には、買われる側の会社のマネジメントチームが出してくる数字を精査するのではなく、その数字をベースにNPV(正味現在価値)を出すというように、数字上で評価することを中心に据えています。会計上の評価のみでは、本当の意味でのデューディリジェンスにはなりません。

3つ目は、ポストディールマネジメント不足による失敗

 デューディリジェンスが終わって買収したあとのマネジメント、もしくは買収後の統合をやりきれていないということです。

 おおまかには、日本の事業会社によるM&Aの失敗は、以上の3つの要因のいずれか、もしくは、いくつかに起因している例が非常に多いのです。

次のページ
成功するM&A戦略プロセスとは?

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この記事の著者

ベイカレント・コンサルティング 北風 大輔(キタカゼ ダイスケ)

大手外資系企業、ベンチャーキャピタル、BCGを経て、ベイカレントに参画。 現在はパートナーとして、トップマネジメントへのセールスに従事。また、コンサルタントのキャリアを生かし、グローバルカンパニーを中心とした新規クライアント開拓を牽引。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/5003 2013/08/05 10:00

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