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「ビジネスモデル会計」のススメ-ビジネスモデルの9ブロックと変動損益計算書の関係を考える

(第15回) 

 これまで、固定費についていろいろ考えてきました。固定費の性格、固定費の分類、共通固定費の配賦問題、固定費が利益の増減に与える影響などです。これらを十分理解しておかないと、収益構造、コスト構造を明確にしたビジネスプランを作成することはできないでしょう。今回は、よくご存じの方も多い「ビジネスモデルキャンバス」と「変動損益計算書」の関係について考えてみます。特に強調したいことは、ビジネスモデルキャンバスで描いたビジネスモデルは、企業内で最終的に事業化するには、計数計画に落とし込んではじめて、採用の可否を判断できるということです。

戦略フローで100円ショップのビジネスモデルを考える

 一般的なビジネス構築は、戦略フロー(図1)で考えます。経営戦略を策定し、その構想を実施するまでの流れを示したものです。外部環境と内部環境をよく調査しデータを集め、SWOT(強み、弱み、機会、脅威)分析を踏まえて、ビジネスが進むべき方向を決めていきます。この進むべき方向は、「戦略ドメイン」として定義します。戦略ドメインは、「顧客」、「ニーズ」、「独自能力」の3つの視点で定義します。

戦略フロー  
  図1 戦略フロー

 たとえば、ある百円ショップでは、「主婦が500円で30分間遊べるゲームセンター」と定義し、小売業ではなくサービス業的な事業定義をしています。「いろいろ揃い安くて便利、しかもゲームセンターのように楽しく買い物しながら過ごせる主婦のための店舗作り」をめざします。

 このように戦略ドメインを定義することで、ターゲットをより明確にすることが可能になります。明確になったターゲットに、どのように販売していくかを考える事がマーケティング戦略です。マーティング戦略では、みなさんもよくご存じの4P(Price、Product、Promotion、Place)で、具体的な販売方法を検討していきます。

 百円ショップには、老若男女が買い物にきますが、メインターゲットを主婦にすることで、品揃え(Product)のコンセプトが決まってきます。価格(Price)はもちろん100円を中心にします。「こんなものが100円!」という驚きを与える商品開発力が、もっとも重要な販売促進(Promotion)になります。また「楽しく買い物しながら過ごせる店舗(Place)」作りに成功すれば、店舗滞在時間を長くすることができます。その結果、一人当たりの買い上げ点数がアップし、客単価アップを通じて、売上高の増加につなげる作戦(Promotion)です。

 Place戦略は、店舗、陳列、仕入れ、在庫、流通戦略を示します。販売価格100円の実現のため、大量仕入による仕入れコストの低下がカギになっています。そのためには、大量出店が必要になります。さらに低価格を実現する手段として、独自商品を扱うことが重要です。ほとんどの商品は独自企画商品で、メーカーから直接仕入れていることも低価格を実現できる理由です。スーパーなどのPB商品と同じ理由です。また広告宣伝費を使わない点も低価格に貢献します。もちろん店舗作り、陳列方法なども売上高の増加に関係します。

 さらにマーティング戦略を実現するための組織を考え(組織化=必要人数、責任者の決定など)、一定の組織を前提に実行計画まで落とし込みます。実行計画では、利益資金計画として計数計画を策定します。計数計画を策定することによって、ビジネスが採算に合うものか、満足のいく収益性を達成しているかなどを検討するデータを得ることになります。意思決定する経営者へのプレゼンや銀行などの資金提供者へ行うビジネスモデルの説明では、計数計画が欠かせないはずです。昨年からの連載の趣旨も、ここに焦点を当ててきたことは、読者の皆様は理解いただけていると思います。

次のページ
ビジネスモデルキャンバスと変動損益計算書の関係

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この記事の著者

千賀 秀信(センガ ヒデノブ)

公認会計士、税理士専門の情報処理サービス業・株式会社TKC(東証1部)で、財務会計、経営管理などのシステム開発、営業、広報、教育などを担当。18年間勤務後、1997年にマネジメント能力開発研究所を設立し、企業経営と計数を結びつけた独自のマネジメント能力開発プログラムを構築。「わかりやすさと具体性」という点で、多くの企業担当者や受講生からよい評価を受けている。研修、コンサルティング、執筆などで活躍中。日本能率協...

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