「ゲヒルン」という会社をご存知だろうか? アニメ「エヴァンゲリオン」に登場する秘密組織の名前から社名を取ったというこの会社、今セキュリティ業界でちょっとした話題になっている。というのも、社員わずか十数名、しかもその大半が平成生まれの若者ばかりなのだ(その中にはティーンエージャーが4人も含まれている!)。こう聞くと、数多ある学生ベンチャーの中の1つだと思われるかもしれないが、このゲヒルン、凄腕集団として今にわかに注目を集めており、既に金融機関など大手企業のセキュリティ診断を手掛けている。そんなゲヒルンを率いるのが、24歳の若さにして代表取締役社長を務める石森大貴さんだ。
若い読者の中には、石森さんの名前をどこかで耳にした方も多いかもしれない。2008年、まだ高校三年生だったころに、TVドラマ「ブラッディ・マンデイ」のクラッキングシーンをブログで仔細に考察して話題になったり、あるいは東日本大震災の際に、「ヤシマ作戦」と題した節電運動をネット上で大々的に展開したことも記憶に新しい。
このように、ネット上でたびたび話題を振りまいてきた石森さん。実はこのほかにも、その早熟ぶりを示すエピソードには事欠かない。以降で、その生い立ちを追ってみよう。
小学生時代にレンタルサーバサービスを始めた早熟の天才

宮城県石巻市に生まれた石森さん。その早熟ぶりは、早くも幼稚園時代から発揮されていたようだ。既に当時、家にあったワープロ専用機でタイピングをマスターしてしまったという。
「祖父が持っていたワープロ専用機を触っているうちに、いつの間にかローマ字入力を覚えていました。幼稚園生なので、まだローマ字なんて習っていないはずなのに、なぜなんでしょうね(笑)」(石森さん)
小学三年生のときには、学校に設置されていたPCに興味を持ち、毎日放課後になるとその前に座ってあれやこれやといじり倒していたという。そのいじり方というのが、また独特だ。普通なら真っ先にゲームに興味が向かうところが、石森少年はゲームには目もくれず、システムディレクトリの構成や、システムファイルの中身に興味が向かったというから面白い。
「Windows 98パソコンだったので、昔のMS-DOSのなごりでシステムファイルの中身をそのまま読めたんです。それを見ながら、『ああ、こうなっているんだ!』とPCの内部の仕組みを調べるのが楽しかったんですね」
そして小学校5年生のころには、校長室にあるサーバの管理者権限を乗っ取ることにまで成功したというから、もう小学生のころからハッカーとしての素質に目覚めていたようだ。さらにさらに、一生懸命貯めたお小遣いで念願の自分専用PCを購入した石森少年は、なんと小学校6年生のころには、自分のPCの環境をレンタルサーバとしてネット上で貸し出すサービスまで始めてしまったのだ。何という早熟ぶり!
しかし石森さん自身は、当時を振り返っても淡々としたもので、
「利用希望者には、信用調査も兼ねて『このレンタルサーバでどんなサイトをやりたいのか?』について手紙を書いて送ってもらっていたんです。すると家に僕宛の申し込み書類が山ほど送られてきて、親に不審がられてしまいました。『なぜこの子にこんなにたくさん手紙が届いているんだ?』って(笑)」
小学生のころからこれだけの逸話があれば、中学・高校時代にはさぞや尖がった天才ぶりを発揮していたのかと思いきや、コンピュータの趣味がなかなか周囲から理解を得られず、ちょっとだけ悶々としていたそうで。
「中学校ではパソコンに触れられる技術部という部活に入って、高校は地元宮城の進学校に進んだのですが、パソコンをいじっているとどうしても『ゲームをやって遊んでいる』としか見られなくて。本当はそうではなくて、もっと本格的なコンピュータの勉強をしたかったんですけど、なかなか周囲の理解は得られませんでしたね。そのうち学校の勉強にも興味が湧かなくなってきて、高校二年生のころからまったく勉強しなくなりました。おかげでテストは赤点だらけで、親が学校に呼び出されることもたびたびでした」
しかし、そんな石森さんの人生を変える大きな出来事が起こる。「セキュリティキャンプ 2007」への参加だ。
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吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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