SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

Enterprise IT Women's Forum 2025 KANSAI

2025年9月2日(火)大阪開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2025年春号(EnterpriseZine Press 2025 Spring)特集「デジタル変革に待ったなし、地銀の生存競争──2025年の崖を回避するためのトリガーは」

EnterpriseZineニュース

HRテックのjinjer、新CEO冨永健氏就任。人材データの一元管理システムで人的資本経営を加速

jinjer株式会社 代表取締役社長CEO 冨永健氏
jinjer株式会社 代表取締役社長CEO 冨永健氏

 クラウド型人事労務システム「ジンジャー」を提供するjinjerは、元Zendesk日本法人社長の冨永健氏を新たな代表取締役社長CEOに迎え入れ、「第二創業期」をスタートした。

シリコンバレー流と日本企業文化の融合を目指す

 冨永氏は、シスコシステムズ、アマゾンウェブサービス、デル・テクノロジーズ、Zendeskで20年以上のキャリアを積み重ねてきた人物だ。新CEOとしての挑戦は、グローバルスタンダードの経営手法と日本企業固有の組織文化をいかに融合させるかという点にある。

 「これまで働いてきた米国企業とは根本的に異なる考え方やアプローチが日本企業には存在します。この違いを理解し、両者の良い部分を融合させていくことが私の最大のテーマです」と冨永氏は語る。

 jinjerへの入社を決めた理由として、プロダクトの技術的優位性を挙げる。「他のHRテックベンダーと一線を画すのは、一つのデータベースで人事に関する全ての仕組みが稼働する点。もともとインフラ出身の私は、堅牢な土台があれば、どれだけプロダクトを拡張しても揺るぎない品質を保てることを理解しています」

独特な組織文化と透明性の高い管理手法

 jinjerの企業文化は、多くの日本のSaaSスタートアップとは異なる特徴を持つ。大手人材企業からスピンアウトした背景から、新卒採用・育成を重視する先輩後輩文化が根付いている。

 「日本のスタートアップでは極めて珍しい特徴です。この文化は、組織の一体感を強めると同時に、若手社員の高い教育レベルの維持にも寄与しています」と冨永氏は説明する。

 一方で、管理手法や業績評価にはグローバルスタンダードを積極導入している。会社全体でOKR(Objectives and Key Results)を導入し、会社レベル、役員レベルのOKRを全て可視化して全社員が閲覧できるようにするなど、透明性の高い仕組みを取り入れている。

提供:jinjer [画像クリックで拡大]

人的資本経営における「見える化」の重要性

 人的資本経営について冨永氏は、日本企業の現状と課題を指摘する。「日本企業は実は長年、人的資本経営を実践してきましたが、『情報を見える化すること』が苦手でした。現代ではステークホルダーや従業員の多様化に伴い、人的資本情報の明確な可視化が不可欠になりつつあります」

 人的資本情報開示の制度化も進む中、データに基づく人材マネジメントの必要性が高まっている。冨永氏は「どの部門でどのようなスキルが求められているのかなど、まずは組織全体を把握することが最重要課題です」と指摘する。

統合型データベースの決定的優位性

 この点においてジンジャーの技術的優位性が際立つ。多くの企業では給与、勤怠、スキル、家族構成といった人事データが複数システムに分散しているが、ジンジャーでは一つのデータベース上に集約されている。

 「どんな切り口でもデータ抽出・分析が迅速かつ容易に行えることが、我々の決定的な優位性です」と冨永氏は説明する。

提供:jinjer [画像クリックで拡大]

 具体例として、「特定の条件(例:東京圏在住、過去1年転勤なし、2年連続A評価以上、管理職経験あり、特定資格保有者、女性)に合致する社員を抽出したい場合、現状では各システムから人事データを抽出し、手作業で精査する必要があり、多大な時間を要します。ジンジャーの場合、正確かつ網羅的な"正しい人事データ"を、統合型データベースを軸に管理・蓄積・抽出することができます」

提供:jinjer [画像クリックで拡大]

 人事データが分散している背景について、冨永氏は「人事部門に求められる機能が時代とともに増加し、その都度新システムを導入した結果」と分析する。特にオンプレミスが多用されていた10年以上前は、個社別の人事慣習に伴った複雑な機能追加を繰り返し、コロナ禍では在宅勤務対応のため業務別システム導入が進んだ。

 「今後は徐々に1つのベンダーで管理されていくようになるでしょう。従業員は一人の人間であり、その個人を主語に人事データを整理したいというニーズが高まっているからです」と展望を語る。

 ジンジャーの市場ポジショニングについて冨永氏は、「我々のスイートスポットは中堅~従業員が数千人規模の大手企業です」と位置づけている。「SaaSである我々はバージョンアップや法令改正に伴うスピーディなアップデートを一括で行える点が強み」だという。

 セキュリティ面では、SaaSの特性を活かした対策を講じている。「人事データの管理を行うにあたり、アクセス権限を柔軟に設定できることが極めて重要です。部署変更や役職変更に伴うアクセス権限の適切な管理が可能になりました」

AI機能の拡充でユーザー体験を向上

 AI機能の拡充も進行中だ。顔認証(笑顔判定機能)[※1]による出退勤管理やタレントマネジメントのデータ分析など、多様なAI活用を進めている。

 特に注目すべきは、社内規定に関する質問をAIに質疑応答できる機能を無料で提供していることだ。「自社の業務規定や就業規則をAIに読み込ませることで、その内容をAIが回答してくれます。従業員は『AIに相談』というボタンを押すと、人事規定に関する疑問に対して、AIから迅速かつ正確な回答を得られます」と冨永氏は説明する。

提供:jinjer [画像クリックで拡大]

 これまで他社の人事労務サービスが特定の単一機能に特化してプロダクトを縦方向に深化してきたのに対し、ジンジャーは人事労務領域を横断的にカバーして成長している。また、更なる人事データの集約を可能にする新サービスのリリースも控えており、人的資本に関する幅広い領域をほぼ全てカバーできることになるという。

 人的資本経営の重要性が高まる中、統合的で正しい人事データ管理を強みとするjinjerの取り組みは、日本企業の人事DXを加速させる可能性を秘めている。グローバルスタンダードと日本型組織文化の融合を目指す冨永氏のリーダーシップのもと、同社の第二創業期の動向が注目される。

[※1]出退勤時に、写真を撮影して打刻することで、笑顔の点数と打刻時の様子を確認する機能のこと。

この記事は参考になりましたか?


  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/news/detail/22274 2025/07/10 09:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング