オーランドのリゾートホテル「WALT DISNEY SWAN AND DOLPHIN RESORT」には、4000人規模のソフトウェア開発に関わる人々で賑わっていた。ステージの横には、GMの車Voltが置かれている。盛大な音楽とダンスの演出の後、IBM Rationalのマーケティング担当バイスプレジデント ジーナ・プール(Gina Poole)氏が登場。
「皆さんがここに来られるまでの航空機の予約システム、荷物につけられたRFIDタグ、車の中のマイクロプロセッサ、移動をトラッキングするGPS、ホテルキーのプラスチックカード、これらすべてがシステムとして繋がり、ソフトウェアで動いています。医療分野においてはロボットによるバイパス手術が死亡率を減らしていくことが出来ます。つまりソフトウェアこそが社会に価値ある変化を起こすことができるイノベーションの鍵なのです。」と語り、ソフトウェアは何処にでもあって、人や企業の活動すべてに関わる、重要な見えない糸である、という意味の「Software, Everyware 」と本カンファレンスのテーマを紹介した。
ソフトウェアの複雑性にどう対処するか
キーノートのトップは、IBM Rarionalゼネラル・マネージャー クリストフ・クロックナー氏が登壇。クロックナー氏は以前、Rational ROSEを用いた「モデル駆動型開発」を率いてきたが、その後社内のプロジェクトをアジャイル開発に移行させ、アジャイルに関しての多くの経験と実績を持ち、現在はIBM Rationalのコラボレーション開発ソリューション「Jazz」を統括している。
「ソフトウェアの開発は高度になるにつれ、複雑性が増大する。この複雑性をマネジメントすることがソフトウェアの開発生産性を高め、ビジネスの競争優位性につながる。GMの自動車Voltの開発においては、ソフトウェアの再利用を高めることで、製品化のリードタイムが2分の1に短縮した他、多くの成功例が登場してきた」と語った。
「ソフトウェア開発プロジェクトの60%が納期、品質、コストになどの点で、期待どうりに完了できない。その要因はソフトウェアの複雑性である。複雑性をマネジメントするために、メソドロジー、ツール、プラクティスや知見を共有しなければならない。統合(Integrate)、協調(Collaborate)、最適化(Optimaization)が重要である。それは個人の生産性を高めるだけでなく、チームの生産性を高め組織の文化を変えることでもある。」(クロックナー氏)
IBMでは、26000人の開発者が700の拠点で開発をおこなっているが、こうしたIBMの社内の開発プロジェクトの経験で得られた成果を、製品につぎ込んできた。それが、IBM Rationalのコラボレーション開発基盤である「Jazz」である。
Jazzは要求管理、開発、品質管理などのソフトウェアのライフサイクルに関わる作業を、統合的に管理する拡張可能なフレームワークであり、デリバリーのためのプラットフォームである。世界各地に分散するチームや、大規模で多様な組織の開発効率と生産性を高めるために、成果物を相互に連携させ管理し、ガバナンスをおこなうためのソリューション群を提供している。
Jazzのプラットフォーム上では、Ratinal以外の他社ベンダーのツールによるデータ・ソースも、Open Services for Lifecycle Collaboration (OSLC)という標準規格のもと対象となるため、多くのコミュニティと共有が可能である。2008年の発表以来、Jazzプラットフォーム上で様々なソリューション群を提供してきた。今回それらのソリューション群のほとんどが強化されるとともに、「Rational Collaborative Design Management」という、チーム・組織が共同で設計をおこなうためのソリューションが新たに加わった。また、Jazzプラットフォームのコミュニティを、大学など教育機関にまで拡大する「Jazz Hub」を新たに開始することを発表した。