クラウドのオンデマンド性とスケールメリットを生かした多様な用途
冒頭で紹介したように、ニフティクラウドは現在、1000社以上の企業で利用されているが、その約半数がインターネット系の用途で占められているという。「Webサービスやゲーム、広告・イベント系の企業ユーザーが多いが、これらの企業が手掛けるサービスは需要の予測が立てにくく、またサービスのライフサイクルが早い。そうしたサービスにとっては、クラウドのオンデマンド性やスケールメリットが極めて良くマッチする」(上野氏)。
また近年では、ECビジネスを手掛ける企業による利用も増えてきているという。「EC企業がショッピングサイトを設ける際、従来は楽天に代表される大手ショッピングモールに出店することが多かったが、近年では加えて独自にECサイトを運営してマーケティングや顧客分析を行うところが増えてきている」(上野氏)。
またECサイトのトラフィックは、キャンペーンや広告を打った直後に急激に増加する傾向がある。そうした場合でも、クラウドであれば一時的にシステムを増強してトラフィック増加に対応できるメリットがある。
一方で、ネットビジネス以外のリアルビジネスを主業とする一般企業の利用も、最近になって目立って増えてきているという。その導入目的の多くは、ファイルサーバーやCRM、SFA、グループウェアといった情報系システムの基盤を低コストで調達することにあるが、中にはクラウドならではのメリットを生かした導入事例も出てきている。
「3.11の東日本大震災以降、事業継続性の観点から情報系システムをクラウド上に導入するといった事例も徐々に増えてきた」(上野氏)。
パートナーエコシステムの拡充によるシェア拡大を目指す
ちなみに、一般企業の業務システム基盤としてパブリッククラウドを利用する場合には、往々にしてセキュリティが問題となる。ニフティクラウドではそうした課題に対応するために、ファイアウォール機能やデータセンター内にユーザー専用のネットワークセグメントを構築できるプライベートLANサービスを提供している。
またこれに、パートナー企業のVPN接続サービスを組み合わせ、社内イントラ環境の延長上でパブリッククラウドを利用する仮想プライベートクラウド環境を構築することもできる。業務システムの商談の半数以上が、このVPN接続を希望しているという。
ニフティクラウドでは他にも、数多くのパートナー企業との協業を積極的に推し進めている。「2011年4月から、新たに『ニフティクラウド パートナープログラム』を開始した。ニフティクラウド上でパートナー企業やSIerにサービスやソリューションを構築してもらい、顧客に提案していく。ニフティ側はプラットフォーマーとして、アカウント管理や請求代行、一次サポート窓口などのサービスをパートナーに提供できる。今後は、こうしたパートナービジネスのスキーム強化に取り組んでいく」(上野氏)。
こうした戦略の一環として同社は2012年2月14日、既存のサーバーをニフティクラウドへ簡単に移行することを可能にする「VMインポート機能」の提供を開始した。「この機能を活用すれば、例えばオンプレミスとパブリッククラウドを併用するハイブリッド環境が容易に実現できるし、パブリッククラウド上にバックアップサイトを置く低コストの災害対策システムも実現できる。こうしたソリューションは、ユーザーが単独で構築するのは難しい場合もあるため、ニフティクラウドとパートナー企業で連携して様々な形のものを提案していきたい」(上野氏)。