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開発と運用が一丸となったDevOpsでユーザーの望むシステムを迅速に実現する

 最近、あちらこちらで「DevOps」という言葉を耳にする。しかし、その正確な意味や目的、実施して得られるものを答えられる人は少ないのではないだろうか。バズワードと見られがちだが、激しく変化するビジネスに負けないシステム開発を実現する上で、いま最も重要なキーワードである。そこで本稿では、4月11日に東京・神保町で開催された、日本クイント株式会社 コンサルタント 石ヶ森正樹氏による同社セミナー「DevOps概要と動向のご紹介」から、DevOpsの実態と真価について探ってみた。

「混乱の壁」を越えろ

 石ヶ森氏によれば、「DevOpsという言葉自体が出てきたのは2008年~2009年くらいのことですが、そのときにはそのまま廃れてしまいました。それが2年ほど前から、本格的に取り組もうという声があちこちから上がり始めました」という。

 DevOpsに対する関心は、日本国内だけでなく、グローバル規模で急速に高まりつつある。それはLITAという組織の創設にもつながると言ってよいだろう。DevOpsの基盤技術の一つともなっているリーンITに関する世界中のナレッジや事例を収集・発信する非営利組織として「LITA(Lean IT Association)」が2015年に創設され、学習カリキュラムや能力フレームワーク、資格体系の整備を着々と進めている。その1年後の2016年には、DevOpsの基盤となる知識や経験の共有を目指すコミュニティ「DASA(DevOps Agile Skills Association)」が創設され、DevOpsに関する知識と経験の共有やフレームワーク化が加速してきている。

 日本でも2016年には、IT企業とユーザー企業約50社が集まって「DevOps推進協議会」を設立。DevOpsにおける最新の開発・運用手法や基盤の実証と、それを利用したITサービスモデルの構築を行っている。石ヶ森氏の所属する日本クイントも、もちろん同協議会のメンバーだ。

 石ヶ森氏は、この急速なDevOpsの拡がりの背景には、これまでIT組織が長年にわたって抱えてきた課題が限界に来ているという、切迫した事情があると説明する。

「システム開発の効率や品質を妨げる要因として、“混乱の壁(wall of confusion)”という言葉が知られています。1つのシステムやサービスを開発する際に、開発や運用、営業などの縦割り組織が各々の考え方や利益を主張することが、ITサービスのスムーズな提供の妨げとなってしまうのです。こうしたサイロ化を打破する新しい考え方や手法が求められていました」(石ヶ森氏)

石ヶ森正樹(いしがもり まさき)氏
システム開発支援ツールやシステム開発方法論の開発・適用業務に従事したのち、お客様のシステム開発業務改善のコンサルタントとして長く活動する。コンサルタントとして活動する中でITSMに関わることとなり、現在は日本クイント株式会社で講師、コンサルティング業務に従事。ITIL®エキスパート。

 開発者は顧客の求めるシステムを実現するべく、「どんどん変更や改良、機能追加をしていきたい」と考える。だが一方で、運用担当者は基本的に安定を求める。「新しいサービスを追加するのはいいが、それでもし何かあれば責任を問われるのは運用だ」というわけだ。この対立の結果として、顧客の意向やニーズに沿った成果物がタイムリーに提供されていないことが、従来のシステム開発における問題だったと石ヶ森氏は指摘する。

 課題を解決するには、開発者と運用者が共に顧客の声に耳を傾け、それをもとに話し合い、開発・検証・フィードバックのサイクルをスピーディに回しながら、顧客の要望を実現可能なシステムに作り上げていく仕組みが必要だ。もちろん、これまでもアジャイル開発やリーン開発といった試みはあった。しかし、2010年ごろから、それらの個々の手法や要素技術を取り込むという動きが進められ、その総称として開発者(Developer)と運用者(Operations)の密接な協業を表すDevOpsという言葉が使われ始めたと、石ヶ森氏は振り返る。

DevOpsは文化――システム提供に関わる人々を考え方から変革する

 DevOpsの本質は何かとの問いに対して、石ヶ森氏は「DevOpsは文化だ」と答える。システムの品質やサービスを、顧客の求めに応じて絶え間なく改善・進化させていくには、その基盤となる、開発者と運用者の密接なコミュニケーションとコラボレーションが不可欠なのは言うまでもない。

 単に新しいテクノロジーを導入するのではなく、システム提供に関わる人々のマインドや、原則となる考え方そのものを変革する。その結果、顧客の求めるソリューションを迅速に提供・改修できる柔軟でフットワークに優れたチームを実現することがDevOpsの主眼であり、それゆえにDevOpsは本当の意味での「顧客中心主義」だと石ヶ森氏は語る。

 石ヶ森氏は、DevOpsを実現する上で必要な5つのコンセプトとして「CALMS」というキーワードを挙げる。次の5項目の頭文字をつなげた言葉だ。なお、これらに「Sourcing(調達)」を付け加えて「CALMSS」と表現する人もいるという。

  • C …… Culture(文化):開発者と運用者間の協調的で開かれた文化
  • A …… Automation(自動化):適用可能な範囲はすべて自動化する
  • L …… Lean(リーン):無駄のない最適化された流れを作る
  • M …… Measure(測定):開発・運用で共通の指標を用いた効果測定
  • S …… Sharing(共有):情報・製品を共有する仕組みやプロセスの共有

 いずれにしても、これまでバズワードと見られがちだったDevOpsが、明確なフィロソフィーを持った、新たな時代に向けたITサービス提供のためのアプローチであることが、このCALMSを見ても伝わってくる。

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著者プロフィール

  • EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)

    「EnterpriseZine」(エンタープライズジン)は、翔泳社が運営する企業のIT活用とビジネス成長を支援するITリーダー向け専門メディアです。データテクノロジー/情報セキュリティの最新動向を中心に、企業ITに関する多様な情報をお届けしています。

  • 工藤 淳(オフィスローグ)(クドウ アツシ)

    出版社や制作会社勤務の後、2003年にオフィスローグとして独立。もともと文系ながら、なぜか現在はICTビジネスライター/編集者として営業中。 得意分野はエンタープライズ系ソリューションの導入事例からタイアップなど広告系、書籍まで幅広く。

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