SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

直近開催のイベントはこちら!

EnterpriseZine編集部ではイベントを随時開催しております

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

“生活者発想”の「オープン・サービス・イノベーション」によるビジネス創造

戦略論の系譜としてのオープン・イノベーション(後編)-ケイパビリティからオープン・イノベーションへ

(第6回)

前回は、オープン・イノベーションへと繋がる戦略論の変遷を、ポーターのポジションニングアプローチからコア・リジリティ(硬直性)まで俯瞰しました。今回は、戦略論の変遷が、ダイナミック・ケイパビリティからオープン・イノベーションにどのように繋がるかについて俯瞰し、最後に読者のために提供できる自社サービスも少しだけ紹介します。今までの連載はこちら。

ダイナミック・ケイパビリティからオープン・イノベーションへ

left
写真.TBWA博報堂 高松充(筆者)

 組織内部のケイパビリティを外部の環境にいかに適応させるか、そのためにはどのように従来のコア・ケイパビリティーを変更させる学習をするべきか、といったテーマが経済学者を含めて研究されるようになっていきます。

left
写真.デイビット・J・ティース著
(ダイヤモンド社・刊)

 こうした背景の中で誕生したのが、カリフォルニア大学バークレー校教授のデイビット・J・ティースら(1997年)の「ダイナミック・ケイパビリティ論」です。

 ティースらは、内部資源と外部資源を効果的にコーディネートできる経営力を有している企業が勝者となりうることを提示しました。つまり、企業の内部と外部にケイパビリティを創出し、コーディネートすることができるダイナミック・ケイパビリティの能力が高い企業ほど競争優位性を保つということです。

 さらにティースが強調したことは、企業の外部との能動的な協調関係です。つまり、企業境界線をまたぎながら、自社の資源と他社の資源とをコーディネートさせる「オーケストラレーション」の能力が優れていれば、企業は競争優位を生み出せると提起しました。

 また経済学者のリチャード・ラングロアが「消えゆく手(Vanishing hand)」という表現を用いて、脱垂直統合化の流れの中で起きている「企業の境界線」の問題を提示しました。シュンペーター賞を受賞したラングロアは、チャンドラー(1977年)が提示した少数の経営者による川上から川下にいたる垂直統合型の自前主義経営(=みえる手:Visible Hand)は、歴史的に見れば一つの通過点にすぎないと提起しました。

 そしてニューエコノミーの流れにのる企業は、自社のケイパビリティのみならず、市場(=他の企業)のケイパビリティも利用し、利益を享受する方向に進んでいくことを主張しています。このように、「企業の境界線における相互作用」は、「エコシステム(企業の生態系)」という言葉でも表現され、現在、最もホットな経営テーマであるといって良いだろうと考えています。

 前回から2回に分けて説明してきように、マイケル・ポーターらによって提唱されたポジショニング・アプローチが、外部環境分析に偏重していたことへの批判から生じた資源論ベースは、内部資源と外部資源の活用という「企業の境界線における相互作用」の議論へと進化していきました。技術戦略の権威であるマルコ・イアンシティーらが指摘するように、現在、企業競争の舞台は「企業間」から「企業ネットワーク間」へと変化しつつあると言って良いだろうと思います。

 つまり、「企業は自社の視点での収益モデルだけでは持続的な事業システムを描くことができなくありつつある」ということです。

次のページ
戦略論が辿り着いた新たな経営システムのパラダイム「オープン・イノベーション」

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
“生活者発想”の「オープン・サービス・イノベーション」によるビジネス創造連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

高松 充(タカマツ ミツル)

  株式会社TBWA博報堂 CSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー) Human Centered Open Innovation(HCOI)事業の統括責任者。 博報堂にて営業職、在米日本大使館駐在を経て、経営企画職を経験。 博報堂DYグループの社内ベンチャー制度の審査委員な...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/4730 2013/05/14 08:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング