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週刊DBオンライン 五味明子

冬だって節電は重要だ! 大阪大学&マイクロソフトの共同プロジェクトから活かせる教訓は…

IT業界では毎月のように新しい言葉が生まれます。そしてたいていは世の中に浸透することなく、人々の記憶からキレイに消え去ります。Web 2.0、ユビキタス、サステナビリティ、NGN、SOA、etc... なんだか眺めているだけでかなしい気持ちになりますね。自分で挙げておいてアレですが、もはや誰も口にも文章にもしないNGN、ほんの数年前まで某メーカーとか某キャリア(どっちも頭文字にNが付いていたような…)のエラい人々が大合唱して推進しようとしていた記憶がうっすらと残っているのですが、いったいどこに消えていってしまったのでしょうか。もしまだ存在が確認できるようでしたら、ぜひともお知らせください(←でもあんまり興味ない)。

 そういう意味で言えば、「クラウド」や「ビッグデータ」はバズワードにしてはかなり長持ちしているほうではないでしょうか。とくにクラウドに関してはもはやバズワードの域を脱したという評価も耳にすることも増えてきました。個人的にはこの2つに「ソーシャル」と「モバイル」を加えた4つのバズワードは、あと1年くらいはITのトレンドを引っ張っていくように思えます。単体ではなく、4つの技術が連携しあい、相乗効果を発揮しながら発展している点が、かなしい運命に終わったバズワードたちとの違いなのかもしれません。

大阪大学サイバーメディアセンター
大阪大学サイバーメディアセンター

 さて、できることなら過去のバズワードに分類されないでほしかった言葉のひとつに「グリーンIT」があります。ITの電力消費量を減らそう、CO2排出量を減らそう、そのためには無駄なIT機器の電源をオフにしよう、ディスプレイも暗くしよう……みなさま、どの程度実践されていますでしょうか…。

 東日本大震災後の夏ごろまでは、計画停電に対するおそれもあって人々の節電に対する意識も高かったのですが、時間の流れとはおそろしいもので、夏の冷房も冬の暖房も何の抵抗もなくスイッチを入れてしまう。とくに夏よりも冬のほうが節電に対しては意識が薄れがちになっている気がします。聞くところによればこの冬の電力事情もかなり逼迫した状態だとか。にもかかわらず、停電に見舞われることもないせいか、危機意識はすっかりと影を潜めてしまいました。

 無駄な電力消費を防ぐ、これは今の日本において非常に重要なテーマだと思います。グリーンITという言葉がたとえ消えてしまっても、ITによる省電力の取り組みはつづけたほうがいい。電気代が抑えられれば、直接的なコスト削減にもつながります。しかし単に節電を声高に呼びかけるだけでは人々の意識には決して刷り込まれません。ではどんな施策が有効なのでしょうか。

 本稿では2年前に行われた大阪大学サイバーメディアセンターと日本マイクロソフトの実証実験の結果から、ITによる効果的な省電力の方法を探ってみたいと思います。

「人間の行動をグリーン化する」プロジェクト

竹村先生
竹村先生

 まずはこの取り組み自体の説明をすこし。2010年12月、大阪大学のサイバーメディアセンターとマイクロソフトは、大学におけるエネルギー消費の可視化に向けた実証実験「大阪大学CMCグリーンITプロジェクト」を開始しました。期間は2010年12月1日から2011年6月30日までの半年間。プロジェクト期間中に東日本大震災が発生しています。

 8階建て(地上7階地下1階)で総面積7,200平方メートルの大阪大学サイバーメディアセンターとは、「教育も研究も、大学の機能を1カ所にすべて詰め込んだ、いわば大学の縮図のような建物」と大阪大学 教授(工学博士)の竹村治雄先生は説明してくれました。

 竹村先生はサイバーメディアセンターの副センター長も兼任されており、情報メディア教育研究部門教授という肩書きも。学部学生のPCを使った情報教育や語学教育などが行われるほか、情報系を中心とした5つの研究部門の研究室も入っています。実際に建物内に入らせてもらいましたが、コンパクトな箱の中に、新旧入り交じったテクノロジが詰め込まれている感じでした。

 余談ですが、地下のサーバルームの隣の部屋にSONY製のNEWSワークステーションがぽつんと置かれているのを発見したときは、「大学って感じがするなー」と不思議な感慨に包まれました…。

大学らしいごちゃごちゃ感が満載のサーバルームは設定温度23度。仮想化を進めたのでサーバ台数はかなり少なくなったとのこと
大学らしいごちゃごちゃ感が満載のサーバルームは設定温度23度。
仮想化を進めたのでサーバ台数はかなり少なくなったとのこと
サーバルームの隣の部屋でSONY NEWSを発見
サーバルームの隣の部屋でSONY NEWSを発見

 話をもとに戻します。

 そもそもこのプロジェクトは、「大学は電気を使い過ぎ!」というかねてから批判の対象になりがちな現状をなんとか改善したいという大阪大学側の要望が発端となっています。大学という場所は多くの学生や教職員を抱えています。加えて研究室などではさまざまな実験を行っており、むやみやたらに電源を落とすわけにはいきません。温度管理に最新の注意が必要な生き物などを飼っているところで電源をオフにすれば、即研究そのものがオフになってしまいます。

 しかし一方で「エアコン常時オンがあたりまえ」的な感覚も強く、学内を通じてなかなか節電への意識が高まらないのは、大阪大学だけではなく大学全般が抱える悩みのようです。学生や職員の自主的な行動が頼りというのも心もとなく、「電気代を自分で支払っている意識が薄い学生に節電を呼びかけても効果は得にくい」と竹村先生は言われていましたが、そりゃそうだろうなあ……。

 「研究室はひとつの中小企業のようなもので、研究室単位で節電するといっても簡単にはいかない。だが、たとえば文学部のようにそれほど電気を使わなくていいところもある。大学全体で画一的に省電力化を図ることは難しいが、できることを明確にするためにも、まずはサイバーメディアセンターに限って電力消費を可視化することからスタートしようと考えた」と本プロジェクトの概要を解説してくれたのは大阪大学 サイバーメディアセンター 情報メディア教育研究部門 助教の間下以大氏。本プロジェクトの実行にあたり中心的な役割を果たした方です。

間下先生
間下先生

 ITのチカラを使って、大学施設の多様性を凝縮したともいえる施設の電力消費量を測定/可視化し、その情報を共有していくことで全学レベル、さらには他大学のエネルギー消費削減にもつなげていく - 最終的な目的は「人間の行動をグリーン化する」ことだと竹村先生。本プロジェクトは半年間の実証実験終了後も引き続き行われており、筆者がお話を伺ったのはさらにその1年後の今夏でした。はたして1年半でどれほどの効果を得られたのでしょうか。

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この記事の著者

五味明子(ゴミ アキコ)

IT系出版社で編集者としてキャリアを積んだのち、2011年からフリーランスライターとして活動中。フィールドワークはオープンソース、クラウドコンピューティング、データアナリティクスなどエンタープライズITが中心で海外カンファレンスの取材が多い。
Twitter(@g3akk)や自身のブログでITニュース...

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