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日本データセンター開設目前で期待高まるSoftLayer


 10月16日、日本SoftLayerユーザー会は「【緊急開催】第4回東京SoftLayer勉強会」を開催した。クラウドサービス「SoftLayer」はどのような特徴があるのか。

 SoftLayerはSoftLayer Technologiesが提供するIaaS型クラウドサービス。2013年7月にIBMに20億ドルで買収された。翌2014年1月にはデータセンター拡充に12億ドルを投資すると発表するなど、近年IBMはクラウドサービスに注力している。日本も年内にデータセンターが開設される。開設時期は未発表ではあるものの、もうカウントダウン段階にあるようだ。

 まだSoftLayerは日本で知名度はそう高くないものの、海外の先進的な企業では採用されているクラウドサービスだ。例えばIBMが買収したデータベースサービスのCloudantも買収前からSoftLayerの「顧客」だった。アメリカではクラウドプロバイダとしてはAWSやRackSpaceに並ぶ存在と目されていたほど。今やSoftLayerはIBMの投資を追い風にIBMのクラウドサービスの大きな柱として成長しつつある。例えばPaaS型開発プラットフォームのBluemixはSoftLayerのIaaSの上で稼働するなど、IBMのなかでSoftLayerの存在感は増しつつある。

 今回勉強会が「緊急開催」となったのはSoftLayerに精通している「中の人」、SoftLayer TechnologyのMichael Milligan氏が来日するため。意外なことにMilligan氏はもともとSoftLayerのユーザーで、後からSoftLayerに転職したのだとか。Milligan氏はSoftLayerのインフラに関する最新情報を重点的に解説していたが、本記事ではSoftLayerの代表的な特徴から入ることにしよう。ポイントとしてはベアメタルが選べることと、成長しつつあるグローバルな高速ネットワーク、インフラの透明性が挙げられる。

 ベアメタルとは言葉だけ見ると「むき出しの金属」という意味になる。この場では仮想環境(サーバー)と対をなす物理環境(サーバー)を指す。クラウドなのに物理環境も選べる、仮想と物理を混合して使えるのがSoftLayerの大きな特徴となる。

 一般的にクラウドは手軽に素早く安価に使えるのがメリットだ。「ちょこっと」使う分には仮想環境は便利。一方「がっつり」使いたいなら高性能な物理サーバーの方が有利。さいしょは「ちょこっと」で十分でも、システムが成長すると仮想環境の処理量では足りずに「がっつり」が必要になることも起こりうる。ただし物理環境だと「環境の移行が難しい」「ハードウェアが高価」「調達まで時間がかかる」という壁に直面することになる。

 そうした課題をSoftLayerではいろいろと払拭(ふっしょく)されている。まず仮想から物理、物理から仮想への移行はそう難しくない。仮想サーバーからイメージをとり、物理サーバーへリストアしたり、その逆も可能だからだ。またSoftLayerで物理環境を構築する場合、メモリ 8GB、CPU 3.4GHz、ディスク 2TBのサーバーなら30分以内に作成できて、1時間あたり約50円で利用可能となる。スタートアップ段階では仮想環境にして、後で物理環境に移行しやすいことは採用する側には安心材料となりそうだ。

 もうひとつ、グローバルな高速ネットワークがあり、それがIBMの投資をうけて成長していることも特徴だ。現時点では世界に17のデータセンターと19のアクセスポイントがあり、最高で10Gbpsが利用できる。日本のデータセンターはまだ開設していないので、現時点での「最寄り」は2014年6月にオープンした香港となる。

 このネットワークは運用費で見ても特徴がある。一般的なクラウドサービスではデータセンター間でデータを転送するとデータ転送量が発生する。しかしSoftLayer内部のデータ送受信なら無料だ。例えばアジア、北米、ヨーロッパなど、グローバルなエリアで分散してレプリケーションやバックアップしても内部ネットワークなら無料ということだ。また外部(パブリック)ネットワークへデータ転送する場合でも、仮想サーバーなら月5TBまで、物理サーバーなら月20TBまで(いずれもサーバーあたり)は転送料は無料となる。このデータ転送料は運用費を考える上で差となってくるのではないだろうか。

 それからクラウドサービスでありながら、インフラの構成や稼働状況がオープンであることも特徴だ。勉強会でMilligan氏はマザーボードやストレージについても詳しく言及していた。例えばサーバーが使えるストレージの選択肢が広い。ローカルディスクストレージならSATA、SA-SCSI、SSD、外部ストレージならレガシーNAS、レガシーiSCSI SAN、オブジェクトストレージ、QuantaStor、バックアップにはeVaultなどが選べる。

Milligan氏
Milligan氏

 Milligan氏は「SoftLayerのデータセンター内部はどのリージョンでも金太郎アメのように全く同じ。システム構成を理解すると運用に役立ちます」と話し、内部構成を事細かに解説した。外部ネットワークの接点はここにあり、ここが二重化されていて、顧客のサーバーはここにあり……と、クラウドサービスなのにここまでシステム構成を詳細に開示するなんて。正直、驚いた。

 アプリ開発者のような立場だと「クラウドの中身がどうなっていようと結果が返ってきてくれればいい」と考える傾向にあるが、インフラエンジニアだと中身が見えると把握しやすく安心感につながるそうだ。そういう意味ではSoftLayerはインフラエンジニアに好まれるクラウドサービスと言えるかもしれない。

 年内には日本にデータセンターが開設されるという。国内であればセキュリティ面で安心材料となるだけではなく高性能が期待できる。高いスループットを要件とするところは特にだ。日本のデータセンターが開設された暁には人気に一気に火が付くかもしれない

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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