SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

直近開催のイベントはこちら!

EnterpriseZine編集部ではイベントを随時開催しております

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

熱烈!オバシバ対談

Facebook松信さんにMySQLの歴史とMyRocksについて聞いてみた

 MySQLコミュニティで松信さんのことを知らない人はいない。ソニーからMySQLへと転職し、サン・マイクロシステムズやオラクルからの買収を経験。後にDeNAに移り、5年前からFacebook。ほぼ一貫してMySQLをキャリアの軸としてきた。MySQLの歴史とFacebookにおけるMySQL活用やMyRocks開発についておうかがいした。

松信さんキャリアはMySQLとともに

左から、
左から、松信さん、斯波さん、小幡さん

斯波健徳(以下、斯波):まずは松信さんの自己紹介として、MySQLにかかわるきっかけや経緯などをお願いします。

松信嘉範(以下、松信):2001年に新卒でソニーに就職して、2年目ごろからOracle Databaseに関わりORACLE MASTERなどデータベースの勉強をしました。後にオープンソースのPostgreSQLとMySQLを検証し、MySQLを選びさらに研究を重ねて行きました。

小幡一郎(以下、小幡):MySQLを選択した理由は?

松信:ポイントインタイムリカバリとサポートですね。当時のPostgreSQLのバージョン7では、ポイントインタイムリカバリの機能がありませんでした。

斯波:コミュニティへの参加は?

松信:友人つながりでデータベース比較研究会という10人くらいの不定期勉強会に参加し、より深くMySQLを学ぶようになりました。2005年にMySQL日本法人が立ち上がり、エンジニア募集がありましたが、MySQLに詳しくてMySQLのパートナー企業に所属していないのはぼくくらいで(苦笑)。何のしがらみがないことから声がかかりました。

斯波:パートナー企業に所属している人は避けられたのですね。

松信:当時のMySQL日本法人はまだ営業が数人しかいない企業でしたので保留していたのですが、最終的にはMySQLのコンサルティングチームに入ることになりました。後は皆さんご承知のように、サン・マイクロシステムズに買収され、暗黒時代があり(苦笑)、オラクルに買収され。

小幡:サンに買われた後が暗黒なの?

松信:リーマンショックがあったので。まあ……大変でした。

斯波:いつまでいましたか?

松信:オラクルに統合されるまでです。その後はDeNAに。会社がオラクルになってからは2回しか出社していなくて。オラクルが嫌でやめたように見えるかもしれませんが、個人的にはサンがオラクルに買収されてよかったと思っています。

斯波:オラクルがサンを買収した時はMySQLコミュニティでは動揺が広がりましたね。

松信:そこからSkySQLやMariaDBが生まれるきっかけになりました。ヨーロッパでは(独占禁止法に抵触するため)オラクルのサン買収を差し止める訴訟もあり、オラクルが以後5年間はMySQLビジネスに干渉しないということもありました。

小幡:「Save MySQL」ってキャンペーンもありましたね。

松信:そうです。

斯波:MySQLとオラクルの経緯は実は複雑ですよね。

松信:まず2005年にInnoDBだけがオラクルに買収されました。当時MySQLでトランザクションをするにはInnoDBが必要でした。MySQLの心臓部分をオラクルに握られたようなものです。後にMySQLがオラクルへの依存をなくそうとして、トランザクション対応のストレージエンジン「Falcon」を作ろうとしたのですが、結果的にはうまくいきませんでした。最終的にMySQLが(サン買収を通じて)オラクルと一緒になれたということは、MySQLとInnoDBが同じ会社になれて良かったと思います。

小幡:オラクルは戦術でInnoDBを買収したのかな?

松信:そう思います。オラクルはデータベースに詳しいので、MySQLのコアとなる価値がInnoDBにあることは分かっていたと思います。

小幡:あのとき(MySQLコミュニティの)みんなはオラクルがMySQLを潰すと思った?

松信:思いましたね。

斯波:コアな価値を買収したということは、その可能性を考えますよね。

松信:ソニーからMySQLに転職するとき「オラクルに買収されませんように」と祈ったくらいです。サンに買われたから安心したのに、まさか1年程度しか持たないなんて(苦笑)。

斯波:結局、オラクルに。

松信:ただオラクルは思った以上にMySQLをよく扱ってくれました。エコシステムも維持できましたし。

小幡:どうしてだろう?

松信:ユーザー層が重複していなかったからだと思います。MySQLからOracle Databaseに移行することは現実的ではありません。大規模に(MySQLを)導入している企業ならオラクルとも接点があるので、そこでビジネスができますし。

小幡:ところでFalconには関わりました?

松信:少しだけ検証に関わりました。しかしはるか前から開発されていたInnoDBを上回ることはできず、それだけInnoDBは素晴らしかったということです。

小幡:MySQLのバージョン番号で6が欠けているけど、これはFalconが関係しているの?

松信:6は大風呂敷を広げすぎて、GAの見通しがたちませんでした。開発ロードマップの問題です。現在のトーマス・ウリンさんがリーダーになり、開発計画を細分化するという方向性に変わりました。それからうまく回るようになったようですね。

斯波:ヨーロッパの独占禁止法調査のタイミングで「オラクルは5年間MySQLの開発計画に干渉しない」となりましたが、もう5年過ぎましたよね。オラクルに特に変化は見られませんね。

松信:当時とビジネスモデルが変化しているからだと思います。今オラクルはクラウドに力を入れていますから、MySQLをつぶす理由がますますなくなったのでしょう。

斯波:むしろデータベースに選択肢があるほうがいい。

松信:はい。

次のページ
FacebookがMyRocksを採用した経緯

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
熱烈!オバシバ対談連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/9678 2017/09/05 06:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング