「自分が使いやすい端末を使いたい」社内のリクエストをどう満たすべきか?
「俺はiPhoneを使いたくないな。ドコモの端末で探してくれ」
これは、2年ほど前、まだNTTドコモがiPhoneを扱っていないころに、とある大手食品会社の取締役が情報システム部門の担当者に言った言葉だ。情報システム部門のメンバーからすれば「自分で好きな端末を買って使えばいいだろう」と言いたいところだが、取締役の指示とあればそうとも言えず。しかし、社内ではiPhoneで統一すると決まったばかりなのにどうしたものか。
これは、2013年1月に起きていたことだ。現在はNTTドコモもiPhoneを扱っているが、回線だけの問題ではなく、現在も似たようなことは起きている。
こんなワガママを言う取締役だけでなく、この部署ではiPadが使いやすいが、こちらの部署では専用のアプリがあるからWindowsがいいとか、Androidが向いている、という可能性はある。しかし、PCだけの時代には、社内すべて同じメーカー、同じPCを配布してきた情報システム部門としては、スマートフォンやタブレットの「混在」に対する漫然とした不安はあるのが当然だ。
社内のリクエストを満たしつつ、セキュリティ面、運用面のリスクや煩雑さを回避する方法はあるのだろうか。
「やるぞ!」という情報システム部門の覚悟
Yahoo! Japanを運営するヤフー株式会社では、全社員にiPadとiPhoneを配布し、さらに現在はMacを利用する社員も大勢いる。同社では、MacとWindows PCをいくつか選定し、その中で各自が好きな端末を選択できるようになっている。Yahoo! Japanのユーザーは個人が中心で、できるだけユーザーと近い環境を使うことが必要だからだ。
同じように、タブレットやパソコンを自由に選定できる企業は、少しずつだが増えてきている。それは、個人端末を持ち込むBYOD(Bring Your Own Device=私物の端末を業務活用する手法)よりも安全であり、足並みを揃えやすいだからだ。
これらの要望を満たすためには、情報システム部門が「やるぞ!」という覚悟をする必要がある。知識とか、リスクを回避するための手法はその後の話で、まずは、これをやるための体制を作る、という覚悟をする必要がある。情報システム部門長は、その覚悟をもって取り組み始めないことには、後から「だから嫌だったんだ」という愚痴と言い訳のオンパレードになってしまうからだ。そうではなく、覚悟を持つことで部門メンバーの意思統一も可能になる。
そういう意味で、情報システム部門長は、システムや技術のこととは他に、ビジネスを理解している必要がある。世間の情報システム部門メンバーの中には、自社が何で稼いでいるのか、自分の給与の源泉が何なのかということを知らない"お粗末な組織"が存在するが、それではこれからの時代に追随できないと言える。