そもそもPCは必須か?
PCが一人一台の時代になって久しいが、タブレットの導入となると、PCか、タブレットかの議論が出てくることがある。資産管理まで任されている情報システム部門としては、できるだけ貸与する端末を減らしたい、ということなのだろう。また、管理の手間も最小限にしたいということもある。
また、全員が同じ状態、つまりPCを持っているならPCだけ、タブレットならタブレットのみ、という状態を保ちたいというのも、管理の手間の視点なのだろう。たしかに、管理を任され、トラブルがあるとすぐに責任を問われる立場としては、分からないではないところだ。
私は、このシリーズで「どちらかにせず、両方貸与すればいい」と説いてきた。どちらか一方にすることで、売上が上がらないとか、ユーザー社員の作業負荷が増えるのは本末転倒だからだ。一般的に、固定費の中で人件費がもっとも高いのだから、PCやタブレットの費用をケチってはいけない、という意見を持っていた。今でもそうなのだが、最近はそもそもPCがいらないと思える社員が増えてきた。
PCが不得意な人たち
「PCが不得意」というと、大企業の人たちは、一昔前でいうところの「窓際族」を思い出すかもしれない。たしかに、定年前で入れ替えの効く仕事をしている人もそうかもしれないが、実際には若い人たちの中にも存在する。
昨年、あるIT企業に新卒で入社してきた男性社員は、入社時には両手の人差し指でキーボードを叩いていた。聞いてみると、大学時代(都内の有名大学)はPCを所有しておらず、もっぱら大学にあるPCで論文を書いていたそうだ。論文以外は、基本的に手書きか携帯入力だったということだから、まともにPCを使ったことがなかったのだ。
同様に、30代でもPCが苦手な人は少なくない。日々の業務でも、ラジオボタンで選ぶだけの報告とか、数値を入れるだけの交通費精算程度なら、ほとんどマウスとテンキーでできてしまう。PCを使うことが本業務でないのであれば、当然上達することはないのだ。
eメールを使ったことがない人たち
「今どき、eメールを使ったことがない人たちなど、存在するのだろうか」と考える人は多いのではないか。私自身も、最初に聞いた時は信じられなかった。しかも、20代前半の理系出身の若者だ。
あるIT企業に、彼は営業として2014年に入社した。都内の有名大学の新卒なのだから、eメールくらいは使えて当たり前。誰もが、それを意識することもなく、当たり前のように入社後の社内研修の際にeメールを書くように指示をしたところ、「これ、僕使ったことがないです」との返答。講師役の先輩は驚いた。
よくよく聞いてみると、eメールは知っているけれど、使ったことはない。件名に何を入れるべきかよく分からない。eメールの書き出しとか、書き方は難しそうで、自分にできるのだろうか、と不安だ、という返答が返ってきた。
実は、彼は「LINE世代」。友達とはLINEでやり取りをし、大学では専用のイントラがあるので、そこでファイルや情報を共有、あるいはレポートを提出する。eメール添付で送付する、という文化が、彼にはなかったのだ。 講師役の先輩は頭を抱えた。「eメールから教えるのか…」と。