SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

Enterprise IT Women's Forum

2025年1月31日(金)17:00~20:30 ホテル雅叙園東京にて開催

Security Online Day 2025 春の陣(開催予定)

2025年3月18日(火)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2024年秋号(EnterpriseZine Press 2024 Autumn)特集「生成AI時代に考える“真のDX人材育成”──『スキル策定』『実践』2つの観点で紐解く」

紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得

ソフトウェアの著作権は誰のものか (3)

  今回もソフトウェアの著作権についてお話をしたいと思います。前回は、著作権法の条文から、そもそもITの設計書やプログラムが著作物として認められる条件とは、どのようなものであるかについて、お話ししました。今回は、その続きとして、著作物と認められたプログラムの所有権に関する判例をご紹介したいと思います。

 著作権は、原則として、著作者つまり、モノを書いたり作ったりした人(あるいは組織)に帰属するものであることは間違いありません。コンピュータのプログラムであれば、それを作ったプログラマかベンダー企業に属します。しかし、いくら著作権があると言っても、そのソースコードの所有権はどうでしょうか。ユーザー企業からの依頼を受けて、プログラムを作成したベンダー企業にはプログラムのソースコードを引き渡す義務があるのでしょうか。ごく基本的なことなのですが、これについては誤解されている方も多いようですので、今回、あえて取り上げさせて頂きます。

ソースコードがどちらのものかについて争われた事例

 まずは、以下の判例からご覧ください。読者のみなさんは、どのように考えるでしょうか。

 【大阪地方裁判所 平成26年6月12日 判決より抜粋して要約】

 あるソフトウェア開発業者が,出版社からソフトウェア開発委託契約に基づいてソフトウェアの開発を受託し、初期開発と、その後の改訂の費用、合計約500万円の支払いを受けた。この際、ソフト開発業者は、ソフトウェアのソースコードを納品しなかった。(このソフトウェアについては、稼働の保守作業についても、ソフトウェア開発業者が行うこととなっていた。)

 ところが、その後、このソフトウェア開発業者が廃業をすることとなり、出版社は、今後の保守作業の為、ソフトウェアのソースコードの引き渡しを求めたところ、ソフトウェア開発業者はこれに応じなかった。

 これに対して出版社は、ソフトウェア開発業者が、契約に定める義務を怠ったとして,約580万円の損害賠償を求め、裁判となった。

 コンピュータのプログラムのうち、Java言語やC,C++,C#等といった、いわゆる高級言語で記述されるものは、プログラマが作ったプログラムを機械語にいったん翻訳するなどしないとコンピュータ上では動作しません。このプログラマが作っただけの状態のものをソースコード、機械語に翻訳する等の作業をして、実際に動く形になったものをオブジェクトプログラムと呼びます。

 実際にコンピュータ上で動くのはオブジェクトプログラムですから、ユーザー企業はこれさえ受け取っておけば、とりあえず事は足ります。しかし、この訴訟の例にもある通り、ソフトウェアというものは、一度納品された後も、様々な修正や改訂が行われます。その際には、ソースプログラムを再度書き直す必要がありますので、ソースコードが手元にないのはユーザーにとってとても困ったことになります。

 しかし、一方で、ベンダーの側から見ると、自分達の著作物であるソースコードを他人に渡してしまうことには抵抗があります。自分達が、一生懸命にアイディアを考え、工夫をしたプログラムがユーザー企業からさらに他者(たとえば競合するベンダー企業)に流れ、流用されたりすることがあるからです。

 この件では、前述の通り、ソフトウェア開発業者はソースを渡さず、その代わりに自分達でプログラムの保守を行うことで、自分達の著作物を守りつつ、ユーザーにも不便はかけない方針をとったようです。

次のページ
著作物の所有権についての裁判所の判断

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/7344 2015/10/22 06:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング