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紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得

ソフトウェアの著作権は誰のものか (3)

  今回もソフトウェアの著作権についてお話をしたいと思います。前回は、著作権法の条文から、そもそもITの設計書やプログラムが著作物として認められる条件とは、どのようなものであるかについて、お話ししました。今回は、その続きとして、著作物と認められたプログラムの所有権に関する判例をご紹介したいと思います。

 著作権は、原則として、著作者つまり、モノを書いたり作ったりした人(あるいは組織)に帰属するものであることは間違いありません。コンピュータのプログラムであれば、それを作ったプログラマかベンダー企業に属します。しかし、いくら著作権があると言っても、そのソースコードの所有権はどうでしょうか。ユーザー企業からの依頼を受けて、プログラムを作成したベンダー企業にはプログラムのソースコードを引き渡す義務があるのでしょうか。ごく基本的なことなのですが、これについては誤解されている方も多いようですので、今回、あえて取り上げさせて頂きます。

ソースコードがどちらのものかについて争われた事例

 まずは、以下の判例からご覧ください。読者のみなさんは、どのように考えるでしょうか。

 【大阪地方裁判所 平成26年6月12日 判決より抜粋して要約】

 あるソフトウェア開発業者が,出版社からソフトウェア開発委託契約に基づいてソフトウェアの開発を受託し、初期開発と、その後の改訂の費用、合計約500万円の支払いを受けた。この際、ソフト開発業者は、ソフトウェアのソースコードを納品しなかった。(このソフトウェアについては、稼働の保守作業についても、ソフトウェア開発業者が行うこととなっていた。)

 ところが、その後、このソフトウェア開発業者が廃業をすることとなり、出版社は、今後の保守作業の為、ソフトウェアのソースコードの引き渡しを求めたところ、ソフトウェア開発業者はこれに応じなかった。

 これに対して出版社は、ソフトウェア開発業者が、契約に定める義務を怠ったとして,約580万円の損害賠償を求め、裁判となった。

 コンピュータのプログラムのうち、Java言語やC,C++,C#等といった、いわゆる高級言語で記述されるものは、プログラマが作ったプログラムを機械語にいったん翻訳するなどしないとコンピュータ上では動作しません。このプログラマが作っただけの状態のものをソースコード、機械語に翻訳する等の作業をして、実際に動く形になったものをオブジェクトプログラムと呼びます。

 実際にコンピュータ上で動くのはオブジェクトプログラムですから、ユーザー企業はこれさえ受け取っておけば、とりあえず事は足ります。しかし、この訴訟の例にもある通り、ソフトウェアというものは、一度納品された後も、様々な修正や改訂が行われます。その際には、ソースプログラムを再度書き直す必要がありますので、ソースコードが手元にないのはユーザーにとってとても困ったことになります。

 しかし、一方で、ベンダーの側から見ると、自分達の著作物であるソースコードを他人に渡してしまうことには抵抗があります。自分達が、一生懸命にアイディアを考え、工夫をしたプログラムがユーザー企業からさらに他者(たとえば競合するベンダー企業)に流れ、流用されたりすることがあるからです。

 この件では、前述の通り、ソフトウェア開発業者はソースを渡さず、その代わりに自分達でプログラムの保守を行うことで、自分達の著作物を守りつつ、ユーザーにも不便はかけない方針をとったようです。

次のページ
著作物の所有権についての裁判所の判断

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この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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