2025年2月25日、Acompanyは新サービス「AutoPrivacy AI CleanRoom」提供についての記者発表会を開催した。
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同サービスは、国内初のハードウェア型秘密計算を用いたセキュリティサービス。これにより、自社の機密情報などを生成AIが安全に取り扱える環境を整備できるという。
サービス提供の背景について、同社の竹之内氏は生成AIの活用における現状を「今はまだ情報収集などに留まり、企業の基幹業務への活用はまだなされていない」と説明。基幹業務に生成AIを活用するには、各社向けにカスタマイズされたプライベートLLMが必要であるとした。
プライベートLLMは汎用LLMと異なり、機密情報や個人情報などを読み込ませることができるため、各社事業に適合したAI活用が可能になる。しかし、サイバーセキュリティの脅威や知的財産の漏洩といったセキュリティリスクとも隣り合わせだ。そのなかで、現在生成AIに対応したセキュリティ対策として“秘密計算”に注目が集まっているという。
秘密計算とは、データを暗号化(秘匿化)したままの状態で計算を実行する技術の総称。この技術を用いることで、従来の暗号技術ではカバーしきれなかったデータの「活用時(処理時)」における暗号化が可能になるという。同技術には主に3つの方式が存在し、今回提供されるサービスはハードウェア型のTEE(Trusted Execution Environment)を用いたCC(Confidential Computing)で構成される。
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「この方式は、2024年6月にAppleがiPhoneでの生成AIに適用したことで、現在注目を集めています。米国の防衛領域でも活用が広がっており、この先市場は急成長すると予想されます」(竹之内氏)
次に、同社の⾼橋氏からAutoPrivacy AI CleanRoomの概要が説明された。同サービスによりセキュアなプライベートLLM開発基盤が提供され、企業内のさまざまな生成AIアプリケーションをAIクリーンルーム(生成AI×秘密計算開発基盤)上で実現できるという。主な特徴は以下のとおり。
- Confidential AIを容易に利用可能:秘密計算×生成AIサービス開発をサポート
- コンプライアンス準拠:利用データは委託事業者やクラウド事業者が閲覧不可であるため、ポリシー準拠が容易。また、マスキングやアクセス管理によって個人情報の取り扱いを安全に行える
- GPU秘密計算対応による高速展開:秘密計算に対応したGPUを利用することで、高速処理と高セキュリティを両立
提供機能については、以下4点が挙げられた。
- LLMホスティング:AIクリーンルーム上でのLLMモデルのホスティングで、GPUへの対応を実現。高速な実行が可能
- プログラム実行基盤:AIクリーンルームに対し、Pythonプログラムで制御が可能。企業ごとのニーズに合致したプライベートLLMを構築できる
- AIゲートウェイ:AIモデルやAIサービスへのアクセスを管理。秘密計算技術を利用したゲートウェイで、外部からの攻撃を防御する
- RAG:秘密計算環境上で、機密データを用いたRAG用のデータベースを作成
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なお、同サービスはAI利用者が保有する「データ保護」のみならず、AIモデルを保有する企業の「AIモデルのIP保護」にも有効だとしている。
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