ガートナージャパン(以下、Gartner)は、「日本におけるクラウドとAIのハイプサイクル:2025年」を発表した。
「クラウドコンピューティング」という名称が登場して20年が経過しようとしている。この間、クラウドは企業の既存システムを支えるだけでなく、AIや生成AI、AIエージェント、エージェント型AI、マルチエージェントの開発を推進する基盤へと進化しているという。また、数億人規模のユーザーにAGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)を提供可能なハイパーAIスーパーコンピューター(スパコン)へと変貌を遂げつつあるとのことだ。
同ハイプサイクルでは、クラウドとAIに関して「AI、産業革命関連」「クラウド関連」「マイグレーション関連」の3つの観点から、特に注目すべき34のテクノロジーやイノベーションを取り上げているとした。
![日本におけるクラウドとAIのハイプサイクル:2025年[画像クリックで拡大]](http://ez-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/22503/1.png)
日本におけるクラウドとAIのハイプサイクル:2025年
[画像クリックで拡大]
生成AI、AIエージェント、エージェント型AI、マルチエージェント、ハイパーAIスーパーコンピューターなどは現在、ハイパースケーラー各社の主要イノベーションと競争領域になっているという。MCPやA2Aプロトコルのように、新たなAIレイヤーを形成するプロトコルを巡る競争も急速に活発になっている。
現在、世界的にハイパーAIスーパーコンピューターの建造が進んでおり、大規模のものでは100兆円を超える投資も見られるという。このような想像を超えたスケーラビリティを有するインフラから提供されるクラウドサービスを使うことで、企業はクリックだけで人間並みの能力を備えたマルチエージェントを数万、数十万、数億といった単位で生成できるようになるとのことだ。また、EVからヒューマノイドを含む工場までを、エンドツーエンドのデジタル閉ループとし、AIで最適化できるようになるという。よって、企業はこうした新たなクラウドとAIの時代の到来に備える必要があるとしている。こうしたことは、すべての人は、クラウドやAIを、もはや単なるツールではなくスーパーパワー(想像を絶するテクノロジー)や武器として捉える必要があることを意味するとのことだ。
企業は、マイグレーション領域でのクラウドサービスの進展にも注目すべきだという。効果的なサービスを自らしっかりと理解し駆使(自分で運転)できるようにすることで、企業はメインフレームや仮想環境からのマイグレーションコストを抑制できる可能性があるとしている。限られた原資を有効に使うために、効果的なクラウドサービスやソリューションを駆使することで、既存システムに対して数十パーセントものコスト削減を実現し、そこでの余剰をAIや人材などへの戦略投資に回していくことが、すべての企業にとって重要な戦略的アプローチになると、Gartnerは述べている。
全般的にAIは、ベンダーの投資が非常に活発であると同時に、ユーザー側の関心も持続的に高まっており、実践的な取り組みも加速度的に進展しているという。このような状況を踏まえ、GartnerではAIは比較的早い段階で成熟期に達すると見ているとのことだ。一方で、クラウド関連のテクノロジーは登場から相応の年月が経過しているにもかかわらず、企業における活用が限定的にとどまっており、成熟には想定以上の時間を要しているとした。
現在のAIの進化はインターネットの進化に類似しているという。これからさらにAIはAGI、ASI(Artificial Superintelligence:超知性)へ向けてさらに進化していくとのことだ。一方、AI領域の多くのイノベーションは、過熱(ハイプ)しやすい傾向があるという。中でも、近年注目されている「エージェント型AI」はその典型だとしている。
【関連記事】
・日本IBM、AI駆動型統合基盤「webMethods Hybrid Integration」発表 AI Gatewayで企業のAIガバナンスを強化
・専門家の96%「AIエージェントはセキュリティリスクの要因と認識」──SailPoint調査
・NRIセキュア、AIエージェントシステムの設計段階で潜在脅威を分析し対策案を提示するサービスを提供
この記事は参考になりましたか?
- 関連リンク
- この記事の著者
-
EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
「EnterpriseZine」(エンタープライズジン)は、翔泳社が運営する企業のIT活用とビジネス成長を支援するITリーダー向け専門メディアです。データテクノロジー/情報セキュリティの最新動向を中心に、企業ITに関する多様な情報をお届けしています。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア