Akamai Technologiesは、同社が委託したIDCの調査報告書『Worldwide Edge Spending Guide — Forecast, 2025』を発表した。生成AIがビジネス運営に不可欠な存在となる一方で、企業は従来型のインフラモデルの見直しを迫られていることを明らかにしたという。
アジア太平洋地域(APAC)の企業は、集約型クラウドアーキテクチャだけでは、増大するスケール、速度、コンプライアンスの要件に対応できないことを認識しているという。競争力とコンプライアンスを維持し、現実世界のAI導入に備えるためには、インフラ戦略を見直し、強化し、エッジサービスを取り込むことが重要だとしている。
この調査報告書では、パブリッククラウドのアジリティと拡張性を、エッジコンピューティングの近接性およびパフォーマンスと組み合わせ、AIが活用される未来において、ビジネスの成長に必要な柔軟性を提供する方法について説明しているとのことだ。
AIインフラの現状チェック
生成AIが実験段階から実行段階に移行するにつれ、APAC地域の企業は古いインフラの限界に直面しているという。現在、この地域で調査に参加した企業の31%が、すでに生成AIアプリケーションを本番環境に導入しているとのことだ。一方、64%の企業はテスト段階またはパイロット段階にあり、顧客向けと社内向けの両方のユースケースで生成AIを試験導入しているという。しかし、この急速な進展により、既存のクラウドアーキテクチャに重大なギャップが生じているようだ。
- マルチクラウドの複雑さ:49%の企業がマルチクラウド環境の管理に苦慮している。ツールの一貫性の欠如、断片化されたデータの管理、プラットフォーム間における最新のシステムの維持が困難であることが原因だという
- コンプライアンスの罠:アジア太平洋地域のトップ1,000の企業のうち50%は、様々な規制の変更や急速に進化するコンプライアンス基準への対応に奮闘しているとのこと。これにより、市場への適応能力とAIイノベーションの推進に課題が生じるという
- 予測できない費用の発生:生成AI戦略における重要な課題として、24%の企業が予測不可能なクラウドコストの上昇を挙げている
- パフォーマンスのボトルネック:従来のハブ・アンド・スポーク型のクラウドモデルは、リアルタイムAIアプリケーションのパフォーマンスを低下させるレイテンシーを引き起こすため、生産規模の生成AIワークロードには適していないとのこと
APAC の主な調査結果
- 中国は、エッジとパブリッククラウドの優位性を活用して生成AIをスケーリング:企業の37%が本番環境で生成AIを導入し、61%がテストを実施している一方、96%がパブリッククラウド IaaSに依存しているとのこと。リモート運用、非接続環境、業界固有のユースケースを支援するため、エッジITへの投資が加速しているという
- 日本はデジタル成熟度のギャップがあるにもかかわらずAIインフラを加速:日本の企業のうち、生成AIを本番環境で活用しているのは38%に留まる一方で、84%は生成AIがすでにビジネスを破壊しているか、今後18ヵ月以内にビジネスを破壊するだろうと回答。また、98%はトレーニングと推論のワークロードのためにパブリッククラウド IaaSでAIワークロードを実行する予定であるとしている。AI、IoT、クラウド切断の運用サポートといったエッジのユースケースが、インフラのアップグレードを促進しているとのこと
- インドは生成AIの需要に対応し、コスト管理のためにエッジインフラを拡大:企業全体の82%が生成AIの初期テストを実施し、16%が生成AIを本番環境で活用する中、インドはTier2およびTier3の都市にエッジ機能の拡充を促進しているという。生成AIを採用している企業の91%がパブリッククラウド IaaSを利用しているが、コストの懸念とスキルのギャップが、AIに対応する低コストのインフラへの需要を後押ししているという
- ASEANは資本集積地を超えたエッジファーストの戦略で生成AIを活用:ASEANの企業の91%が、生成AIは18ヵ月以内に破壊を引き起こすと予想。その一方で、16%は生成AIアプリケーションを本番環境に導入し、84%が初期テスト段階に入ったとのこと。96%の企業がAI ワークロード向けにパブリッククラウド IaaSを採用しており、リモート運用とデータ制御をサポートするためのエッジ投資は増加しているという
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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