IDC Japanは、国内金融IT市場(銀行、保険、証券/その他金融の国内におけるIT支出、ATM、営業店端末のIT支出分も含む)の2021年~2024年の市場予測を発表した。
国内金融IT市場全体において、2020年はCOVID-19の影響により大幅に減少するが、2021年は大手金融機関を中心にIT支出が回復するという。特にカード、損害保険などでは業務系システム刷新が継続しているほか、メガバンクなど大手金融機関では新しいビジネスモデル構築などにおいて積極的なIT支出を予測しているという。
一方で、地域金融機関はCOVID-19の影響により地域経済の停滞の長期化が見込まれる他、不良債権が業績を圧迫するためIT支出の抑制傾向が継続しマイナス成長が長期化するとみられる。なお、COVID-19の感染拡大によって国内金融機関のDXユースケースの優先順位は大きく変わるが、DXの取り組みは継続している。
特に非対面チャネル強化、業務効率化は喫緊課題となっていることから、業態を問わず関連するDXユースケース(例:銀行におけるモバイルバンキング強化、保険会社における顧客向けモバイルチャネル強化、証券会社におけるロボアドバイザーなどのリアルタイムでの金融アドバイスなど)の取り組みが進められており、これまでDX推進に消極的だった金融機関でも喫緊の課題として取り組みに着手しているという。
その他、メガバンクなど大手金融機関では非対面チャネルの強化、業務効率化に加えて、新しいビジネスモデルの構築に向けたDXユースケース(例:銀行におけるBanking as a Service、保険会社におけるテレマティック保険、健康増進型保険、証券会社におけるブロックチェーンを活用したファンドのトークン化など)も継続して進められている。
また近年、金融機関以外の他業態の企業において金融サービスを提供するケースが増えている。現時点では、既存顧客向けサービス強化を目的している他、新規ビジネスとして事業を展開する企業が多いものの、取引先、または従業員支援を目的に金融サービスを開始する企業もあるとしている。
新規参入業態としては、従来の大手流通業、情報サービス業、通信事業者などに加えて、製造業などに拡大。他業態の企業において金融サービス展開のためのIT支出規模を国内FinTech関連/エコシステムIT支出規模として今回の調査レポートから推計を開始したという。2021年の他業態の企業におけるFinTech関連/エコシステムIT支出規模は638億円、前年比成長率32.5%と予測している。
国内金融機関において、COVID-19の影響によって今後既存ビジネスの成長性の停滞がさらに深刻になるとみており、業態を問わず新しいビジネスモデルの構築が求められているという。したがって、IDC Japan ITスペンディンググループ リサーチマネージャーの市村 仁氏は「ITサプライヤーは、COVID-19感染拡大の中でも新しいビジネスモデル構築の支援が求められており、特に金融サービスを展開する他の産業分野の企業との連携、および地域創生支援に対して積極的に支援することが有効である」と分析している。
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