Pendo.io(以降、Pendo)は、創業者兼CEOのTodd Olson氏がプロダクトマネージャーとしての自ら経験を基に2013年に設立した会社であり、デジタルプロダクトの活用状況を分析し、定着化の課題を解決する製品を提供している。2021年3月2日、同社は日本法人を設立したことを発表した。2021年3月現在の同社の取引先は1700社を超え、うち50社がFortune 500企業だという。なぜこのタイミングでの日本進出なのか。その狙いについて訊いた。

プロダクト主導の組織への変革とは?
――Pendoの開発背景にあるビジョンについて伺います。Toddさんは「日本企業もプロダクト主導の組織(Product-led Organization)に変わるべき」と主張していました。ここでのプロダクト主導とは、「プロダクトアウト」と何が違うのでしょうか。その目指すところについて、解説していただけますか。
高山:最近、米ボストンのベンチャーキャピタルOpenView Ventureが提唱するようになったProduct Led Growth(PLG)が注目を集めています。これはエンドユーザーに焦点を当てた成長モデルで、プロダクトを媒介にコミュニケーションを行います。PLGの対極にあるのが、Sales Led Growth(SLG)と呼ばれるモデルで、マーケティングからインサイドセールス、営業、カスタマーサクセスに至るレベニュー組織全体で顧客に対峙します。PLG企業の代表格が、Dropbox、Slack、Zoomのようなリモートワークでお馴染みのSaaSベンダーです。SLG企業よりもPLG企業の収益性が2倍というデータもあり、テクノロジーでデジタルプロダクトの使い勝手をもっと上げられるのではないかという考え方が出てきました。
大山:PLGは収益化の視点でプロダクトを見ていますが、組織というもっと大きな視点で「プロダクト主導」を捉え直したのがToddの提唱する「プロダクト主導の組織(Product-led Organization)」になります。企業には様々な部署がありますが、プロダクトを中心に据え、製品開発、営業、カスタマーサポート、人事、ファイナンスまであらゆる部署がエンドユーザーに向き合うのがその特徴です(図1)。
シリコンバレーの会社はどこも常にデータを使い、一人ひとりがどのように自社製品を使っているかを分析し、意思決定を行います。これに対して、日本企業は報告のためにデータを収集する傾向がありますが、本当の意味で顧客に向き合うためにはプロダクトのデータを見て、意思決定をする組織を作らないといけない。それがToddが「プロダクト主導の組織」を整備するべきだと訴える背景です。

――プロダクト主導とは言っても、あくまでも顧客視点だというわけですね。この組織のリーダーがCPO(Chief Product Officer)やプロダクトマネージャーになるのだと思いますが、日本企業にとっては馴染みがないと思います。米企業ではどんな役割なのでしょうか。
大山:メインの仕事はマーケティングではなく、設計です。常にエンドユーザーの声に耳を傾け、ニーズを吸い上げ、開発チームに渡す役割なので、ビジネスの知識が必要になりますし、エンジニアリングバックグラウンドのある人が就いているケースが多いですね。また、社内外とコミュニケーションを取りながら、開発の優先順位を整理しなくてはなりませんから、人の話を傾聴するスキルも必要です。何より常にデータを見て、どの開発者に何をフィードバックするかを判断しています。
高山:日本のスタートアップにはエンジニアしかいないケースがほとんどかもしれません。というのも、開発チームが比較的小さいからです。組織が大きくなってくると、開発チームの中でもグループごとに勝手なことをやり始める。プロダクトマネージャーのような全体を統制する役割が必要になるのは、ある程度プロダクトと会社が成長してからになるのだと思います。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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