IDC Japanは、国内ITインフラストラクチャサービス市場予測を発表した。
これによると2020年の同市場は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響を受けて、市場規模は1兆7,053億円、前年比で1.7%減となった。しかし2021年以降は売上が回復し、2025年の市場規模は1兆8,702億円、2020年~2025年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は1.9%になると同社では予測されている。
市場をアクティビティタイプ別に見ると、まず「設計/構築」セグメントは、2020年の市場規模は3,452億円、前年比成長率は4.2%の減。COVID-19の感染拡大による悪影響があった一方、リモートワーク対応やそれにともなうセキュリティやネットワークの強化など、ITインフラ見直しの需要が高まったという。2021年以降、市場は回復し、SI案件の再開、リモートワーク対応やITインフラの見直し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するITインフラ構築の需要に支えられ、堅調な成長を維持するとしている。2020年~2025年のCAGRは3.0%になると同社では予測しているという。
「運用/保守」セグメントでは、2020年の市場規模は1兆3,602億円、前年比成長率は1.0%の減。既存の契約への影響は少なかった上、リモートワーク対応のためのVDI(Virtual Desktop Infrastructure)やDesktop as a Service(DaaS)の利用、クラウド、リモート運用/保守の需要が高まり、COVID-19の影響は設計/構築より小さくなったとしている。2021年以降は回復し、VDIやDaaS、クラウドの導入拡大、ハイブリッド/マルチクラウド環境の包括的マネージドサービス、マネージドセキュリティサービスなどへの需要に支えられ、安定した成長を維持。2020年~2025年のCAGRは1.6%と予測されている。
アクティビティタイプ別をさらに「SoR(System of Record)」、「SoE(System of Engagement)/SoI(System of Insight)」、「システム基盤/共通機能」の3つのシステムタイプ別に分割すると、主にリモートワーク関連の需要に牽引され、全体的にシステム基盤/共通機能が最もCOVID-19の影響が小さく、2021年以降の成長率も高くなるという。一方SoRは、以前から続いているクラウドシフトやインフラ集約の影響が加速し、低い成長率で推移。SoE/SoIは、COVID-19感染拡大にともなう顧客の購買行動の変化を背景に、SoI領域を中心に投資が拡大するとされている。
産業分野別の動向を見ると、既に予算の決まっていた官公庁/自治体、COVID-19感染拡大がGIGAスクール構想への取り組みをむしろ加速させた教育を除き、2020年はいずれもマイナス成長。2021年以降は、リモートアクセスなどの需要継続に加え、ローカル5GなどDXを支援するITインフラ整備の需要が期待される製造、非対面販売や非接触販売の強化にともなうネットワーク見直しなどの需要が見込まれる流通、GIGAスクール構想への取り組み加速に加え市場としてのポテンシャルが大きい教育などが比較的高い成長率を示すという。
COVID-19の感染拡大は、ITインフラストラクチャサービス市場に悪影響だけでなく好影響も与えているとしている。以前から見られたITインフラ環境の複雑化もますます進み、これらがビジネスチャンス拡大に寄与すると考えられるという。同社 ITサービスのシニアマーケットアナリストである吉井誠一郎氏は、「ITサービスベンダーは、リモートワーク導入で生じた課題を起点にITインフラ全体の見直しを提案すると同時に、as-a-Service型サービスの強化も進めるべきである。また、SoE/SoIワークロードのITインフラサポートにも注力すべきである」と述べている。
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