デジタルトランスフォーメーション進展の阻害要因とフォーカスすべき要素
この調査では、「デジタルトランスフォーメーション」が重要であると回答した日本のビジネスリーダーの割合は50%に過ぎず、アジア全体の平均80%と比較して、非常に低いという結果が得られた。また、「デジタルトランスフォーメーション」進展の阻害要因として、次の5つが挙げられた。
- サイバーセキュリティ上の脅威
- 不確実な経済環境
- デジタルスキルを持った人的リソースの不足
- 政府とICTインフラのサポート不足
- エグゼクティブ層のリーダーシップ不足
クラウドコンピューティングを基盤とした、人工知能(AI)、IoT(Internet of the Things:モノのインターネット)、高度なデータ分析およびMixed Reality(MR:複合現実)などの最新テクノロジは、かつてないほどのペースでビジネスや生活の変化を起こしている。
過去の産業革命の教訓では、こうした変化へのすばやい対応や進化ができない組織は競争力が低く、時代遅れになることがわかっている。マイクロソフトは、あらゆる規模の組織におけるビジネス変革へのニーズに対して、最新のテクノロジを活用し「デジタルトランスフォーメーション」の推進を支援するとしている。
マイクロソフトでは、「デジタルトランスフォーメーション」のフォーカスすべき4つの要素として、(1) お客様とつながる、(2) 社員にパワーを、(3) 業務を最適化、(4) 製品を変革、を挙げている。
日本とアジアの比較で注目すべきポイント
アジア地域を対象とした今回の調査結果からは、アジア全体と比較して、日本においては、より緊急性を認識した上で変革を進めないと、デジタル時代における変革に遅れてしまう可能性がある、という結果となった。
日本とアジアを比較した調査結果から、以下の3点を注目すべき点として紹介する。
1. デジタルトランスフォーメーションの現状および準備状況
自社内におけるデジタルトランスフォーメーションの現状および準備状況でも、日本とアジア全体では、顕著な差が明確になった。「デジタルトランスフォーメーションの準備ができている」との回答は、アジア全体では27.4%だったが、日本では15.7%に過ぎない。また、現状においても、プロセス管理など、手続きや仕組み作りを重視する傾向が強く、実際の変革への着手がアジアの他国と比較して後回しになっている現状が浮き彫りになった。
2. デジタル技術の活用状況
自社組織におけるデジタル技術の活用について、以下の4つのトピックを提示し、どれに同意するか質問したところ、アジア全体の平均値79.5%と比較し、日本の平均値は52%にとどまった。全体の傾向としてアジア全体と比較して非常に低い結果となり、日本企業ではまだデジタルトランスフォーメーションの端緒についたばかりと推測される。
3. 「デジタルトランスフォーメーション」を進めるリーダーシップの状況
アジア全体では、確信を持って「デジタルトランスフォーメーション」を推進するリーダーは55%であるのに対して、日本では約30%という調査結果になった。アジア全体と比較した場合、デジタルトランスフォーメーションを推進する日本のビジネスリーダーの割合は6割弱に過ぎない。ビジネス変革の進展と得られる成果に対して、日本企業では保守的な考え方や見方が多いように推測される。
日本企業がデジタルトランスフォーメーションを成功させる鍵
マイクロソフトは、今回の調査結果を受け、日本企業がデジタルトランスフォーメーションを成功させる鍵として、以下の3点が重要だとしている。
・緊急性のあるデジタルトランスフォーメーションの推進
アジア他国との競争力の観点から、ビジネスリーダーが、デジタル技術の活用による具体的な成果を想定しながら、確信を持って、速やかにデジタルトランスフォーメーションを推進することが重要。
・組織のデジタル化
テクノロジを導入するだけでなく、それを使いこなすデジタルスキルを備えた人材の育成と、テクノロジを活用した目的[(1)お客様とつながる、(2)社員にパワーを、(3)業務を最適化、(4)製品を変革]の明確化が必要。
・信頼できるパートナーの確保
従来のように、製品やテクノロジを導入するだけでは、ビジネス変革につなげることは困難。目指すべきゴールの設定、課題の洗い出しなど、変革に向け必要となるステップを支援する信頼できるパートナーを確保すべき。
今回の調査は、全体的に日本企業がアジア全体と異なる傾向を示す結果となったが、日本は元来テクノロジやガジェットなどへの親和性が高い市場であり、ここで紹介した内容を念頭に、緊急性を持って取り組むことで、日本が再度リーダーシップを発揮できる素地はあると日本マイクロソフトは考えている。