第3回は、新規事業開発では、もっとも重要な視点である「収益性」に焦点を当てたいと思います。経営分析は、収益性、安全性、生産性、成長性の4つの切り口がありますが、収益性分析は、その中心です。前回の記事で、「3つの決算書の関係を理解できないと、計数計画は立てられない」ことを説明しました。収益性分析を計画に活用する場合に、3つの決算書の関係をイメージできないと、不十分な計画になってしまうことを、わかっていただきたいと思います。また収益性分析の考え方は、戦略を考える上で、非常に重要な計数感覚を提供してくれることも、理解いただきたいと思います。さあ、はじめましょう。
「経営分析」と「財務分析」の違い
まず、次の問題を考えてみてください。
3つの事業計画(図1)があります。計数だけで判断するとして、あなたならどの事業を選びますか。その理由は何ですか。少し考えてみてください。そしてはじめに考えた内容を、覚えておいてください。後ほど説明します。

さて、経営分析はどのように行なうかご存知ですか。経営分析は、いろいろな分野、体系がありますが、次のように整理するとわかりやすいでしょう。
一つは、計数分析(定量分析)という分野です。特に決算書を分析する財務諸表分析の手法が有名です。財務分析と略して言うことが一般的です。収益性、安全性、生産性、成長性などの切り口があります。経営分析というと、この財務分析を指す場合が一般的です。
もう一つは、非計数分析(定性分析)です。内部環境と外部環境に分けて考えます。内部環境は、経営理念、経営者のキャリア、従業員の意識やモラル、技術力・情報力などを分析して、企業の強み(Strength)、弱み(Weakness)を判断します。外部環境は、顧客、競合他社との競争状況、業界状況、マクロ経済、法的規制などを把握し、企業がおかれた機会(Opportunity)や脅威(Threat)を把握します。強み、弱み、機会、脅威の英語の頭文字を使って、SWOT分析と呼ばれているのはご存知の方も多いでしょう。(注)広く解釈すれば、内部環境分析には、財務分析を含みます。
連載では、計数感覚を磨いて経営を考えていく方法を紹介したいので、財務分析の体系を理解することで、新規事業開発とどうつなげるのかに重点を置いて考察していきます。
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千賀 秀信(センガ ヒデノブ)
公認会計士、税理士専門の情報処理サービス業・株式会社TKC(東証1部)で、財務会計、経営管理などのシステム開発、営業、広報、教育などを担当。18年間勤務後、1997年にマネジメント能力開発研究所を設立し、企業経営と計数を結びつけた独自のマネジメント能力開発プログラムを構築。「わかりやすさと具体性」という点で、多くの企業担当者や受講生からよい評価を受けている。研修、コンサルティング、執筆などで活躍中。日本能率協...
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