
第1回の「いま企業で多いハイブリッドクラウドの利用パターンは?」では、ハイブリッドクラウドの利用ニーズや利用パターンについて、第2回の「イブリッドクラウドを構成するレイヤ別の連携方法とは?」では、ネットワーク、クラウド管理ポータル、ミドルウェアなどレイヤごとの連携方法について解説した。今回は、IT部門の立場から、ハイブリッドクラウドを構築運用するにあたってのポイントを解説する。
IT部門が抱くクラウドへの期待
企業におけるITの意思決定者層が、攻めの経営において、クラウドを活用する動きが進んでいる。米調査会社のフォレスターコンサルティングが2014年11月に実施したIT利用調査によると、IT部門およびビジネス部門の意思決定者300人に対し81%がミッションクリティカルなアプリケーションをクラウドに移行済み、もしくは2年以内にクラウドへ移行すると回答している。
Oxford EconomicsとSAPが、2015年2月に発表したThe cloud grows up 2015では、IT部門の意思決定者200名に対して、現在と今後3年間でのクラウドへの期待についての調査を行っている。
調査によると、自社のトップラインの成長のためにクラウドを活用するのは現在の43%から3年後には58%、アジリティと顧客レスポンスの向上のためには現在の40%から3年後には57%といったように、今後、より”攻めの姿勢”でのクラウドを活用する動きが顕著となっている。

今後、ミッションクリティカルで幅広い目的でのクラウドの採用により、パブリッククラウド、ホステッドプライベートクラウドなど、複数のクラウドを適材適所での使い分けが進むとみられる。
"クラウドネイティブ"を前提とした、情報システム設計と構築が進む
システム更改時にクラウドを優先的に検討する「クラウドファースト」の流れが加速しているものの、前提として、クラウドに移行できるシステムとクラウドに移行できないシステムの仕分けが必要となる。
たとえば、ユーザ数が少ない特定の業務系システムや、工場システムと一体となった生産系システムなどは、クラウドへの移行は困難な場合が多く、オンプレミスシステムの残すケースも多い。
また、仮想サーバー環境では、オンプレミスで動作していた業務アプリケーションがパフォーマンスの問題などで動作しないケースや、オンプレミスのライセンスをクラウドへ移行できないといったライセンスの問題もある。パフォーマンスやライセンスの問題に対応するため、仮想サーバー環境ではなく、コロケーションやホステッドプライベートなどによる個別に物理サーバーによるシステム環境を構築するといったケースもある。
クラウド上で、業務アプリケーションが適正に動作するかを事前に確認できるよう、業務アプリケーションをオンプレミスからクラウドへマイグレーションする際の、事業者による実装までを含むベストプラクティスを展開・共有化する動きもある。
クラウドへの移行が進むことで、オンプレミスシステムの業務アプリケーションをクラウドへも移行できる状態でライセンスを提供するBYOL(Bring Your Own License)の流れも進んでいる。今後、BYOLやクラウドでの利用を前提とした業務アプリケーションの増加により、クラウド上で業務アプリケーションを動かすクラウドネイティブを前提とした情報システム設計と構築が進むとみられる。
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林 雅之(ハヤシ マサユキ)
国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュケーションズ株式会社勤務)1995年NTT(日本電信電話株式会社)入社。地方で中小企業の営業ののち、マレーシアにて営業および国際イベントの企画・運営を担当。NTT再編後のNTTコミュニケーションズでは、事業計画、外資系企業や公共機関の営業、市場開発などの業...
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