SASは、パートナーであるKPMGとともに、マネーロンダリング対策(AML)におけるAI技術の活用が、法令順守と金融犯罪対策に取り組む金融機関にとって必要不可欠であることを明らかにする調査結果を発表した。
- AIおよび機械学習(ML)の導入は依然限定的:調査によると、実際にAI/MLソリューションを運用していると回答したのはわずか18%。そのほか18%はAI/MLソリューションを試用中で、25%は今後1年〜1年半以内にAI/MLを導入予定、40%は現状AI/MLの導入予定はないと回答したという
- 生成AI技術への関心は堅調を保ちつつも、その採用には慎重な構え:調査対象者の約半数が、現在、生成AIを試用中(10%)または調査段階にある(35%)と回答。新興技術としては高い関心度が見られる一方で、55%が生成AIの導入は現在のところ検討していないという
完全導入して初めてもたらされるAIとMLの価値
- 組織はAI/MLのさらなる使用用途を模索:2021年に実施した最初の調査では、回答者の78%がAI/MLの導入の主な理由として挙げたのは、「調査および規制の成果の質の改善」(40%)または「誤検知の削減」(38%)だったとしている。本年の調査では、回答はより多様化。上述の上位2つの回答は前回同様最も高かったものの、合計は11%減少し、67%にとどまったという。一方、複雑なリスクの検出は17%から21%に増加し、「それ以外」という回答は5%から13%に急増したとのことだ
- AI/MLの導入を阻む理由も多様化:2021年、AI導入の最大の障壁として、予算の制約(39%)が挙げられたという。今回の調査では34%に減少し、微増した「規制上の必要性がない」(37%)がそれを上回る結果に。「スキル不足」という懸念は薄れつつあり、前回から約半減の11%。一方で、「その他」という回答は5%から19%に急増し、企業の課題が多様化していることが示されたとしている
- 誤検知の削減が優先度として上昇:AI/MLの展開に関して優先すべき事項について、AML担当者の38%が、「既存の監視システムで発生する誤検知の削減」を挙げており、2021年より8%増加したという。「調査およびデューデリジェンスのためのデータ拡充の自動化」(25%)と、「高度なモデリング技術による新規リスクの検知」(23%)も、依然として重要視されているものの、前回調査より数ポイント減少。残りの13%は、「行動解析に向けた顧客セグメンテーション」と回答したとのことだ
- MLの影響は大きいが、NLPの重要性も見落とすべきではない:最も影響のある技術としてランクインした上位3つに注目してみると、「ML」が依然として強く、2021年から6%向上し、58%で最多。「ロボティックプロセスオートメーション(ソフトウェアロボットによる業務自動化)」はそれに対して28%に低下して2位となり、「自然言語処理(NLP)」は14%と3位に。大量データのパターンを特定できるMLの能力は、大きな影響をもたらすという。一方で、NLPへの関心の薄さは、不十分な機能によりコンプライアンスチームが早期警告の予兆を見逃す危険性があることを示唆しているとも言えると同社は述べている
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