アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWSジャパン)は2月25日、金融戦略記者説明会を開催。みずほ銀行 副CIO 執行役員 山本健文氏も登壇し、同社基幹システム「MINORI」の一部機能をAWSに移行中であることを明かした。
AWSジャパンは、2021年からの「Vison 2025」で「金融ビジネスを変革する戦略パートナー」を掲げ、次の4点に取り組んできたという。それぞれについて、各金融機関の取り組みが紹介された。
- 既存の枠組みを超えたビジネスモデルへの挑戦:BaaSを20社超の多業種パートナーへ展開(住信SBIネット銀行)など
- 新生活様式を織り込んだ顧客との関係構築:スマホアプリ「はまぎん365」でパーソナライズ(横浜銀行)など
- 予測できない未来に耐え得る回復力の獲得:勘定系システムを2024年に稼働(福島銀行)、2027年稼働へ向け勘定系システムを移行(静岡銀行)など
- 変革を実現する組織と人材の育成:Amazon と連携したサービス開発に着手(山梨中央銀行)など
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同社 常務執行役員 金融事業統括本部 統括本部長 鶴田規久氏は「この4年間の取り組みの中で、お客様や規制監督庁の皆様から、社会基盤としての責任を持って取り組んでほしいという言葉を頂戴した。(2030年に向けた)新たな『Vison 2030』では、日本の社会・経済に安定した基盤を提供していくという方針を打ち出す」と話した。
具体的には次の4点となる。
- 戦略領域への投資拡大:生成AIなどの開発ツールの活用により、IT資産のモダナイゼーションを加速など
- 新規ビジネスの迅速な立ち上げ:生成AIをはじめとする、240を超えるAWSのサービスで開発スピードを向上など
- イノベーション人財の育成:組織の成熟度に対応した、実践的なデジタルスキル獲得の支援など
- レジリエンシーの更なる強化:AWSのインフラストラクチャとサポートによる、レジリエンシーの向上など
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ここからは、みずほ銀行 副CIO 執行役員 山本氏が登壇し、同社のこれまでの取り組みを紹介した。山本氏は冒頭「3行を統合して以降、これまで3度にわたる大規模なシステム障害を起こしてしまった。安定稼働に向けて取り組みを進めているところ」と強調する。AWSとの関わりでは、2018年から検討を開始し、2019年からは本格導入に着手。2020年以降は、AWS利用システムを拡大し、市場系、国際系、チャネル系、情報系などで既に200以上のシステムが稼働しているという。「昨年からは、ビジネス・業務DXに対しても取り組みを始めている」と山本氏。AWS資格保有者も約4,000人のIT部門のうち、1,300人(2024年7月時点)に上るとした。
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兼 株式会社みずほ銀行 執行役員 副CIO 山本健文氏
同社では約8年かけて開発した基幹システム「MINORI」が稼働している。山本氏は「2025年の崖はいち早く脱している状況」と示す。MINORIの特長は、疎結合で、オープン基盤とメインフレームによるハイブリッド基盤で新規構築したシステムであること。パブリッククラウドの利活用にあたり当初はセキュリティ観点での不安はあったとしつつも、CCoEを立ち上げたり、利用するサービスを一つひとつ内部認定したりするなどして、これまで運用してきたと説明する。今後は国内リージョンの拡大や、他ハイパースケーラーの利用も含めた目的に応じた使い分けを図っていく方針とした。
MINORIの一部の機能・開発環境について、AWSに移行している真っ最中という。具体的にはオープン系の計表、日計、データマート、およびそれらの開発環境が対象で、今後もオープン系を中心にAWSに移していく計画だ。AWSを選定した理由として山本氏は「まずは長年のパートナーシップがある。次に、レジリエンシーのさらなる向上をしていく計画があること。そして、メンタルモデルの転換だ。従来のメインフレームでは、システム障害をゼロにするチャレンジをしてきたが、ハイブリッド環境ではどうしても障害が起きるもの。そうした点がAWSと一致した。もう一つが外部リソースの活用」と説明した。
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実際のパブリッククラウド活用は下図のとおり。グラフからも分かるように、増加ペースは加速傾向にある。
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最後に山本氏は、AWSジャパンへの期待として次のようにコメントした。
「我々は中期経営計画で『10年後の目指す世界』を定めて、今はバックキャストして進めているところだが、革新的なテクノロジーが浸透していくには社会基盤としてレジリエンシーがなければいけない。我々が目指している姿と(AWSジャパンの戦略は)一致している。経営基盤を強化していくなかで、ビジネスのアジリティ向上やIT領域の専門人材の確保が必要だ。『Vision 2030』の項目と合致しており、今後よりAWSのプラットフォームを使って、AIをうまく活用して、ともに挑んでいきたい」(山本氏)
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