AI時代は「財務部門が経営の“参謀役”になる絶好のチャンス」ベイン·アンド·カンパニー鈴木氏から提言
“数字屋”の時代は終わった……次世代の財務リーダーに求められる素養とは何か?
企業の意思決定を支える要として、財務部門の役割が劇的に変化している。「正確な記帳」を務めとする管理者から、経営戦略と一体になり事業の成長を牽引する「攻めの財務」への転換が求められているのである。また、AIの進化が実務のあり方を根底から変えようとしている。そんな時代に、CFO(最高財務責任者)をはじめとする財務リーダーはいかなる素養とマインドセットを身に付けるべきか。数多くの企業変革を支援してきたベイン·アンド·カンパニーの鈴木祐太氏に、財務組織の進化と、AIの活用がもたらす“人・現場回帰”の本質について聞いた。
CFOは「経理・財務部長の上がりポスト」ではない
「CFOは本来、『CEOが倒れたときに代わりを務められる人』だと私は考えています。将来を見据えてイノベーションを起こし、不振事業の撤退判断を下してリソースを再配分できる、M&Aも決断できる。言うなれば、財務の専門家というよりも『ファイナンスの視点を持った経営者』です」──ベイン·アンド·カンパニーの鈴木祐太氏はこう断言する。
鈴木氏は2007年の入社以来、プライベートエクイティなど企業価値評価の現場を経て、近年はエレクトロニクス分野の製造業を中心に日本企業の変革を支援している。その経験から見えてくるのは、理想と現実の狭間で苦しむ財務部門の姿だ。
欧米型のCFOは、昔から経営企画と財務が一体化したような役割を担うのが当たり前だった。しかし、多くの日本企業では、依然としてCFOが「経理部長・財務部長の上がりポスト」として扱われている実情があると鈴木氏。「自分は財務の専門家だ」「出納の専門家だ」と線引きしてしまい、事業戦略やポートフォリオマネジメントにまで踏み込めていないようだ。実際、これを変革したいという経営者からの相談が増えているという。
かつてのように、正確な決算書を作り、銀行と融資の折衝をしていれば安泰だった時代は終わった。「財務部門を、旧来の管理業務から戦略的なファイナンス機能へシフトさせたい」「企業価値の向上に貢献したい」、そんな切実な声が同氏の下には寄せられている。
日本企業でも、FP&A(Financial Planning & Analysis:財務計画・分析)の導入を進める企業が増えつつあるなど変化の兆しはあるが、「今は形だけでなく実質的な機能をいかに整えるかの過渡期にある」と鈴木氏は指摘する。
“数字屋”から“参謀”へ、トップダウンの号令も必要
事業環境の急激な変化に対応し、企業価値の向上にも貢献するために、財務部門には“守り”から“攻め”へと軸足を移すことが求められている。そこで鈴木氏が提唱するのは、現場とともに汗をかく「ファイナンスビジネスパートナー」への転身だ。
「依然として、『私は財務の専門家だから……』と自らの役割を狭めてしまう方が少なくありません。しかし本来あるべき姿は、ビジネスの現場に寄り添い、事業部門のリーダーたちと同じ目線で悩み、ファイナンスの側面から解を示す“参謀”のような存在です」(鈴木氏)
その素養はどう身に付ければよいのか。同氏は、キャリアパスにおけるローテーションの工夫を薦める。財務畑だけで育ってきた人材は、どうしても視野が会計上の数字に偏りがちとなるからだ。
たとえば、財務の人材を事業部門に配属し、ビジネスの現場で経験を積ませる。逆に、事業部で実績を上げた人材は財務部門へ配置し、数字を通じた経営管理を学ぶ──こうした人材と知見の環流を図ることで、組織の体質を変えていくのだという。
実際、変革に成功している日本企業では、事業部門のエースだった人物を財務に抜擢したり、海外現地法人の財務責任者として送り込んだりする動きが見られる。海外拠点ではリソースが限られるため、財務担当者は“ミニCFO”として経営判断の一翼を担わざるをえない。この経験がリーダーシップを育む最良の土壌となる。
ただし、このような変革は決してボトムアップでは成しえないと鈴木氏は強調する。
「トップダウンで強制的に役割を変えるしかありません。『あなたたちは今日から数字屋ではなく、ファイナンスビジネスパートナーとして事業部に伴走してほしい』と号令をかけるのです。初めのうちは上手くいかず、現場の反発を受けるかもしれませんが、それでも歯を食いしばって役割を全うすることで、財務部門の意識と行動が変わっていくはずです」(鈴木氏)
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本記事は、EnterpriseZineが定期で発刊している特集号『EnterpriseZine PRESS 電子版 2026 Winter』の収録記事となります。本記事の他にも、AI時代を生きる財務リーダーおよび財務部門の方のための特別インタビュー記事を2本収録しております(全3本)。
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名須川 竜太(ナスカワ リュウタ)
編集者・ライター
編集プロダクションを経て、1997年にIDGジャパン入社。Java開発専門誌「月刊JavaWorld」の編集長を務めた後、2005年に「ITアーキテクト」を創刊。システム開発の上流工程やアーキテクチャ設計を担う技術者への情報提供に努める。2009年に「CIO Magazine」編集長に就...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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