NTT西日本のデータ基盤刷新、数十億円のコスト削減と東西共同利用化 3大クラウド資格全冠どう生かした
専門性を武器に数十億円規模のコスト削減を実現、構築の苦闘と効果創出
前回、ジョブローテーションから“専門特化”の道を選んだ背景を語った。本稿では、その専門性を武器にして、いかに数十億円規模のコスト削減を実現したのかを詳述する。NTT西日本では、データ活用基盤の段階的な構築・刷新により、利便性・コスト・セキュリティを兼ね備えた、国内で前例のないアーキテクチャを実現した。さらに、「東西共同利用化」という巨大組織特有の壁を突破するまでの道のりを明かす。
「データドリブン経営」への挑戦 立ちはだかる3つの壁
前回、私がジョブローテーションから、専門特化の道を選んだ理由をお伝えしました。第2回では、その磨いた専門性が実際にどのような成果を生んだのか。数十億円規模のコスト削減と、東西共同利用化という巨大組織特有の壁の突破について詳述します。
NTT西日本がデータドリブン経営を本格的に推進しはじめたのは、2020年代初頭のことです。最初の課題は、データが各部門・各システムにサイロ化していたことでした。顧客データやネットワークデータ、財務データ、人事データなど、これらが別々のシステムに格納されており、連携が困難でした。
2021年8月、筆者がデジタル改革推進部に配属されたとき、既に初期のデータ活用基盤は稼働していましたが、いくつかの課題を抱えていました。
第一に、コストの問題です。オンプレミスを中心とした構成で、イニシャルコストもランニングコストも高額でした。第二に、利便性の問題です。データ分析を行いたい事業部門の担当者が、自由にデータにアクセスして分析ツールを使うためには、複雑な申請プロセスと技術的なハードルがありました。第三に、拡張性の問題です。データ量の増加、分析ニーズの多様化に対して、柔軟にスケールできる構成になっていませんでした。
これらの課題を解決するため、私たちは次期データ活用基盤へのアーキテクチャ刷新プロジェクトを立ち上げました。
次期データ活用基盤:大幅なコスト削減を実現したアーキテクチャ
次期データ活用基盤の設計において、私たちが掲げた3つの目標は以下の通りです。
- 利便性の向上:誰でも簡単にデータアクセス・分析ができる
- コスト優位性の実現:イニシャル・ランニングコストの大幅削減
- セキュリティの強化:クラウド活用による外部攻撃・内部犯行リスクの低減
これら3つを高次元で両立させることで、結果的に「国内に前例のないアーキテクチャ」を実現しました。
利便性:200種以上の複数プロダクトから最適な組み合わせを選定
クラウドサービスには、膨大な数のプロダクトがあります。私たちは、データレイクにAmazon S3、データウェアハウスにはSnowflake、機械学習基盤にはDataRobot、可視化にはTableauとPower BI、認証にはMicrosoft Entra IDなど、各領域で最適なサービスを選定して組み合わせています。
単一ベンダーに依存しないマルチクラウド戦略により、ベンダーロックインの回避、各サービスのベスト・オブ・ブリードを実現し、リスク分散のメリットを得られました。このとき活きたのが、第1回でお伝えした“3大クラウド”資格全冠の知見です。Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloudそれぞれの強みと弱みを深く理解していたからこそ、200種以上のサービスの中から最適な組み合わせを導き出すことができました。「専門性を磨き続ける」という選択が、まさにここで実を結んだのです。
コスト優位性:“開発レス”によるベンダーロックイン回避
次期基盤では、「開発レス」を徹底しました。クラウドサービスのマネージドサービスを最大限活用することで、カスタム開発を最小限に抑えています。たとえば、データパイプラインの構築には、AWS Glueといったマネージドサービスを活用しました。
また、Infrastructure as Code(IaC)の考え方を導入しています。AWS CloudFormationを用いてインフラ構成をコード化し、構築の再現性を高めました。さらに、クラウドの従量課金モデルを活用することで、必要なときに必要なだけリソースを使用する形に変更しました。
この結果、イニシャルコストとランニングコストの両面で、数十億円規模のコスト削減を実現しています。
セキュリティ:クラウドへの閉域接続による外部攻撃・内部犯行回避
次期データ活用基盤においても、継続してクラウドへの閉域接続を実現しました。具体的には、AWS Direct Connectを活用することでインターネットを経由せず、NTT西日本の社内ネットワークとクラウド環境を接続しました。
これにより、外部からの攻撃リスクを大幅に低減しています。また、データのアクセスログを詳細に記録し、異常なアクセスを検知する仕組みを構築したことで、内部犯行のリスクも低減しています。さらにデータの暗号化を徹底し、保存時・転送時でも暗号化された状態を維持できるようにしました。
「データ活用基盤」の活用を高度化
次期データ活用基盤の構築と並行して、同基盤の活用についても高度化を推進。このとき、2つのアプローチをとりました。
1つ目のアプローチは、事業部門が自分でデータ活用できるようにするための「自走支援」です。持株会社のグループ共通ITシステムとの連携を強化し、各事業部門が必要なデータに直接アクセスできるようにしました。また、セルフサービスBIツールの導入を進め、事業部門の担当者が自らダッシュボードを作成できるようにしています。これらの取り組みにより、IT部門への依頼件数が減少し、大幅な工数削減を実現しました。
2つ目のアプローチは、高度なデータ活用案件に対して、私たちが直接、伴走支援をすることです。たとえば、調達部門のコスト削減案件では、過去の調達データを分析し、価格交渉の最適なタイミングや発注量の最適化を支援しました。
こうした自走支援と直接的な伴走支援を組み合わせた「基盤活用効果」は、それぞれで数億円規模の付加価値創出効果やコスト削減効果を生み出しています。次期データ活用基盤のアーキテクチャ刷新による基盤効果とあわせると、トータルで数十億円規模のコスト削減です。基盤を整えるだけでなく、それを実際に使いこなす仕組みを作ることではじめて、大きな効果が生まれるという実感を得ることができた取り組みでもありました。
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高須賀 将秀(タカスカ マサヒデ)
博士(情報学)。2012年に修士号を取得した後、NTT西日本株式会社に就職。プライベートクラウド基盤やアプリケーション開発を経験した後、様々な技術(NW、サーバ、クラウド、プログラミング)を組合せることで、データ活用を推進するためのプラットフォームを運営。2019年から社会人ドクターとして研究活動を...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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