データセクションは2026年8月6日、次世代AIプラットフォーム「TAIZA(タイザ)」の戦略発表会を開催した。
同社はこれまで、インフラ領域であるGPUの提供事業を展開してきたが、新たにトークンを包括的に提供する「TOKENaaS(Token as a Service)」への移行を明示。従来のインフラ提供にとどまらず、ユーザーインターフェースや実行環境までを取り扱うことで、日本のDX推進とインテリジェンスの民主化を目指す方針が示された。
会見冒頭、同社 代表取締役社長執行役員CEOの石原紀彦氏は、国内におけるデジタル赤字の増大や、データセンターなどハードウェアリソースへの投資不足がもたらす課題に言及。同氏によれば、国内のデータセンター環境は建物や電力などのフィジカルな要素が整っているものの、内部の計算リソースの多くは外資系ハイパースケーラーに依存しており、国内企業が自前でクラウドや高度なLLMを構築・運用できる環境が不十分だったという。
「結果として、AIモデルの構築やアプリケーション開発の領域で海外依存が深まり、デジタル赤字が拡大しつづけている」と同氏。データセクションはこの課題に対し、GPUクラスタの整備や独自クラウド基盤の構築を進めてきた。TAIZAにより、単なるハードウェアの提供にとどまらず、AIモデルやアプリケーションをつなぐプラットフォーム層を確立し、ユーザーが用途に応じて最適なAIモデルを選択・運用できる環境を整える。これにより、GPUの稼働率向上とコスト効率化を実現し、日本のAI経済全体の成長を支える考えだ。
TAIZAは、OpenAIのGPTシリーズをはじめとする商用モデルやオープンソースのLLMを柔軟に統合し、特定のタスクに対して最も費用対効果の高いモデルを自動的にルーティングして処理を実行する構造をもつ。従来のAI活用が単一のプロンプトによる一問一答型や、複数モデルを組み合わせたマルチモーダルなワークフローにとどまっていたのに対し、TAIZAは実行能力をともなう統合的なインテリジェンス基盤とのことだ。
会見後半には、石原氏とOpenAI Japan Technical Success Lead 水越将巳氏による対談が行われた。5つのトークテーマが設けられ、両者の見解が語られた。
テーマ①:日本企業におけるAI活用の現在地と真の実装
水越将巳氏(OpenAI Japan):日本企業におけるAI活用に関しては、大きくステージが変わってきていると感じます。従来は、たとえばチームの生産性向上などにフォーカスが当たっていましたが、今はまさにインテリジェンス──AIの知能が業務の中に組み込まれて、実際に成果を出すというステージに変わってきているのではないでしょうか。
特に、導入フェーズにおいても、従来の実験的なPoCから本番実装、そのうえでビジネス成果を出す段階に移ってきていると考えています。たとえば国内大手IT企業では、インシデント管理の業務に実際にAIを組み込み、従来3日かかっていた作業がわずか30分で終わるようになったケースもあります。
そのほか、とある金融機関でも、リサーチ業務の中にAIを組み込むことによって、業務負担を2〜3割ほど削減した事例もあります。実際に、業務の中にインテリジェンスを組み込み、大きな成果を出されている企業が多く出始めていると私は見ています。
石原紀彦氏(データセクション):我々も昨年以降、本当に日本企業のお客様が増えてきたと感じています。今までは、ハイパースケーラーやAIモデル開発を行っている企業とのお付き合いが多かったのですが、最近は製造業やサービス業などとの引き合いも増えてきました。
欧米と比べると、日本企業のAI活用のスタートは少し遅れていたかと思いますが、最近は追いついてきたと感じています。これからAIが本当に日々の業務に組み込まれるか次第で、今後の日本企業自体の経済成長が他国に追いつけるのか、もしくは先行できるかが決まってくるのではないでしょうか。
テーマ②:ガバナンスと安全策
水越氏:ガバナンスや安全性は、AIをビジネスの中でスケールさせていくためには非常に重要なポイントです。特に、ガバナンスの観点においては、信頼性をしっかりと担保しつつ、できるだけスピーディーにAIを導入していく仕組みが必要だと考えています。たとえば、AIにもたせる権限の管理、AIをモニタリングしていくような仕組みも重要だと考えています。安全性という観点においても、単一の仕組みだけではなく、複数の仕組みで担保していくことが大事かなと考えています。
石原氏:最近は、ソブリンAIやデータセキュリティなど、データレジデンシーの問題も非常に取り上げられます。これはおそらく経済安全保障などの観点から寄せられている懸念かと思いますが、水越さんから見てもこういった需要は増えていると感じられますか。
水越氏:当社も約2年間、東京にオフィスを開設してからたくさんのお客様にお会いしましたが、大きな1つのニーズとして、データを国内で保持したいという要望は多くいただいていますね。
テーマ③:OpenAI×TAIZA(最先端LLMによるUXの最大化)
水越氏:当社では、OpenAI APIを通して我々の最先端モデルにアクセスしたり、ツールを呼び出したり、エージェントを構築したりできる包括的なプラットフォームを提供しています。これにより、業務のコンテキストを理解したAIエージェントを構築できるようになります。まさに、お客様固有のAI体験を提供できるのではないかと考えています。
また、API利用に関しては「トークン消費」という話題がいつも上がりますが、当社は個々のトークン使用量だけではなく、タスクを完了するまでのトークン使用量を効率化・最適化しているので、TAIZAにとってもより実用性のある高度なAI体験を提供できると考えています。
石原氏:TAIZAは、自然言語で話しかけたら業務を個別のタスクに分解してくれて、タスクごとに適切なモデルをピックアップし、管理すべき情報を置く場所の判断などを自動的に行うツールです。
たとえば、記者が取材内容を記事にする際、取材に行く企業周辺の市場動向や競合企業を調べて、取材先の企業のソリューション群を分析してから、記事に起こす。そして、その内容に法的な問題がないかチェックするかと思います。
上記のようなタスクは個別のプロセスに分かれていますが、すべてに最先端のAIモデルを使うと、トークンの消費量が爆発的に上がってしまい効率的ではない。なので、TAIZAは「このプロセスにはこのモデル」といったルーティングをすることによって、日々の業務の中にOpenAIのモデルのような最先端AIを組み込めることが魅力なのです。
テーマ④:次世代UI「音声AI」がもたらす業務改革
水越氏:音声AIは、私たちのAIの利用体験を大きく変えるテクノロジーの1つだと思っています。たとえば、手が塞がっている状態や、即時性が要求されるような状況で、この音声のAI機能は活用できますよね。代表例は接客業や現場作業などが挙げられます。接客業なら、受付や注文、商品の案内など、現場作業なら確認や点検、記録作業で音声AIの利用がますます進んでいくと思います。画面操作がいらない新たなAI利用体験になるのではと考えています。
石原氏:日本は、フィジカルAIで世界をリードしていくべきだと思っているんですよね。元々、日本は製造業が非常に強い。フィジカル領域も緻密さや確実性、安全性といった部分で強みになると思います。そこに音声インターフェースや画像のアナリティクス解析など、さまざまなインターフェースをもつことがフィジカルAIの強みになるのではと思います。水越さんは、その辺りについてどうお考えですか。
水越氏:まさに日本ならではと言いますか、製造業における緻密さ・高い品質基準などが、活きてくるところではないかと考えております。
石原氏:医療の領域なども、手術中もAIが過去の症例から適切なアドバイスをするといったものは、音声や映像のマルチタスクモデルを組み合わせることによって、より使いやすくなっていくと思います。
テーマ⑤:日本から世界へ、AIエージェントのグローバル展開
水越氏:やはり、日本のAI活用においてグローバルと戦える武器となるのは、高い品質基準だと思います。安全性やガバナンスを考慮しながら、しっかりと現場で検証を重ねて、着実にAIを導入していく。こうした慎重さこそが、私たちの強みになるのではないでしょうか。
安心安全なAI活用によって信頼性の高い業務変革ができると思いますし、責任あるAIの社会実装を繰り返すことによって、AIの安心安全な活用モデルを世界に示していけるはずです。
石原氏:たとえば、製造業における工程管理や品質管理の方法などをAIエージェントとして海外に輸出していくこともできるわけです。なので、今AIエージェントの開発に取り組まれている会社は増えてきていると思います。
それでいうと、実はTAIZAの中でもAIエージェントを組成ができます。たとえば、TAIZA上で行っている仕事を読み込ませる、もしくは我々が過去やってる仕事を読み込ませることで、個々の従業員に応じたAIエージェントが作れます。
この辺りが進んできて、日本固有のビジネスの良さをプロダクトに反映できるようになってくると、高品質な“日本クオリティ”のプロダクトができると考えています。
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