日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(以下、日本TCS)は2026年8月5日、事業戦略説明会を開催した。同社は、従来の労働集約型モデルから脱却し、AIエージェントを活用して事業を拡張する「Scale by Intelligence」を掲げる。日本企業が直面するDXの停滞やPoCの壁を打破するため、ベンダーへの丸投げ構造を見直すIT主権の確立と、人間とAIが協働する「ヒューマン+AI」モデルの適用を提示した。さらに、インドなどの高度人材と連携して内製化を推進する「GCC(グローバル・ケイパビリティ・センター)」の構築支援を推進し、AI主導型テクノロジーサービス企業を目指す方針を明らかにした。
(左から)日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社
代表取締役社長 サティシュ・ティアガラジャン氏、同社 最高執行責任者 兼 グローバルコンサルティングプラクティス統括本部長 森誠一郎氏、同社 保険事業統括本部 ディレクター 兼 副事業統括本部長 大場雄介氏、同社 バイスプレジデントGCC ヘッド マノジ・バルギース氏
会見の冒頭、日本TCS 代表取締役社長のサティシュ・ティアガラジャン氏は、2024年の事業戦略発表会で掲げた「3×3(スリー・バイ・スリー)戦略」の進捗に触れ、2024年度に売上高1000億円を突破した実績を報告。
同氏は、生成AIの急速な成熟にともない市場環境が激変していると指摘する。企業が人材不足と技術的負債への対応を迫られるなか、コスト削減を図りつつ社内ケイパビリティを構築する必要性を強調した。日本TCSはこの需要に応えるため、社内で2,700名以上のAI-Readyな人材を育成し、顧客とともにソリューションを創出する「TCS AI Studio」や専任組織を拡充しているという。同氏は「AIの未来は自律的なオペレーションと人間の介入という形で実現する」と述べ、共創型デリバリーモデルを通じて顧客の成功を後押しする姿勢を示した。
続いて登壇した最高執行責任者(COO)の森誠一郎氏は、AIが業界のゲームチェンジャーとなり、従来の「人数の多さ=成長の源泉」という差別化要因が変化したと述べる。タタ・グループ会長のナタラジャン・チャンドラセカラン氏の言葉を引いて「50万人の社員に加え、50万個のAIエージェントがともに働く時代が来る」と語り、AIのインテリジェンスで拡大を図る意向を示した。
また、日本企業でAI活用がPoC止まりになる本質的な原因として、1990年代後半以降の「ITはノンコア」という認識に基づくIT子会社や外部ベンダーへの構造的な丸投げを挙げる。森氏は「ソブリンAIの議論の前に、自社の業務、システム、データの決定権を取り戻す『IT主権』が必要」と話す。既存の多重下請け構造から脱却し、アジャイルな共創モデルへ移行することが不可欠だと訴えた。
さらに、顧客の内製化や主権確保を具体的に支える手法として、GCCおよびODC(オフショア・デベロップメント・センター)の支援戦略が示された。同社 保険事業統括本部 ディレクターの大場雄介氏は、国内の若年労働人口の急減という構造的課題に触れ、「外注か内製か、海外か国内かという二項対立の時代は終わり、多次元ソーシングの時代に入った」と語る。大場氏は、世界の人材を活用して自社の資産とする「We Manage, You Control(管理はTCSが担い、主導権は常にお客様にある)」の原則を提示。
GCCヘッドのマノジ・バルギース氏も、新たに立ち上げたグローバル組織「GVIC」の枠組みを活用し、日本企業の課題やニーズに応じたロケーション戦略とエンド・トゥ・エンドの構築・運営支援を提供すると意気込みを語った。
最後に森氏が「日本TCSは実装に強い会社。共創、ヒューマン+AI、内製化支援の3つの実装力を軸に、日本企業とともに成長したい」と括り、説明会を締めくくった。
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小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)
EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。
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