「AIコーディング率90%へ」MIXI CTOが挑むAI駆動開発推進 現場が前のめりだからこその苦労
AIエージェントですべて開発できるようにするよりも、人の異動が楽になるようにしたい
AI駆動開発は、コーディングツールを配れば全社に広がるわけではない。生成コードの品質やライセンスをどう管理し、成果を測るか。仕組みがともなわなければ、活用は個人の工夫程度にとどまる。MIXIはソースコード作成におけるAIエージェント活用率67.1%(2026年8月末時点)に達し、非エンジニアが実装を牽引する事例も生まれた。同社執行役員 CTO 開発本部長の吉野純平氏に、AI前提のワークフローを定着させる運用の勘所について聞いた。
「人の異動を楽にしたい」 CTOがAI駆動開発に託した思い
吉野純平氏は2008年、新卒でエンジニアとしてミクシィ(現、MIXI)に入社。スマホゲーム『モンスターストライク(モンスト)』のインフラ運用などを担い、2019年頃からは公営競技領域の開発にも加わる。2023年に、同社 CTOへ就任した。
CTOとして同氏が抱えるミッションは、ものづくり全般の統括にとどまらない。技術の対外発信も、人材獲得も託されている。加えて「うまくビジネスにつながる技術検証をして、実際にビジネスになるものを作りだすことも任されている」と話す。
同社の開発組織は、二層構造を採用している。具体的には、各事業部にエンジニアが所属し、それとは別に事業を横串で通す組織として開発本部が置かれている。吉野氏の管轄である開発本部は約90名規模、全社のエンジニアは360名ほどだ。開発本部が担うのは、事業の直接的な課題解決と、全社で使うIT基盤の最適化である。
全社のAI活用に関しては、「AIエージェントですべて開発できる」状態を目指すことが最終的なゴールとして置かれている。ただし、吉野氏自身が最も強く願うのは、そこから派生する別の効用だという。「一番は、人の異動を楽にしたい。現在アサインされているプロダクトから、別のプロダクトに移ることもあるだろうが、そこの負担をなくせるようにしたい」と打ち明ける。
現状は、既存業務から人を剥がせないため、適材適所の人材配置が難しい状況にあるという。今までも社内異動の制度は整えてきたが、新たな成功事業を増やそうとすれば、当然だが誰が新しいことをやるのかという問いに突き当たる。異動させられないとアサインできない。いかに既存の仕事から手を離せる状態を作れるかが勝負だと吉野氏は述べた。
MIXIがAI駆動開発に着手したのは、2023年の秋頃。同社がGitHub Copilotを使いはじめた頃だ。当時はコード補完が中心で、開発フロー全体を組み替えるものではなかった。
コード補完から、AIエージェント活用へと軸足を移したのは2025年10月頃だという。それ以前から個別の検証は進めていたものの、組織全体としてAI活用に振り切る方針を打ち出したのがこの時期にあたる。技術側の変化がその方針を後押しし、「2025年頃にAIの性能が大きく伸びたことが、AI活用を加速する好機につながった」と吉野氏は説明した。
また、社内エンジニア向けイベントにて、同氏は「人のシフト」というテーマを共有したそうだ。AIによって人の担うべき役割は変わるのか、採用の考え方はどう変化するのか。既存メンバーのスキルアップや、AIによる能力拡張でどんな業務が補えるかといった議論も交わされたという。
「単純に採用人数を増やすことはなく、今いる人材でよりよいものづくりをすることが求められると思います。その状況下で、『やりたい』と思ったことをスピード感をもちつつ質も担保できる状態で進めたい。人の増加に依存せず、やりたいことをやるためには、AIを活用するほかないのです」(吉野氏)
開発時に使用するAIツールは、1社のツールのみに依存してはいない。OpenAI、Anthropic、Google、Cursor、Devin、GitHub Copilotのエージェントモードなど、主要なサービスをほぼ網羅している。1社のツールに統一しないのには、訳があるという。同社はモンストをはじめ、写真や動画を家族間で共有できる『家族アルバム みてね』や競輪・オートレースのライブ配信などを楽しめる『TIPSTAR』など、多種多様なドメインを扱う。事業ドメインごとに最適なツール・使い方は異なるため、あえて全社統一するという見解を敷いていないのだ。
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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