「AIコーディング率90%へ」MIXI CTOが挑むAI駆動開発推進 現場が前のめりだからこその苦労
AIエージェントですべて開発できるようにするよりも、人の異動が楽になるようにしたい
目標はAI開発率90% 100%には“今後もならない”理由
しかし、AIツールの選択肢が広がるほど、導入判断のスピードがボトルネックになるだろう。契約条件や学習利用の可否を確かめないままAI導入・活用を走らせるわけにはいかず、それをいかに早くOKにするかが問われる。その懸念もさることながら、実際の活用はスピード感をもって進んでおり、既に大きな変化を実感している部署もあるという。
なかでも効果が顕著に表れたのが、法務・知財の確認プロセスだ。同社は確認リードタイムを5営業日以内に判断・返答する運用を徹底できている。吉野氏は「法務部門の頑張りの結果、チェックスピードが過去とは桁違いに速まっている印象がある。大量の依頼を迅速に捌ける体制が出来上がりつつある」と効果を語る。
技術面のリスク管理も、用途に応じて段階分けしている。ハルシネーション対策としては、場所ごとにガードレールを設定し、必要に応じて人が内容をチェックする運用を残している。外部AIサービスの学習利用は、契約条項などで確認を取ったうえで導入することを徹底。社内向けのAI活用ガイドラインも整備済みだ。
また、AI駆動開発を進めるうえでは、AI生成したコードが脆弱性をもっていないかも懸念材料となるだろう。同社では、脆弱性を2種類に分けて考えている。1つは、サプライチェーン起因の既知の脆弱性。これに対しては外部の検査ツールを導入し、検知と併せて実際に攻撃される恐れがあるかを自動でチェックする。「かなりアグレッシブにいろいろな脆弱性を見つけてくれるので、今までよりも修正しやすくなった」と吉野氏は話す。もう1つは、自社で書いたコード自体の脆弱性であり、こちらはまだやるべきことが残るとの課題意識を示した。
今後も、人によるレビューを完全になくすわけではない。大きな影響がある箇所では人のレビューが重要だと同氏は言及する。加えて同社は、AIが生成したコードをAIエージェントにレビューさせる仕組みを実運用している。事業部ごとの特性に合わせた自動化が進んでいるとのことだ。

ところで、AI駆動開発の効果を示すには、当たり前だが数値の計測が必要だ。MIXIは、AIコーディングエージェントの活用率を会社全体と各事業チームごとに月次で計測している。2025年11月時点では、グループ全体で全ソースコードの28%をAIが作成していたが、2026年8月末では約67.1%にまで伸びているという。開発本部が掲げる目標は、この比率を90%まで引き上げることだ。トップから現場に強く働きかけているわけではないのに、数字は伸びつづけていると吉野氏は語る。
90%達成という目標に、期限は設定していない。優先しているのは、市場に届けるまでの時間をどれだけ短縮できたかという指標(TTM:Time to Market)だ。では、いずれAIコーディング率は100%になっていくのか。この問いに、吉野氏は即座に答えた。
「目指す気持ちはあります。ただ、たとえば『この1文字を直すなら、人がやった方が早くないですか』と言われたら、間違いなく『人がやって』と伝えます。すべてをAIに任せる理由が、今のところは見つかりません。おそらく、現実的には今後も100%にはならないでしょうね(笑)」(吉野氏)
定量的な成果として現時点で明確に示せるのは、レビュー速度の改善である。AIが露払いのように人の確認前へ回り込んで指摘事項を潰すため、確認時間は純減しているという。
一方で、プロダクトのリリースまでの日数がどれだけ短縮されたかは、まだ語れる段階にない。効果を試算するデータを、作っている最中だという。開発工程の管理方法は、部署ごとに異なる。そこで各部署に、「どうすれば効果を測れるのか考えてほしい」と依頼しているそうだ。
加えて、AIにかかるコストも現状課題だという。現場も含め、会社全体でコスト意識をもつことが大事だとしたうえで、上層部から「コスト意識を高めろ」と言ったところで、現場は具体的にどんなアクションをとればよいかわからない。そこでMIXIは、AI活用の効果を現場自身の業務効率化に還元する仕組みづくりに取り組んでいるという。吉野氏は「その仕組みを整えることが、結果的にもコストへの意識づけになる。あとは、それをいかに速く進められるかだ」と語った。
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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