「AIコーディング率90%へ」MIXI CTOが挑むAI駆動開発推進 現場が前のめりだからこその苦労
AIエージェントですべて開発できるようにするよりも、人の異動が楽になるようにしたい
「早く新しいAIを使わせてほしい」 現場が前のめりだからこその苦労
AI駆動開発による現場の変化として特に印象的だったものを問うと、吉野氏は非エンジニア領域の動きを挙げた。もはや、エンジニアでないと物を触って価値を提示できないという状況は減ってきている。サイトやアプリケーションのデザインを変えたり、新しいモーションのイメージを見せたりといった工程が、既にエンジニアの手を離れはじめているのだ。
なかでも、『家族アルバム みてね』における開発事例が特徴的だという。ビジネス職の担当者がバイブコーディングを駆使し、従来3人で3ヵ月を要していたデモ環境の構築を1人が3週間で完了できるようになった。また、『TIPSTAR』事業部では、自然言語で検証環境を自動生成できる基盤を構築し、非エンジニアが新施策のプロトタイプ開発に踏み込めるようになった。ビジネスサポート室も、部室内の全案件を統合管理するシステム「Square2」を独自に構築している。
こうした広がりを支えるのは、現場から自然発生した“知”の共有だ。うまくいくセオリーを社内ドキュメントに書き残すエンジニアがおり、それを読んだ非エンジニアが実践する。
「ほとんどのドキュメント作成は、エンジニアたちが自主的にやってくれています。自分たちでモチベーションをもって取り組んでくれているので、とても喜ばしいです。また、部署ごとにAIアンバサダーを任命し、AI活用を活発化させる取り組みも進めています」(吉野氏)
また、新しいAIツールを導入した際には外部の協力も得て講習などを開催しているが、活用の浸透そのものには苦労していない。「反対に、早く使わせてほしいという声が多く、その声に合わせた権限付与などの対応のほうが大変だ」と吉野氏は明かした。
MIXIにおけるAIエージェントの利用は、すでに後戻りできない水準にまで達している。「AIエージェントがない時代には、もう戻れない」と同氏は述べる。利用しているAIの調子が悪い日には、現場から悲鳴が上がることもあるという。
そんな同社が現在直面している大きな壁は、データ側にあるとのことだ。AI-Readyなデータ整備は現在進行形であり、アカウントの配布が完了した今、データ同士をオペレーションでつないでいくことが次の戦いになるとしている。
最後に、AI駆動開発を全社へ根づかせるうえで決め手になるものを問うと、吉野氏は「人の働き方を変えることも大事だが、それ以上にワークフローを変えることのほうが大切」と語る。業務の流れを変革できなければ、新しいものを始めようにも従来の方式が邪魔をし、円滑に進まなくなってしまう。
そして、その変革は上意下達では成立しない。効率を上げろという要請が経営から降りてくれば、現場が素直に動くわけでもないだろう。結局は、現場層がいかにやる気になって自主的に変革してくれるかにかかっている。コスト意識と時間意識が全体に染みわたったときが勝ち──経営と現場のあいだで、吉野氏は今も戦っている。

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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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