なぜEDRを入れても大規模サイバー攻撃被害を防げないのか?低アラートに潜む組織の運用課題を洗いだせ
【チェックリスト付】「当たり前のことをやっていれば意外と防げる」なら、具体的にどう対策すればよいのか
近年、アサヒグループやアスクル、ニチレイのような大企業を狙うサイバー攻撃が高度化・巧妙化する中、エンドポイントを守る最後の砦といえるEDR(Endpoint Detection and Response)の重要性はますます高まっている。一方、ツールを導入しただけでは検知後の調査、優先順位付け、端末隔離を迅速に進められるとは限らない。外部のセキュリティ運用支援サービスを活用する場合も、責任分界やエスカレーション、改善の仕組みが曖昧であれば、防御力を十分に引き出すことは難しい。求められるのは、ライセンス価格や外部支援の費用だけでなく、運用工数、教育、インシデント対応まで含めたTCOの視点と、組織が主体的に運用を改善しつづける体制だ。本記事では、クラウドネイティブ社の吉田浩和氏へのインタビューを通じ、「Microsoft Defender for Endpoint P2」を活用したEDR運用の最適化と、外部の知見を生かして自社の防御力を高める考え方について探る。
大規模インシデントから学ぶ、EDRを生かすための運用と基本対策
2025年9月、アサヒグループホールディングスはランサムウェア攻撃を受け、国内グループ各社で受注・出荷システムが停止した。商品供給は手作業を交えて継続されたものの、物流業務の正常化には時間を要し、サイバー攻撃が事業継続に与える影響の大きさを改めて示す事例となった。
同社は調査の結果、外部の攻撃者がグループ内拠点のネットワーク機器を経由して侵入し、複数のサーバーや一部PC端末が暗号化されたことを公表している。また、EDRを導入していたものの、攻撃が高度かつ巧妙で検知できなかった趣旨も説明した。
もっとも、公表情報だけから攻撃者がEDRをどのように回避・無効化したのか、設定や運用のどこに課題があったのか断定はできない。一般的に攻撃者は、脆弱性の悪用、認証情報の窃取、設定不備などを組み合わせて侵入・活動を広げる。EDRは重要な防御策だが、導入するだけですべての侵害を検知・阻止できるわけではない。侵入経路、ネットワーク構成、特権管理、脆弱性対応、検知後の体制を含む対策が、被害の範囲を左右する。
クラウドネイティブ社の吉田浩和氏は、「EDRを入れた、あるいは運用をどこかに任せたから解決という、解像度の低い関わり方では見えてこない課題がある」と指摘する。アラートを誰が確認し、どういった基準で優先順位を付け、端末隔離や追加調査、復旧を誰がどの時間軸で実行するか、平時から定めることが重要だ。MDR(Managed Detection and Response)やSOC(Security Operations Center)サービスを利用する場合も、委託先との責任分界、エスカレーション条件、顧客側の意思決定者を明確にしなければ、迅速な対応にはつながりにくい。
株式会社クラウドネイティブ シニアセキュリティスペシャリスト/サイバーセキュリティスペシャリスト
吉田浩和氏
(撮影場所:WeWork)
EDRの効果を引き出すには、攻撃表面を明らかにして減らしていく基本対策も欠かせない。不要な通信を遮断するファイアウォール設定、最小権限を徹底する特権管理、IT資産の把握、脆弱性管理、更新プログラムの計画的な適用が重要である。EDRはこれらに代わるものではなく、異常の検知から調査、封じ込め、復旧を支える仕組みだ。
「一言で言えば、当たり前のことを当たり前にやっていれば、攻撃者ができることは実はそれほど多くない」と吉田氏は語る。新たなツールの導入と並行して、脆弱性管理、パッチ適用、特権管理、通信制御、検知後の対応といった「やるべき基本」を着実に実行することが、EDRを含むセキュリティ投資の効果を最大化できるのだ。
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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