誰もが受けられる「金融IT検定」を受験する意味とは? 設計者が問題に込める意味と意図、次世代への想い
「合格がゴール」の試験じゃない。金融業界が進化し続けるための、次世代リーダーが持つべきパスポート
「金融IT検定」という資格試験をご存じだろうか。その名のとおり、金融業界におけるITシステムやデジタル/ビジネストレンドの知識を問う検定である。金融業界に身を置く人はもちろんのこと、金融業界を相手に仕事をするIT企業や異業種で働く人、さらには学生まで、あらゆる人に受験資格が認められている。試験内容を設計・運営しているのは金融IT協会だ。この検定を受ける意味・価値とは何か、なぜこの検定が日本の金融の未来を創るのか。同協会で検定WG長を務める中山靖司氏に話を伺った。
日銀入行から今日まで、“金融×IT”の最前線を38年間歩んできた
中山靖司氏は1988年、日本銀行に入行した。ちょうど「日銀ネット(日本銀行金融ネットワークシステム)」が稼働し始めた年だ。そこから同氏は、システム関連部署、決済機構局、金融研究所と、金融とITが交差する現場を渡り歩くキャリアを歩んできた。
決済機構局では、日銀ネットや全銀システム(全国銀行データ通信システム)、国際送金ネットワークのSWIFTといった金融インフラの企画に携わった。金融研究所ではセキュリティの研究に軸足を置き、キャッシュカードのICチップ化やインターネットバンキングへの2要素認証・2経路認証の導入を金融機関に働きかけてきた。
「昔は『そんなことあるわけないでしょ』と言われたものが、今では当たり前になっている」と中山氏は当時を振り返りながら語る。たとえば金融研究所にいた時代には、マルウェアによる不正送信のリスクを指摘しても「ありえない」と一蹴されたこともあったという。
日本銀行での最後のポストは、金融高度化センターだった。ここでは、“ITを活用した金融の高度化”をテーマにワークショップなどを主催していた。そこで、現在の金融IT協会 理事長である山口省蔵氏とともに働いたという。
「金融高度化センターでは、国内の金融機関(組織)に向けてメッセージを発信したり啓発を行ったりしていました。そして、今の金融IT協会では、金融の世界で活躍する個人のレベル底上げを図るために活動しています。アプローチは異なりますが、志は一本の線でつながっています」(中山氏)
皆さんは2008年にビットコインが登場した時、この技術と真剣に向き合っただろうか?
定年後の中山氏は、SBI金融経済研究所に主な活動の場を移した。現在は、暗号資産やステーブルコイン、ブロックチェーンといった領域で研究活動を行っている。
なぜ、こんな話をするのか。それは、冒頭に中山氏が述べた「昔は信じられなかったことが、今では当たり前になっている」という言葉に、同氏の価値観や金融IT検定の設計思想が見えてくるからだ。というのも、暗号資産が登場した当初、世間の温度感といえば「ビットコインに今のうちに投資したら、将来儲かるかもしれないんでしょ」くらいのものだったように思う。伝統的な金融機関の多くも、これらの分野とは距離を置いてきた。
しかし、今やこれらの技術は、新たな金融インフラの一部となる可能性が高まってきている。たとえばステーブルコインは、2025年10月にJPYCの正式発行が開始されたことを皮切りに、金融機関が相次いで参入を発表している。また、ブロックチェーンなどが完全に浸透すれば、金融の仕組みや常識そのものが大きく変わるかもしれない。となれば、金融業界にいるすべての人は、これらの技術を学ばないわけにはいかなくなる。
こうしたあらゆる変化の可能性を、皆さんは固定観念や決めつけなく考えられているだろうか。つい最近まで“不思議なテクノロジー”だったものが、いつのまにか新たなスタンダードとなるかもしれない。この柔軟な変化の先読みをしながら、環境変化に対応していく。この姿勢が、金融IT検定の設計思想へつながっているのだと中山氏は語る。この観点を踏まえて、次ページから具体的な検定の設計について見ていこう。
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材しているほか、DX推進や、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
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