「全ての企業」のインフラがAIについていけなくなる……Ciscoの新発表は打開の有効策となるか?
AIエージェントの“大食い”に耐えられるインフラ/ポスト・ミュトス時代のセキュリティ/運用体験のパラダイムシフト
AIエージェントを組織の中で大量にエラーなく稼働させるためには、大規模かつ高速、セキュアなITインフラ環境を整備しなければならない。現行のインフラ環境では、世界中のほぼすべての企業が近いうちに限界を迎え、AIを十分に活用できなくなるだろう。では、ソフトウェア、ハードウェア、ミドルウェアすべてを含む「フルスタック・インフラ」を、どう刷新・再構築すればよいのだろうか。領域が広すぎて、どこから着手すればよいのか、どこまでやればよいのかも検討がつかない。米国にて2026年5月31日~6月4日に開催された「Cisco Live! 2026」でCisco Systems(以下、Cisco)が発表した数々の取り組み・新製品から、そのヒントとイメージをつかめるかもしれない。
無数のAIエージェントに「耐えられるインフラ」を用意できるか?
今、世の中では何が起こっているのか。つい数年前のチャットボットの時代から、現在では自律的にタスクを遂行するエージェントの時代へと突入した。Claude MythosのようなフロンティアAIも登場した。そしてフィジカルAIの時代が間近に迫っている。
「この変化がITインフラストラクチャへの要求を本質的に変えつつある」と、Ciscoの最高製品責任者(CPO) ジートゥ・パテル(Jeetu Patel)氏は述べる。チャットボットの場合、人間がAIに質問し、AIが答えを返すという決まった行動パターンがあった。そのため、インフラが稼働するタイミングも断続的で、人間のターンでは動かず、AIが回答するターンでトラフィックのスパイクが発生するというのが基本だった。
しかし自律的に連携して働くエージェント群となると、そのインフラも持続的に絶え間なくリソースを消費し続けることになる。また、エージェントはマシンスピード(機械の速度)で動作するため、求められるインフラの規模も大幅に拡大する。
興味深いのは、このニーズの変化がデータセンターだけでなく、我々のワークプレイス(職場)にも及んでいる点だ。「デスクサイド・コンピューティング」というトレンドを皆さんはご存じだろうか。デスクの脇にエージェントやAI処理専用のMac miniやMac Studioを置いて、そこで何百ものエージェントを働かせるというワークスタイルが普及しつつあるのだ。
なぜこんな話をするかというと、このトレンドが近い将来一般的になったとき、何が起こるのかを想像してほしいからだ。Ciscoの調査によれば、1つのAIエージェントは人間が同じタスクを行う場合と比べて、約450%多くのトラフィックを生成する。これが無数に企業の中で稼働し、インフラのリソースを消費することになるのである。つまり、インフラストラクチャはもはやコンピュート(計算能力)やメモリだけで制約されるのではなく、ネットワークに制約されるようになる。
こうした背景から、企業がAI時代を生き抜くためにインフラを刷新・再構築することは必須のアジェンダだが、Ciscoとしてはそんなニーズに対し適切なインフラ環境を提供できるようにしなければならない。
そして、セキュリティも根本から再定義する必要がある。AIエージェントは瞬時に、そして大規模に他のエージェントと対話し、MCPサーバーやCLIなどのツールにアクセスしてシステムと対話し、データにもアクセスする。人間の代わりにツールを使って仕事を遂行するエンティティの存在を前提としたセキュリティ環境を構築せねばならない。いわゆる“Security for AI”である。
幸いなことに、Ciscoは業界の中でこの「インフラの拡張」と「Security for AI」という2つの要件に同時に応えられる位置にいるプレイヤーであるとパテル氏。それを体現する同社の取り組みや新製品、コミットメントを成果として発表した。順番に掘り下げて見ていこう。
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材しているほか、DX推進や、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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