「全ての企業」のインフラがAIについていけなくなる……Ciscoの新発表は打開の有効策となるか?
AIエージェントの“大食い”に耐えられるインフラ/ポスト・ミュトス時代のセキュリティ/運用体験のパラダイムシフト
長年築き上げてきた巨大な「フルスタック・インフラ」の全貌、今こそ真価を発揮する?
「すべてのエージェントの行動は、ルーティングの課題となり、信頼の決定となり、最後にはテレメトリのイベント(出来事の記録)となる」とパテル氏。これが、Ciscoがシリコン(半導体)とオプティクス(光通信)の基盤から始まる垂直統合型のプラットフォームを構築することに注力する理由だと述べた。
その基盤の上には、ネットワークを駆動するシステム(スイッチやルータ、アクセスポイントなど)があり、さらにコンピュート、データ、AIモデル、アプリケーション、AIエージェントが載っている。そして、それらはオブザーバビリティ(化観測性)によって包み込まれている。これが、Ciscoが市場向けに共同設計で築き上げてきた「フルスタック・インフラ」だ。
通常、バラバラのピースを組み合わせて統合製品を作り上げるのはかなり難しい。しかし同社は、物理的なシリコンからエージェントによって駆動されるセマンティックに至るまで、一貫したプラットフォームの構築を目指してきた。構築する上では、以下3つの基本原則を軸に据えたという。
1. オープンエコシステム:
組織にはCisco製品だけでなく、数多くのテクノロジーやベンダー製品が存在する。そのため、あらゆる環境に対応できるオープンなエコシステムは不可欠である
2. 緊密な統合&緩やかな結合:
「Ciscoの製品をすべて購入しなければならない」なんて無理強いはしたくない。しかし、複数のCisco製品を組み合わせて利用する場合には、魔法のように連携して機能しなければならない。よって、Cisco製品同士は、緊密に統合されつつも、緩やかに結合されている必要がある
3. 限界コストの削減&複利的な価値の提供:
Cisco製品を新たに導入する際、追加費用や手間は最小限に抑えられるべきである。Cisco製品を購入すればするほど導入は簡単になり、反対に複利的な価値をユーザーにもたらす必要がある。つまり、新たな製品だけにバリューを吹き込むのではなく、既にユーザーが利用しているCisco製品の価値も高まっていく仕組みを作るべきである
続いてパテル氏は、Ciscoが手掛ける以下3つの支援領域を挙げ、それぞれに焦点を当ててプレゼンした。
- ネットワークインフラの拡張(スケール)
- エージェント・ワークフォースのセキュリティ確保
- 運用の根本的な再定義による、圧倒的なシンプルさの実現
テック界で白熱議論中、大規模なネットワークインフラを実現する3種類のアプローチ
まずは、ネットワークインフラの拡張(スケール)について。至るところでAIの推論は行われているが、その核心にあるのが「Cisco Silicon One」シリーズと呼ばれるシリコン製品だ。独自に製造しているネットワーク専用処理チップ(ASIC)である。
約10年前に、Ciscoは「自社でシリコンを製造する」という戦略的決定を下した。その成果が、今こそ真価を発揮するときだ。「何かを変更・再構成するたびに新しいチップを設計し直すのではなく、ソフトウェアを介してチップに変更を加えられるようにしたい」という想いから、すべてのチップ&デバイスにわたって共通のアーキテクチャとプログラマビリティ(変更可能性)を重視してきたとパテル氏は語る。
Ciscoは現在、4~5兆ドル規模のデータセンター拡張に取り組んでいる。同社の製品はハイパースケーラーやネオクラウド、ソブリンクラウド、その他サービスプロバイダーに対し基盤の技術として提供されていることは皆さんもご存じだろう。
現在、テックの世界では「データセンターをどのようにスケールさせるか」という課題が議論されている。そして、その解決策として主に以下3つのアプローチが有力視されている。
- スケールアップ(Scale-up):サーバーのラック同士をネットワークで接続し、拡張していく
- データセンター内クラスター(Cluster within a Data Center):大量のGPUを搭載した1つのラックだけではワークロードを満たせないという場合に、データセンター内で複数のラックをクラスター化して接続する
- スケールアクロス(Scale-across):現在、電力の制約などにより、1つのデータセンターに搭載できるGPUは通常、8万~10万が限界とされている。そのため、距離の離れた2つのデータセンターを接続し、1つの巨大なコンピューターのように動作させるアプローチが登場している
ただし、これらすべての実現には、非常に高度かつ大規模なネットワークが必要とされる。そこで、Ciscoのシリコン開発に対するコミットメントが活きることとなる。まずは「Silicon One G」シリーズの最新モデル「G300」、これは前世代のG200チップと比較して2倍のスピードを実現する、102.4Tbpsのイーサネットスイッチング能力を持つ。「これを超えるパフォーマンスを持つスイッチチップはこの世に存在しない」とパテル氏は自信を示す。

次に、Silicon One Pシリーズの最新モデル「P200」について。これは、データセンター間をまたぐ「スケールアクロス」のためのチップだ。51.2Tbps、毎秒200億パケットを処理できる。このチップには「Deep Buffering(ディープバッファリング)」という特殊な機能が備わっており、たとえば数百キロメートル距離が離れた2つのデータセンターを1つの巨大コンピューターとして動かしたいとき、仮に途中でパケットロスが生じても、最初過多AIのトレーニングをやり直さずに済むとのことだ。
「GPUは素晴らしい技術ですが、ネットワークに接続されていなければ何も意味がありません。我々はデータセンター内だけでなく、離れたデータセンター同士をネットワークで結び、1つの論理ユニットとして機能させる取り組みを行っています」(パテル氏)
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材しているほか、DX推進や、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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