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2026年冬号(EnterpriseZine Press 2026 Winter)特集「AI時代こそ『攻めの経理・攻めのCFO』に転じる」

酒井真弓の『Enterprise IT Women』訪問記

ネコ型配膳ロボ、AIロボ接客……省力化を進めるすかいらーくが、AIで「対人接客」を可視化する狙いは?

第46回:すかいらーくホールディングス IT本部 IT企画グループ AI推進チーム リーダー 藤本祥恵さん

 すかいらーくホールディングスで営業をしていた藤本祥恵さんは、2人の子育てをしながら独学でITを学び、今ではAI推進チームのリーダーとして、数々のプロジェクトを牽引している。同社は対話AI「Co店長」や、接客品質を可視化する「いら・あり」プロジェクトなど、現場の課題を起点としたAI活用が盛んだ。「本当に大変なのは、技術ではなく業務プロセスを変える気持ちのほうなんです」──そう語る藤本さんに、AI活用の現在地と目指す姿を聞いた。

AI接客「Co店長」にトライ中 顧客/従業員双方をサポート

酒井真弓:藤本さんは今、AI推進チームのリーダーとして、いろんなプロジェクトを進めていらっしゃいますよね。

藤本祥恵:2026年1月から、AIを使って業務プロセスを根本から見直す動きが始まっていて、私もいろんな部署に入り込んで進めているところです。AI推進チームは2026年4月に発足したばかりで私を含めて2人ですが、7人のエンジニアと連携しながら、20ほどの案件を同時進行しています。

 これまでのDXは、業務効率化が中心でした。でも生成AIが出てきて、できることが一気に広がった。だからこそ、業務効率化だけでなく付加価値を生み出すところまでAIで踏み込んでいきたいと思っています。そこで本当に大変なのは、技術ではなく、業務プロセスを変える気持ちのほうなんです。これまでのやり方を、しかもAIで変えるのは戸惑いがあって当然ですよね。みんなが「やって良かった」と思えるように進めていきたいです。

画像を説明するテキストなくても可
株式会社すかいらーくホールディングス IT本部 IT企画グループ AI推進チーム リーダー 藤本祥恵さん

酒井:すかいらーくグループは以前から、デジタルメニューブックやネコ型配膳ロボットなど、店舗のデジタル化に積極的な印象です。AIに関しては、どんな取り組みが進んでいるんでしょうか。

藤本:2023年に構想がスタートしたAI接客サービス「Co店長」というプロジェクトがあります。きっかけは、新型コロナなどの影響もあって、お客さまとクルーの接点が減ってしまったことです。人にしかできない接客は大事にしながら、行き届かない部分は生成AIで補って、お客さま体験を高めていこうと立ち上がりました。2024年9月から「ガスト 秋葉原駅前店」で実証実験を行っています。

酒井:どんなサービスなんですか?

藤本:お客さまが席に着いてタブレットのデジタルメニューを開くと、「AIロボ」というキャラクターが話しかけてくれます。たとえば「おすすめは?」と尋ねると、その日のおすすめを提案してくれます。仕組みとしては、Azure OpenAI Serviceを活用していて、生成AIが学習している内容と、ガストのメニューデータを組み合わせて回答します。

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提供:株式会社すかいらーくホールディングス

[クリックすると拡大します]

酒井:2023年当時は、飲食店がお客さまに対して生成AIを使ったサービスを提供すること自体、まだほとんど前例がありませんでしたよね。リリースまでには、どんな苦労がありましたか。

藤本:いろいろありましたね。当初は、嘘(ハルシネーション)が多すぎました。「さっぱりしたものがいいんだけど、おすすめは?」と尋ねると、実在しないメニューを答えてしまうなど。

酒井:生成AIが、良かれと思って、おもてなしの精神を発揮してしまったわけですね(笑)

藤本:そうなんです(笑)。「おもてなし」と「実在しないメニューを案内してしまう」は紙一重。ここは社内でかなり議論しましたね。最終的には、創作的な提案を一定以下に抑える調整を入れました。ただ、お客さまもこうした生成AIの特徴をご理解くださっていて、AIロボからあえて実在しないメニューを引き出そうとする方も(笑)。AIロボとアニメのキャラクターの話で盛り上がったり、「美味しかったよ、ありがとう」と嬉しい言葉をかけてくださったり、楽しみながら付き合ってくださる方が多いんです。

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提供:株式会社すかいらーくホールディングス

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 しかし、アレルギーに関する間違いは許されません。「牛乳は入っていますか?」「ネギを抜くことはできますか?」といったアレルギーについての質問は、必ず「こちらのアレルギーサイトで確認してください」というようにサイトへの誘導が入るように何度も何度も調整を重ねました。

酒井:今後はどんな展開を考えていますか。

藤本:実は、Co店長の役割は、お客さまとの接点を増やすことだけではありません。お客さまの声をデータとして活用することも目的の一つです。これまで紙のアンケートでしか集められなかったお客さまの生の声を、AIロボとの対話から自然と引き出せるようにしたいんです。お客さまの要望や、店舗で起こっていることを本部でも知ることができるので、これらのデータをお客さま体験の向上に生かしていきたいです。

 同じ発想で、店長やクルーの声も集められるようにしたいと思っています。もともとCo店長には、Copilot同様に「店長を支えるAI」という意味が込められています。全国約3,000店舗が今どんな課題を抱えているのか、より詳細に把握できるようになれば、店舗運営や働き方の改善につなげられます。ですから、お客さま向けの機能と並行して、店長やクルーのための開発も進めているんです。

酒井:店舗スタッフ向けにはどんな機能があるんですか。

藤本:たとえば、クルーは100以上のレシピを覚えなければなりません。新人や外国人のクルーにとっては大きな負担です。これまでもタブレットのマニュアルで調べることはできましたが、忙しいキッチンで操作するのはなかなか大変でした。そこで、声で話し掛ければ必要な情報がすぐ出てくる仕組みにしました。生成AIは多言語対応がしやすいので、外食産業との相性がとてもいいんです。

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自動化で顧客接点が減少……「いら・あり」可視化で活気を評価

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この記事の著者

酒井 真弓(サカイ マユミ)

ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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