将来人口推計データで川崎の未来を予測! 富士通・川崎・さいたま官民チームが描く「廃れない都市モデル」
富士通主催「DDM Award」オープンコンペティション 第2回をレポート
IT企業から“DX企業”への進化を掲げ、全社変革プロジェクト「フジトラ(Fujitsu Transformation)」を推進する富士通は、不確実性の高い時代における持続的成長を目指し、意思決定を高度化する「ディシジョンインテリジェンス(DI)」の実装を進めている。その基盤として位置付けられているのが「データの利活用」であり、データ分析コンペティション「DDM Award」はこれを推進する代表的な取り組みのひとつといえる。2026年3月に開催されたDDM Awardでは「将来人口推計×◯◯◯で描く まちの未来予想図」をテーマに据え、社内外から206名・88チームが参加。最終審査には1次・2次審査を勝ち抜いた4チームが登壇し、プレゼンテーションを白熱させた。
「将来人口推計データ」と「人の洞察」で読み解く、まちの課題と未来像
2022年から富士通が主催するデータ分析コンペティション「DDM Award」。2025年には市制100周年を迎えた川崎市とのコラボレーションにより、地域や社会の課題解決をテーマにしたオープンコンペティション部門が新設された。同部門における今回のテーマは「将来人口推計×◯◯◯で描く まちの未来予想図」だ。
今ある姿から未来を描き、課題や解決策を導き出すためには、データで現状を把握するだけでなく、分析を通じて変化を捉え、未来を予測し、具体的なイメージへ落とし込むことが求められる。そしてその際には、単一の情報にとどまらず、複数のデータを掛け合わせて多面的に事象を捉える視点が不可欠だ。より“立体的な未来像”を描き出すためには、人の持つ情報統合力や想像力が重要な役割を果たす。
今回のDDM Awardは、将来人口推計を軸とした多様なデータからまちの未来を予測し、そこから課題と解決策を導き出して具体的なアクションへとつなげることで、未来図を描こうという試みだ。206名・88チームがエントリーし、1次審査では審査にAIを導入。富士通によると、「人が審査する結果と変わらないほど、期待以上に高い精度で審査ができ、審査工数の削減に寄与した」という。また2次審査では参加者同士の相互評価を導入し、ベスト4に選出されたチームが最終審査としてプレゼンテーションを行った。本稿ではその内容について、審査員の講評とともに紹介する。
1. 学校施設が市民の交流の場になる? データから最優先候補も抽出
- テーマ:老朽化校舎の改築に併せた地域コミュニティハブの形成
- チーム名:そだてる同期
富士通のチーム「そだてる同期」が解決すべき課題として取り上げたのは、川崎市における地域コミュニティの希薄化だ。市ではこの解決に向け、市民同士の交流によって新たな価値の創出を目指す「まちのひろば」をはじめとした、市民主体のコミュニティづくりに注力している。ここで同チームが着目したのは学校施設の活用。校庭や体育館といった広い空間を備えた学校は地域拠点としてのポテンシャルも高い上に、少子化の進行によって将来的にはキャパシティが生まれる可能性もあるとして着目したのだ。
同チームではこれを検証すべく、①校舎の老朽化状況、②余剰キャパシティ、③統廃合の可能性という3つの観点から川崎市の公開データを用いて分析を実施。「校舎の築年数」によって市内の学校を分類し、「将来人口推計」と「学区情報」を組み合わせて、20年後・40年後の余剰キャパシティを推計し、コミュニティハブ形成の最優先候補となる学校を抽出した。その際、40年後を見据えて統合の可能性が高い隣接学校は統廃合が優先されると仮定して除外し、近い将来老朽化によって改築が必須となり、かつ真に余剰キャパシティの活用が課題になると推測される学校を選定した結果が示された。
加えて、実現に向けた具体案として学校建て替え時における「学校と高齢者施設の複合化」を提示。校庭や体育館を活用することで、高齢者のフレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)予防につながり、給食設備を利用した食事提供は栄養バランスや孤食回避といったシニア層の課題も解決できる可能性がある。また行政施設や医療機関、飲食店などとの連携により、地域住民が自然と集まる拠点となることも期待されるとした。
一方で「施設整備だけではコミュニティは活性化しない」と指摘し、人が集まり交流が生まれる仕組みづくりやその運用の重要性を強調した。そこに富士通の技術を生かし、街づくりの構想からシステム開発・運用まで一体的に支援する構想を提案。モデル校での実証や課題整理、段階的なロードマップなどを示し、学校を核とした持続的なコミュニティ形成の可能性を語った。
発表を受けて、審査員を務めた富士通の阪本陽二氏、富士通Japanの國分出氏は、ともに「施設の有効利用だけでなく、複合的な社会課題の解決も検証していること」「データ分析で優先度の判断や実行の迅速性につなげられる可能性」を指摘し、「現実的で実行力のある提案」と評価。制度上の規制や管轄組織の違い、建設費や運営費の高騰、長期事業における社会環境の変化などの課題に言及し、「川崎市にはそれを乗り越えて検討してほしい」と期待を示した。
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伊藤真美(イトウ マミ)
フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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