元良品計画会長・堂前氏が語る「作業員としての人間」の終焉 AI時代に“自律型組織”をどう実現する
HRBrain Unite 2026:「仕組み」と「感性」の両輪で実現する、AI時代の人的資本経営
AIが実業務を担うとき、企業に問われることは「AIをどう導入するか」ではなく、「人と組織をどう変えるか」だ。2026年6月に開催されたイベント「HRBrain Unite 2026」には、元良品計画 取締役会長で、ファーストリテイリングなどでも変革を主導した堂前宣夫氏と、HRBrain 代表取締役 CEOの堀浩輝氏が登壇。“仕組み(≒システム)”と“感性(≒人)”の両輪による変革をテーマに、自律分散型の組織づくり、リアルな対話の価値、そしてAI時代における「人への再投資」まで、AI時代における人的資本経営の在り様が語られた。
AIが変える「知的処理」 企業に問われる組織デザインとは
堂前宣夫氏(以下、堂前):私がAIを学んだのは、35年ほど前の大学院時代、ちょうど第二次AIブームの頃でした。当時は、ロジックが中心にあるような形で、コンピュータもさほど流行っておらず、あくまでも知的好奇心の対象という感覚でしたね。その後、ITが進化していくと、さまざまな作業が自動化されてきました。大きな転換点は、“情報処理”という領域が進展したことだと思います。かつてのITは四則演算が中心で、「メモを取る、情報を共有する」といったことが主でした。そこに「情報を処理する」という機能が加わってきた。
つまり、ホワイトカラーの仕事の多くを占めていた“疑似的な知的処理”は、本質的に機械で置き換えることができる。だとすれば、人間はより知的なことに集中できるようになっていく。これが最大の変化です。雑務をデジタル化するようなDXから一歩進んで、会社という「知的情報処理の塊」の中で、どこを自動化し、どこに人間が必要なのかを見極めることが今求められていると思います。
堀浩輝氏(以下、堀):おっしゃる通りだと思います。経団連(日本経済団体連合会)の調査では、9割の企業が何らかの形でAIを導入しているとされていました。主な使い方は、2つあります。一つは検索のリプレイス。チャットで、AIにさまざまなことを聞くような使い方ですね。もう一つは優秀な副操縦士として、資料作成や分析といった得意なタスクをどんどん任せていくような使い方です。
そして、より大きなインパクトをもたらすものがエージェントです。AIエージェントの登場で、AIが自律的にタスクを完了できるようになった。また、「問いを立てるAI」も重要です。少し前まで、「問いを立てることができるのは人間だ」と言われていましたが、いまや経営においても、人間が気づかない角度から高い精度で問いを立ててくる。この波及効果は人事に限らず、企業活動全体に及ぶと考えています。特に、日本は少子高齢化による人手不足にいち早く直面している。その危機感をアドバンテージに変え、企業内オペレーションをAIで見直すことができれば、世界をリードできる企業も増えてくるはずです。
堂前:これまでは、本来それほど知的でない事務処理も人間がこなすような、ある意味で従業員を部品のように扱っていました。人間がこなしていた危険な仕事は機械化されていき、難しい仕事だけが残ってきたはずです。それでも、人間を機械のように扱うような場面はつい最近まで、いや今でも多く見受けられると思います。そうしたものを自動化していくことで、一人ひとりが本当に尊重され、能力を発揮できる社会にしていくことが大事になる。人間を道具のように扱うことが許されない時代が来る。まさに、効率の名のもとにあったパラダイムが大きく変わっていくのだと思います。
堀:そのように変わる部分もあれば、変わらない部分もあるでしょう。求められるスキルセットは職種によって変わりますが、リーダーシップや責任をとる姿勢、“組織の出力”を明るく高めていくようなモメンタムをつくる力は、依然として人間が得意とする領域です。こうした価値は、むしろ相対的に高まっていくと考えています。
堂前:結局、AIを活用するかどうかよりも、その時代に一人ひとりの能力がどれだけ発揮されるかが大事なのです。道具のように扱われていた人間がいなくなり、全員が自律的に自分の仕事をするようになる。トップダウンで一斉に動く組織は効率的でしたが、知識・情報処理が進んでいくと通用しなくなる。AI活用というより、自律分散型の組織風土・文化・動き方に変われるかどうかが分かれ目になると感じています。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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