DDI(DNS、DHCP、IPAM)の管理・保護プラットフォームを展開するInfobloxは、2026年7月29日、外部アタックサーフェスマネジメント(EASM)市場への参入を表明した。それに合わせ、都内で記者発表会を行った。
DNSセキュリティの先頭を走ってきたInfoblox
すべてのネットワーク接続はDNS(名前解決)から始まる──同社がいつも使うキャッチフレーズだ。しかし問題は、DNSサーバーが「そのドメインは良性か、悪性か」を判断せず、無条件で名前を解決してしまう点にあると、日本法人カントリーマネージャーの土橋一範氏。結果として、ドメインのIPアドレスは調査するものの、結局ユーザーはフィッシングサイトやマルウェア配布サイト、C2(C&C)サーバーなどの悪意あるサイトに簡単にアクセスしてしまう。
実際、脅威の多くは新規、未知、あるいは局所的なドメインやインフラから始まっている。Infobloxの調査によれば、新規登録ドメイン1億2,000万件のうち、22%が攻撃目的で悪用されていた。また、88.3%は単一顧客環境のみで観測され、そのうち44%はわずか1日で活動を終了していたという。さらに、詐欺関連のドメインは前年比で62%増加していたとのことだ。

そこで同社は、近年「プロテクティブDNS」の実装を強く訴えている。DNSセキュリティの推奨施策や標準については、これまでも何度もアップデートされてきた。2006年にNIST(米国国立標準技術研究所)が『NIST SP 800-81』の初版を発行したのがDNSセキュリティ標準の始まりだ。同機関の研究員 スコット・ローズ氏が『Secure DNS Deployment Guide(セキュアDNS導入ガイド)』を執筆し、世界中のDNS管理者向けのベストプラクティスが確立された。そこから、カミンスキー脆弱性の発見やDNSSECの普及に対応する形で2010年に1回目の改訂が、そして2013年には2回目の改訂が行われた。
しかし、先述のような「アクセス先を安全かどうか判断できない」従来のDNSサーバーが抱える課題は近年まで解決されてこなかったと、本国チーフ・エバンジェリストのクリケット・リユ氏は語る。それに対しプロテクティブDNSは、脅威インテリジェンスの活用によって、悪意あるドメインや不審なドメインへのクエリと、正当なドメインへのクエリを識別できる。悪意あるドメインに対するクエリを検知すると、その名前解決を拒否するのだ。
Infobloxは、次の図で挙げられている理由をもとに、「DNSこそが理想的なセキュリティ制御のポイントである」と主張している。

2026年3月に公開された『NIST SP 800-81r3』、すなわち最新の改訂版は、同社がスコット・ローズ氏に話を持ち掛け、共同執筆によって実現したものである。同標準は、NISTによって『CSF(Cybersecurity Framework)2.0』と対応づけられ、今日の経済産業省や国家サイバー統括室が直接参照する重要なフレームワークとなっている。
Infobloxは、プロテクティブDNSのアプローチで攻撃を発生前に予測して通信を遮断する「Infoblox Threat Defense」というソリューションを展開している。1日に700億件のDNSイベントが、同ソリューションによって分析されているとのことだ。
福岡大学では2020年からプロテクティブDNSを実践
プロテクティブDNSの実践者として、福岡大学の准教授であり、同学の情報基盤センターで情報システムに携わる藤村丞氏が登壇した。同氏は、DNSを単なる名前解決のインフラとして扱うのではなく、「クエリを組織が指定・管理する正規DNSへ集約し、可視化・制御・端末対応につなげるセキュリティ基盤として運用すべきだ」との考えを示した。
福岡大学には約2万人の学生が在籍し、試験期間中には3万台を超えるデバイスがネットワークに接続されるとのこと。そんな同学では、プロテクティブDNSのほか、DNSSEC、DoH対策、OP53B/OP853Bを組み合わせた多層防御によって、DNSセキュリティの環境を構築しているという。プロテクティブDNSに関しては2020年9月に導入し、運用上の中心的な役割を担っているようだ。

藤村氏は、プロテクティブDNSを導入することの有効性について以下を挙げた。
- サイバーキルチェーンの複数フェーズで脅威を軽減:危険なサイトにたどり着く前に防ぐ「先制防御」と、万が一感染した場合に外部通信を遮断する「出口対策」を両立できる
- シンプルかつ高い防御効果:保護対象端末への専用ソフトウェア導入が不要、端末OSに依存せず組織全体へ適用できる
導入から現在に至るまで、「つながらない」といった学内でのトラブルの問い合わせは1件も発生していないという。「運用側としては非常に楽ができている」と同氏は語った。
InfobloxがEASM市場へ参入する意味とは?
そんなInfobloxが、今回EASM市場への参入を発表した。DNSの知見を活用し、インターネット公開資産のエクスポージャー(露出)を先制的に把握し、インシデントを発生前に防げるよう支援すると述べている。
実際、企業が自覚していないところで、膨大なIT資産がインターネット上に露出していることが問題となっている。その中には、停止した途端に企業全体や社会に影響を及ぼすような重要システムが露出してしまっているケースも珍しくない。防御側にも「Outside-in(外から内を視る)」リスク可視化のアプローチが必要だと土橋氏は指摘する。
InfobloxのEASMでは、DNSネイティブの探索により、他社製品では「検知対象」として扱われないDNS関連リスクや放置資産も発見できるとのことだ。また、2026年5月にリリースした「DRPS(Digital Risk Protection Service)」と、同年に買収したAxurの機能を統合してこのEASMと組み合わせることで、単一ポートフォリオによる①外部リスク発見、②重要ベンダー監視、③攻撃インフラのテイクダウンが可能になるという。
EASMの特筆すべきアドオン機能として、「Supply Chain Intelligence」も発表された。ユーザー組織にとって重要なベンダーやサプライヤー、関連企業の露出資産を可視化する機能である。

また、単に検知するだけでなく、“悪用可能性”を軸に優先して対処すべき露出を選別する点も、Infobloxが提供するEASMならではの特徴として紹介された。つまり、攻撃者が既に見ている情報をOutside-inのアプローチで把握し、その中から悪用されやすい露出資産に対応を集中できるうえ、その視点を自社のサプライチェーンにも拡張できる製品ポートフォリオを展開できるようになると、土橋氏は結論づけた。

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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、ソフトウェア/ハードウェアを問わず国内・海外の最新技術やルールメイキング動向を取材。そのほか、DX推進、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
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