2026年、LayerXは新たなフェーズへ突入した。ARR(年間経常収益)100億円に到達せんとする中、メイン事業のバクラク事業と並んで、エンタープライズ向けの「Ai Workforce」事業が急成長している。その状況下、UiPathの日本法人でカントリーマネージャーを務めた、南哲夫氏をAi Workforce事業部のCRO(Chief Revenue Officer)に迎えた。これにより、2030年度までのARR1000億円達成に向けて弾みをつけたい形だ。
「AIエージェント」活用が本格化 事業成長に向けてアクセル
生成AIの登場から数年が経過し、企業の活用フェーズは“本格実装”へと移行している。2026年現在、LayerXの事業状況について、同社 COO 福島広造氏とAi Workforce事業 CEO 中村龍矢氏は、2軸での成長を強調する。
1つは、AI SaaSプロダクト群である「バクラク」事業だ。福島氏は、「この1年でARR100億円が見えてきました。単体ではなく、複数のプロダクトで成長していくための“型”が整った」と語る。中堅・中小企業(SMB)を中心とした市場では、DXやAI活用の波を受けて成長を遂げてきた。
その状況下、もう一つの柱としてねらうのは「Ai Workforce」事業による、エンタープライズ市場の確立だ。SMB市場と異なり、AIチャットボットやAI議事録のような単純なツールだけで顧客を獲得することは既に難しい。
これに対して中村氏は、「企業の中にAIエージェントが急速に増えている今、数年でAIの価値を最大化するためにAi Workforceでチャレンジしています」と語る。
Ai Workforce事業のポテンシャルを裏付けるのは、三菱UFJ銀行における導入事例だろう。同行では、営業の提案書データレイク、複雑な金融プロダクツ業務でAi Workforceを採用しており、既に一定の成果をあげている。
LayerXがAi Workforceで目指すのは、AI活用のユースケースをいくつも実現するためのプラットフォームだ。それ故に特定の業務課題を解決するパッケージ製品とは異なり、企業の経営課題にあわせてAIを柔軟に適用していくアプローチが求められる。
「お客様の経営課題が個社ごとに異なるため、柔軟性があるプロダクト開発はもちろん、それを届けるためのデリバリーの方法も確立していく必要があります」(中村氏)
そこで同社に招へいされたのが日本マイクロソフトやアマゾン ウェブ サービス ジャパン、UiPathなどでエンタープライズITの最前線を走ってきた南哲夫氏だ。
UiPathのカントリーマネージャーからLayerXへ
直近ではUiPathのカントリーマネージャーを務めていた南氏は、なぜ今LayerXを選び、AI領域でのチャレンジを決断したのか。その背景には、同氏のキャリアにおける「クラウドからAIへ」という意識の変化があったと語る。特にUiPath時代に直面した、クライアントからの強烈なフィードバックが転機となった。
「あるときクライアントから『パッケージ製品で仕様を固め、次のステップに移るようなやり方は通用しない』と複数のCxOから言われました。RPAで作った世界、AIで作った世界はまったく異なるものです。AIによる業務変革は、単なる自動化ではなく『マネジメントOS』のような概念の実現に近いと感じています」(南氏)
このマネジメントOSという概念こそが、AIによる変革の本質だろう。単なる業務効率化ではなく、経営に資するような意思決定の高度化を図るということだ。また、南氏がLayerXへの参画を決めた背景には、「デジタル赤字」の解消という社会的な使命感もあった。
「日本のデジタル赤字は、ずっと気がかりでした。もちろん、外資の有用な部分を使っていくことも大切ですが、お客様にAIの最大価値を届けるためのコーディネーションは日本企業が担えるはずです」(南氏)
海外ベンダーによるLLMを活用しつつも、それを日本企業の業務や経営にフィットさせるための価値提供は、日本企業が担う。南氏の意思とLayerXのビジョンが合致したという。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
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