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8,000人が働くトヨタ自動車の巨大工場で“失敗を許容”するには?──デジタル化を糸口に変革を探る

一人ひとりの「好き」を起点に、アイデアに寄り添い、かたちにしていく“新しい工場の姿”へ

 海外メーカーの台頭、EVシフト、SDV戦略など、日本の基幹産業である自動車業界は大きな転換期を迎えている。そんな中、トヨタ自動車の「ランドクルーザー」「レクサス」「センチュリー」などの人気車種を製造する田原工場(愛知県田原市)では、現場発のカルチャー変革とデジタル化が進行中だ。同工場は、14ある国内のトヨタ自動車工場で最大規模を誇り、従業員数は約8,000人に上る。熟練の技術者たちも多く集まる巨大な田原工場では“新しいチームのかたち”を求め、工場長を筆頭に、現場のメンバーがデジタルを活用した変革に挑んでいるという。11月に開催されたセミナーに工場長とエンジン製造部、組立部のメンバーが登壇。モデレーターを務めた筆者がレポートする(※登壇者の所属・役職は登壇時点のもの)。

生産性だけを追求するのではなく、働く人の感情も現場に持ち込む

 愛知県田原市の港湾部に位置し、東京ドーム約80個分の広大な土地を誇るトヨタ自動車 田原工場。車両の組み立てだけでなく、エンジンの鋳造から加工も行う。巨大組織ゆえ、工場内でのコミュニケーションも課題の一つだったという。2024年1月、工場長に着任した瀬理正宏さんが目指したのは、「皆が誰かのために新しいアイデアを試している職場」。トヨタ自動車の実験都市「Toyota Woven City」から着想を得て、イメージしたのが下図だ。瀬理さんは見た瞬間「これだ!」と直感したと話す。

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 この構想では「こんなデザインどう?」「私の知識が役に立つかも」「一緒にやろうよ」といったアイデアが至るところで生まれ、気軽に試し、かたちになって、幸せが量産されていく。「自分が思いついたアイデアは、気持ちが乗っかっているでしょう。やらされているのではなく自分がやりたいから、諦めずに最後までやり切れる」と瀬理さんは強調する。

 さらにこの絵は、失敗に対するネガティブな感情も払拭してくれるという。新しいアイデアはシャボン玉のように膨らみ、成功すればハート形に。失敗してもただ風に乗って消えるだけ。「失敗したって大したことないという発想がとてもいいし、田原工場にも取り入れたいと思った」と続ける。

 ただ、この柔軟な考え方は、管理・ガバナンスが重視されてきた工場のカルチャーとギャップがあるのではないだろうか。瀬理さんは理想の実現に向け、次の3つのことを大切にしようと決めた。 

  1. 職場に感情を持ち込むこと
  2. 「好き」から始めること
  3. 田原工場で働く約8,000人全員が活躍できる土壌を作ること
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トヨタ自動車株式会社 田原工場 工場長 瀬理正宏さん

 今でこそ「職場に感情を持ち込む時代だと思っている」と話すが、瀬理さんが若手の頃は「やるべきことをきちんとやればいい」「職場に感情を持ち込むな」が当たり前で、管理や統制が行き届いた職場が良しとされる時代だったと振り返る。しかし、今は違う。感謝や感動、共感をベースに、一人ひとりができることを探して主体的に仕事をする時代だと繰り返す。

 現場に染み付いた目に見えない文化を変えるために、瀬理さんが力を入れているのが「EQ(感情知性)」の向上。EQとは、自分や他者の感情を認識し適切に扱う能力で、4つのステップで構成されている。

  1. 気持ちを感じる:自分や他者の気持ちを感じ取る力
  2. 気持ちをつくる:目的にふさわしい気持ちをつくり、他者の気持ちに共感する
  3. 気持ちを考える:なぜそういう気持ちになったのか、これからどうなるのかを考え、的確な言葉で表現する
  4. 気持ちを活かす:上記3つの能力を働かせ、気持ちを考えに組み入れたうえで行動を選ぶ

 これらがうまく回り始めると職場に活気が生まれ、新しいアイデアがどんどん飛び出すようになるという。田原工場では、この2年で250人の専門資格保有者が誕生した。

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 加えて「マネジメント3.0」の活用も開始。こちらは自律自走型組織をつくる研修ツールで、一人ひとりの人柄やモチベーションを理解したチームづくりに活かしているという。

 イベント参加者からの「職場に感情を持ち込むのが難しい」という意見に対し、瀬理さんは「好きになる努力を意識することから始めてみましょう」と語りかける。「今の仕事が好きか?」「会社が好きか?」「クルマが好きか?」を考えてみてほしいという。まさに「好きこそものの上手なれ」である。自分が夢中になれるものを知ることが、アイデアをかたちにしていく原動力になるはずだ。

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豊田章男社長のデジタル宣言当時は紙だらけ……3年で変化は?

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この記事の著者

酒井 真弓(サカイ マユミ)

ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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