ガートナージャパン(以下、Gartner)は、2030年までに「ガーディアン・エージェント」のテクノロジーが、エージェント型AI市場の少なくとも10〜15%を占めるようになるとの見解を発表した。
ガーディアン・エージェントは、AIとの安全で信頼できるやりとりを支援するために設計されたAIベースのテクノロジー。コンテンツのレビュー、モニタリング、分析などのタスクを通じてユーザーを支援するAIアシスタントとして機能し、半自律型または完全自律型エージェントとして行動計画の策定と実行、事前定義済みの目的に沿った行動の修正やブロックも提供するという。
エージェント型AIの利用拡大にともない、「ガードレール」が必要に
Gartnerが5月19日に開催したウェビナーにおいて、CIOとITリーダー147人を対象に実施したアンケートでは、回答者の24%は12個未満のAIエージェントを既に導入しており、さらに4%は12個以上を導入済みであると回答したとしている。
また、このテクノロジーの調査/実験を現時点で推進している割合は50%、調査/実験には未着手ながら2026年末までの導入を予定している割合も17%だという。AIエージェントの整合性と安全性を維持するために、信頼、リスク、セキュリティを自動で制御する仕組みが必要とされており、これがガーディアン・エージェントの需要拡大と普及を加速させているとのことだ。
エージェントの能力向上と普及にともない、リスクも拡大
同ウェビナーのアンケートでは、AIエージェントの現在または将来の主な用途として、回答者125人のうち、52%が社内の管理業務(IT、人事、経理など)に関連するユースケースを挙げ、23%が顧客対応業務を挙げたという。
AIエージェントのユースケースが増え続ける中、入力操作やデータ・ポイズニングなどを通じて、改ざんされたデータや誤って解釈されたデータをAIエージェントが使用することによる、次のような脅威が懸念されるとしている。
- 認証情報の乗っ取りや不正使用により、不正な操作やデータ窃取が実行される
- 偽または犯罪目的のWebサイトや情報源とのやりとりにより、エージェントが有害な動作を実行する
- 内部の欠陥や外的要因に起因するエージェントの逸脱や意図しない行動が、評判の失墜や業務の混乱をもたらす
CIOやセキュリティ/AIのリーダーは、AIとのやりとりの安全確保と防御を促進するため、ガーディアン・エージェントの3つの主な役割に焦点を当てるべきだとGartnerは述べる。
- レビュアーとしてのガーディアン・エージェント:AIが生成した出力やコンテンツが正確で適切かを確認/レビューする
- モニターとしてのガーディアン・エージェント:AIやエージェントの行動を観察/追跡し、人間またはAIの追加対応を支援する
- プロテクターとしてのガーディアン・エージェント:オペレーション中に自動アクションを使用し、AIやエージェントのアクションや権限を調整/ブロックする
ガーディアン・エージェントは、使用形態を問わず、インタラクションと異常を管理するという。Gartnerでは、2028年までにAIアプリケーションの70%がマルチエージェント・システムを採用すると予測しているとのことだ。よって、今後、ガーディアン・エージェントはこうしたマルチエージェントの統合における重要な柱となっていくとしている。
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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