EYストラテジー・アンド・コンサルティング(以下、EYSC)は7月1日より、経済安全保障に関連する政策情報とOSINTプラットフォームを活用して、企業や政府などクライアントの意思決定を支援するコンサルティングサービスの提供を本格的に開始すると発表した。
国際情勢の不安定化や地政学リスクの高まりにより、企業にも経済安全保障への対応が求められている。特に日本では、戦略的自律性と不可欠性を確保するため、産業スパイや懸念国による情報漏えいリスクへの対策が重要だという。
2025年に導入されたセキュリティ・クリアランス制度では、認定事業者を目指す企業に対し、実質株主の明確化が義務付けられた。同年の外国為替及び外国貿易法に基づく対内直接投資審査制度の改正案では、「特定外国投資家」などの新たなカテゴリが設けられ、懸念国からの投資審査が一層厳格化されているとのことだ。
また、米国では米国外国投資委員会(CFIUS)および大統領の判断により、日本企業による米国企業の買収が停止された事例もあり、グローバル企業は各国政府からのリスク評価を把握する必要があるという。
輸出管理の分野では、米国のEAR(Export Administration Regulations:輸出管理規則)に基づき、取引先のリスクを事前に見極めることが『Know Your Customer』ガイダンス(Supplement No. 3 to Part 732)に基づき求められているとのことだ。
加えて、米国商務省所管のBIS(Bureau of Industry and Security:産業安全保障局)が輸出規制対象となる組織や、企業を掲載するエンティティー・リストに掲載がない場合でも注意が必要とのこと。今年、リスト掲載企業に50%以上の株式を保有されている企業が規制対象となる「50%ルール」が、BISの輸出管理次官のランドン・ハイド氏により上院で提案された。今後の動向次第では、企業は輸出先企業と、エンティティー・リスト掲載企業との資本関係に関する独自のリスク管理を行う必要があるとしている。
今回発表されたサービスで活用される「OSINT(オープンソースインテリジェンス)」とは元々、公開されている情報源から情報を収集・分析し、決定に活用する諜報活動の一種を指す。これにより、リスクが可視化され、リスクの早期発見と対応が可能となり、クライアントの経済安全保障対策の強化が期待されるとのことだ。
- サービス名称:OSINTを活用した経済安全保障意思決定支援コンサルティングサービス
- 担当する主なプロフェッショナル:EYSCストラテジック インパクト シニアマネージャー 泙野将太朗氏
サービス概要
自社、顧客、サプライヤーの真の支配者、輸出先のエンドユーザー、サプライヤーの最上流工程、各法人の役員の兼務および真の関係企業や関係者を明らかにし、それらの主体に対する制裁リストへの掲載や懸念国とのつながりを分析、リスクを可視化した上で経済安全保障の観点から適切な意思決定を支援するコンサルティングサービス。
活用例
- 自社の開発チームに研究者を採用する際に、懸念国政府との関係性を確認
- 自社の取引先や協業先が米国による規制対象先にかかるかどうかを調査・分析し、ビジネスへの損失を回避
- 買収先企業や海外からの投資受け入れ先が規制対象であるかどうかを調査・分析し、リスクや対応策を検討
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